地域で生きる/20年目の地域生活奮闘記③ ~お好み焼きパーティーに考えさせられた初心 / 渡邉由美子

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

今年はコロナ感染症の影響で例年通り出来ないことが沢山あります。

それは私だけの事ではないのです。世間的、もはや、全世界的社会問題なのだからやむを得ないと、頭ではもちろん理解してそれなりにその事態を何とか乗り越えて今年の地域生活があるのです。

直撃を受けて、一番困ったこと(現在進行形)は、大学生を集めてボランティアから「地域参加型介護サポート事業」に協力して下さる人を募集することです。この事業は、自治体に独自で作らせた無資格でも私が私の介護を自分で伝え、関係性をつくり、介護者として働いてもらうことが出来る制度です。

人材不足を補填する介護制度であると私は考えています。特に、多くの利用者がいて規定通り法律で定められた範囲でしか介護はできないと思いがちな介護者とはどうもうまくいかないという当事者にとっては、人材を自分で探すという努力があって、それを常にやり続けていくという途方もない苦労を克服した時に得られる真の幸福感が上回る事になるのです。

生活の中で様々生じる違和感も自分の手足が動いたらこう暮らしたいと思うことを、ダイレクトに実現する事で解消の方向へ向かうことが出来る一助となるのです。また、事業所から派遣されてくる、自分の事を理解するというところまでは至れない人間関係の介護者とはなじみにくい重度障がい者で、自由度の高い生活を目指す人には、とても生活設計がしやすくなる制度だと思います。

この制度はまだ全国で使える制度とはなっていません。東京の市部で数か所、23区では私の知る限り、今日現在、私の住んでいる区だけかも?しれません。国の重度訪問介護という制度が出来る過程でも同じ議論が紛糾していた時代もありました。施設ではなく、地域で暮らすなんて無謀だと言われた時代がつい40年前だったとか。

この重度訪問介護が法律下で普及している昨今、無資格で介護者稼働なんてナンセンスとか、何か事故があったら誰がどう責任を取るか?等、所謂行政側お得意の責任論が再び浮上し、邪魔をしているのです。

そんな介護制度を最大限活用して暮らす部分の学生さんたちを今年度分募集することが例年ならば4月から始めるところが今年は間接的にZOOMで募集する形で9月からやっと出会う事ができました。ほっとしたのも束の間、コロナ感染症の拡大が過去最多などと報道がなされている現在、なかなか実際に来てもらうことも難しいのです。

そんなある日、ようやっと実際に自宅に来てもらうことにこぎつけた学生さんとこのご時世色々なリスクを低くする意味を込めて、外出は自粛して家の中での生活を充実させようと思い、最近考えてみると介護者と共に台所に立つことが減って食生活が乱れていることに気づいた私は、久々に個食ながらも介護者と一緒に同じものを食べることにチャレンジしてみました。何を作ろうかと考えながら買い物に行くところから始め、複数の学生さんと決めたメニューはお好み焼きにしました。

何かひと工夫が欲しいと思いYouTubeで検索したところ、出てきたのが小さく角切りにしたお餅を生地に練り込むというものでした。そこに明太子もトッピングして生地に加え風味豊かに仕上げるというレシピを見ながら、混ぜ具合焼き具合を私もフライパンを覗き考えながら、少し最終的に生っぽい感じが拭いされなかったので、温めがてら電子レンジでよく加熱して食べました。

本当はそこにチーズや焼きそばを加えて広島風にしようと考えていましたが、家に帰ってきて買い物袋を覗いたら、焼きそばを買うことをすっかりみんなで忘れてしまい、焼きそば無しになりました。料理の楽しさはこうでなければならないというものではないので、それもまた手作りの醍醐味ということにして美味しく楽しくいただきました。

介護を受けながら一人で食べる食事と違い、普通にそこから初めての学生さんとのコミュニケーションも生まれ、関係性づくりの場に図らずとも発展し、食べなくてはならないと考えすぎると面倒くささが先に立つ食事も、作って食べることが楽しいと思えれば、こんなにも楽しいことに変容できると改めて感じました。

一人暮らしを始めた当初は、「自立生活プログラム」という重度障がい者が今まで経験できなかったがゆえに、生活力が乏しいことを経験的に補い、その能力を高めるための講座をよく受講していたのです。その頃は、きちんと料理も指示を出しながら作っていました。

生活に慣れてきてなんとなく感覚で暮らしが成り立つ今は、すっかり手抜きをするのがうまくなってしまいました。その他にも、金銭管理の仕方から住む家の探し方、介護者との人間関係の作り方などを学び、今日に至っています。たまには、初心に帰ることで新たな気づきが生まれた一日でした。

若い障がい者の皆さん、是非地域での自立生活をしてみませんか。仲間が一人でも増えるためなら、私は協力を惜しみません。そして、そのような想いが叶う人が増えれば、社会はみんなが生きやすい方向になっていくのです。

 

◆プロフィール
渡邉由美子(わたなべゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。
その後、2000年より東京に移住。一人暮らしを開始。
重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

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