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地域で生きる/22年目の地域生活奮闘記83~熱中症対策と節電を両立する難しさに思うこと~ / 渡邉由美子

今年は、身体的に何の準備もなくいきなり40度越えになる地区も現れたりしていて、重度な障がいを持っている私たち障がい当事者には過酷な夏となりそうです。

水分補給を2リットルぐらいした方がよいということをよく言われます。介護者の方も私の身体を心配してお水を飲んでください、とよく言われます。しかし、水分を摂りすぎるとお手洗いに行く回数が多くなってしまいます。外出中や活動を主にして1日を余裕なく過ごす様な時には、活動の妨げとなる水分はどうしても大敵と考えてしまうのです。

でもそんなことを言っていては今夏は本当に倒れるかもしれないと最近考えるようになりました。温度計の表示よりアスファルトの照り返しは確実に熱いことは事実です。次元の違う暑さと闘いながら暮らしていかなくてはならない状況なのです。

対策として、保冷剤を背中に入れたり、首に巻いたりしてみますが、そうするとその保冷剤が当たっている場所が局所的に冷えすぎとなり脳性麻痺の筋肉のこわばりが誘発されてしまいます。それが冷えた局所の痛みとして出てしまい、辛い思いをする結果に終わったりもします。それに体温が高いとすぐに溶けて、保冷剤を巻くためにつけている布が冬のマフラーのように身体を保温してしまい、余計に暑さを増幅させる結果となります。

暑さばかりは障がいの有無に関係なく万人が暑いのだから我慢をするのが当然と一見思われがちですが、重度な障がいを持っていると汗で身体に溜まった熱を発散できないという問題が起こります。それは、こもり熱と言われるもので、救急搬送にもなりかねない事態を招いてしまうのです。

また、こもり熱が原因でお店に入る時に行われている検温では7度5分以上の数字が出てしまうと、入店を断られてしまいます。涼しい所で検温の無い場所を探し表面温度を下げてから、もう一度検温という関所を通って7度5分以下の数字を見てもらい、やっとのことで入店して用事を済ませることができるようになるのです。

介護者の手を借りて一番熱のこもる背中に空気をいかに通すかが苦労の最たるものになります。複数の介護の手が得られる時であれば前かがみにして背中をうちわで扇ぐのが熱を逃がす最短の方法ですが、通常一対一の外出では背中に空気を通すことは至難の業になるのです。

このような重度な障がい者特有の事情など一般社会は知る由もありません。複数介護は贅沢という風潮満載のなかで、必要性に迫られてやっと複数介護を一部公的に認めさせてきたのです。

長年悩みに悩んだ結果、今年はついに携帯用の扇風機を購入しました。首からかけて使うタイプで、首の後ろに電気の力で常に冷たく感じさせる機能があるアルミ板がついている風量ターボタイプのものを活用してこの夏を乗り切ろうと考えているのですが、お試し品はお店の中で試すわけです。涼しい所で試せばよい商品と思えるのですが、外の熱風下でどの程度涼しさを感じられるかはこれから使ってみてということになります。それでも少しでも対策になればと期待を寄せています。

そんな状況のなか、政府は節電を強く要請しています。平日の日中、テレビを見ているのはいわゆる健康な人ではなく障がい者や高齢者、なんらかの事情を抱えて体調管理に努力が必要な人々です。そして、どちらかと言うと積極的にエアコンを使ってでも夏の過酷さを乗り切って生命維持をしなくてはならない状況の人たちです。節電を呼びかける先が違うと私はどうしても思ってしまいます。

上記に挙げた状況で暮らす人々の住環境は、広くもなく大容量の電力を消費する対象にもなり得ないのです。しかし、律儀な人たちはとても多く、報道各社が連日節電を呼びかけてしまうと、その裏側で本当に耐えがたきを耐えてしまうのです。そのように、命を落としかねない人がもう既に、暑くなって一週間ほどで現実に出てきているのです。

大企業に呼び掛けることは必要です。そして、もっと言うならば電力の逼迫という問題は去年もこの時期言われていたことです。原子力発電から火力発電などへのシステムの移行がうまくいかないという根本の解決が、一年経っても出来なかったツケが一番弱い立場で暮らす人にまたしてもしわ寄せとして来ているとしか思えず、物言えぬ弱者が我慢するという構図がここでも露呈したに過ぎません。

ただでさえ物価高でより生活に困窮している人ほど、政府の節電要請に従おうとする人が多いことが現実です。しかし、そのような人は電力に限らずもともと生活自体が厳しいことが多いのです。そんな現状を把握しているのでしょうか?そのうえで、都庁の電気を真っ暗にしてパソコン仕事をしているようなビジュアル的パフォーマンスの映像を繰り返し流す報道の仕方を考え直してほしいと願わずにはいられません。

もうすぐ参議院選挙の投票日がやってきます。このような歪んだ世の中が少しでも弱者にしわ寄せにならない生活ができる政策を取れる政治家を、この選挙で当選させたいと切に思います。

少しは介護者の私を想う忠告にも耳を傾けながら、普段と大きく変わりのない社会参加活動を展開しながら、ひいてはそれが就労にも繋がる近未来を夢見て体調を維持しながら酷暑の夏を元気に乗り切りたいと思います。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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