土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)
去年の夏頃、ケアマネから「ALSの方でヘルパーが居なくて困ってるんです。」と、新規の連絡があった。そこは、まだまだ未開拓のまま私がマネージメントから離れた地域の一つだった。
呼吸器装着をされ医療的ケアが必要な方なのにも関わらず、重度訪問介護の総支給量はたった70時間。半分以上は使われていない状況だった。
「家族さんいらっしゃるし、重訪は介護保険が足らないときに利用する程度ですよ。」
アテンダントは必要ない、とも聞こえる2時間のみの重度訪問介護。
土日かあ〜(汗)
短時間の朝夕の土日はなかなか厳しいなぁ。
難病なのに支給量が少ない理由は何なんだろう。
土日は私自身の仕事に支障がないと判断し、
「もし私で良ければ人が見つかるまでは入れます。まず一度面談させていただけませんか。」
そうケアマネにお伝えした。
お会いした際、家族さんは一見明るく、在宅介護を楽しんでいらっしゃる様に見えた。
「あの…すごく明るい家族さんで正直びっくりしてしまって。本当に疲れてらっしゃらないんですか?責任感の強い方は、ご自分が介護して当たり前だからしんどいと言えないですし、疲れていることも麻痺してしまっていることもあります。夜間帯に吸引もあるでしょうし、本当にしっかり休めてらっしゃいますか?」
「大丈夫です。主人はよく寝るので・・・。」
家族はそう答えた。
同行していたケアマネも、
「大丈夫ですよ!家族さんもお元気なのでー。」
そう言うと、家族は日中時間がたっぷりあるからと、作られた作品に話題は移った。
土屋は、夜間帯朝まで入って当事者を支えることをお伝えし、初回の挨拶はほどほどに失礼した。
関係性の無い介護事業所に新規依頼がくる時は、実際に他へ頼んで断られたパターンが多い。
「大丈夫です、主人はよく寝るので」
そう家族は答えた。
が、ALSで熟睡されている方を私は聞いたことがない。何だかとても気になった。
土日のどこかで私に関わって欲しいという連絡があったのは2週間程してからだった。
普段の業務に支障が無い土曜の夕方なら大丈夫です。私は、当事者と家族の本当の気持ち=聞こえない声を確かめようと思った。
1週間のスケジュールの中で家族の介護の代わりをする介護事業所は短時間しかない。
何度か接していると家族の過ごし方が見えた。
家族は朝なかなか起きない。日中も寝入ってしまいピエゾで呼んでも起きない。当事者は、家族が自分の介護で疲れて寝不足なのを知っている。
A市では将来を支える子ども達へは手厚くされているらしいが、障害者には厳しい。
ケアマネは介護保険を扱うので障害サービスの重度訪問介護の使い方を知らない。
家族さんが重度訪問介護の詳しい使い方を知るはずもない。
「初めてです。私に休んで良いんだよ、って言ってくれた人。いつも病気の主人に対しての言葉はくれるけど私には・・・。」
家族の心の声だった。
週1回の短時間が週5回、毎週毎日あったとして短時間で人間らしい生活が果たして出来るのだろうか。家族が疲弊してしまい虐待にまで繋がる可能性だって十分にある。
ご主人がご病気になってからは休んではダメだと思い込み、お互いがお互いに気を遣い我慢を強いる関係性になってしまう。
私たち重度訪問介護を扱っている介護事業者は、自立生活の支援を援助することが大切だ。
まずは、週に一回でも良いから夜勤帯にアテンダントに入ってもらい、家族にしっかり休んでもらえるように重度訪問介護の熟練者同行の制度を利用して研修計画を立てよう。
「まさか本当にこんな日が来るなんて・・・夢の様です。」
◆参考資料
https://qa-fukushi.com/wp-content/uploads/2019/04/57qa.pdf
福武 早苗(ふくたけ さなえ)
ホームケア土屋 大阪