【高齢者地域生活推進委員会】第6回 勉強会レポート
テーマ
なぜあの人は威張るのか? ~クライアントに心を折られる職員心理~

開催概要
日時:2026年4月16日(木) 17:00~18:00
講師:坂本孝輔氏(認知症専門の介護福祉士)
~単なる「困った人」ではなく「不安で困っている人」と再定義する視点~
介護現場におけるクライアントの「威張る・攻撃的になる」という威圧的な態度の正体を解明し、職員の「自信喪失」や「モチベーション低下」といったメンタル保護についての学び、職員自身が心を守りつつ、チーム全体でどのように向き合うべきかを勉強した。
1.認知症の人が「威張ってしまう」背景
「威張る・攻撃的になる」という態度の裏には、本能的な恐怖や心理的防衛反応が隠れている。
▸群れからの排除への恐怖 : 狩猟採集時代において集団からの排除は「死」を意味したため、人に嫌われることや不要だと思われることを極端に恐れる不安のセンサーが本能的に備わっている。
心理的安全性を脅かす「4つの不安」
・無知だと思われる不安
・無能だと思われる不安
・邪魔だと思われる不安
・否定的なやつだと思われる不安(社会的認知の影響で自覚しにくい)
自分を大きく見せ「やわらかい中身を守る」ために威圧的な態度(鎧)を身にまとう。

事例:三里さん(85歳・女性・認知症)
デイサービスの環境を「会社」のように捉え、職員や他者を否定・管理しようとする。
これは「有能であること」を示し続けなければ排除されるという不安の裏返しであり、自身の弱さを守るための「鎧」をまとっている状態と言える。
認知症による攻撃性の増幅 :
・社会的認知の低下(場の空気を読めない)
・メタ認知の低下(自身の振る舞いを客観視できない)
・病識の低下(手助けを敵対行為と見なす)により攻撃性が強くなる。
2.職員の具体的な向き合い方とメンタルケア
職員が傷ついてしまうのは、真摯に業務に取り組んでいる「善意」を否定されたように感じるから。
職員の自信を回復し、持続可能なケアを実現するためには、以下の多角的なアプローチが必要である。
現状認識
「介護に向いていない」「自分の関わりが悪い」と自分を責める必要はない。
クライアントの態度は、職員個人の人間性を否定しているのではなく、クライアントが抱える不安の裏返しであると理解することが、「心の防衛」になる。
合言葉
「あまり強い言葉を使うなよ、弱く見えるぞ」と心の中で唱えることで、相手の攻撃的な姿勢を一歩引いて観察する視点を持つことができるので、おすすめ。
3.チームによる解決策
個人で抱え込むと、心理的安全性が低下し、離職にもつながりかねません。以下の取り組みで、チーム全体での対応が不可欠。
- STEP1 いい人メソッドの実践 : 相手の警戒心を解くため、まずは「いい人だ」と認識してもらえるような関わりを積み重ねる
- STEP2「苦手」を共有できる環境づくり: 「この人が苦手だ」と公言しても許される職場文化を構築する。
- STEP3 チームの課題として共有: 職員とクライアントの1対1の問題にせず、チーム全体で「なぜそのような態度をとるのか」を考え、共通認識を持つ。
【結論】
クライアントの威圧的な態度は「深い不安」の表れである。
個人の技術(いい人メソッド・客観視)とチームの支え合い(心理的安全性の向上)を両立させることで、職員は自己否定から解放され、プロとしての誇りを持った認知症ケアへと向かうことが可能となる。
以上














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