同性介護について
本日(4月17日)、『ハートネットTV』で同性介護について取り上げられていた。
私は今から約20年前、30歳の時に介護業界に入った。
重度訪問介護の前身のサービスの担い手となった。
私が最初に就労したのは障害当事者が運営する団体だった。
サービスを受ける当事者が、私に介助の方法とその精神を教えてくれた。
私の指導者は先輩ケアワーカーではなかった。たくさんのことを教えてもらったが、なかでも「同性介護の重要性」については、これでもかというくらい、叩き込まれた。
まさに、肝に銘じられた。
同性介護は常識中の常識であり、異性介護はタブー中のタブーだった。
同性介護は、水や空気や電気のように「当たり前」のことだった。
数年後に、認知症対応型のグループホームで働くことになった。
そこでは、異性介護が当たり前であり、日常だった。
カルチャーショックを受けた。
初めて「おばあちゃん」の入浴介護を上司から命じられた時、正直戸惑った。つい「私の前職では、同性介護のルールが徹底されていたのですが」と感想を述べ、その後こっぴどく叱られた記憶がある。
おずおずと、異性介護の担い手となっていった。
新しい文化に適応するのには、そう時間はかからなかった。
男性スタッフしかいない日もあるのだから、その日だけは「おばあちゃん」の入浴はなし、というわけにはいかない。
女性スタッフしかいない日もある。その日は「おじいちゃん」はお風呂に入れない、というわけにもいかない。
入居者も、異性介護に抵抗を示す方はほとんどいなかった。むしろ、異性介護でないと風呂に入らない、という方のほうがマジョリティーだったような気がする。
若いイケメンに声掛けされて、喜んでお風呂場に向かっていく「おばあちゃん」の姿は微笑ましいものがあり、「同性介護原則に反する!」といって怒りの感情が湧くことは全くなかった。
次第に、異性介護が日常になり、同性介護原則は過去形の規則であり、異郷の地のルールとなっていった。
現在、原点である障害福祉サービスをメイン事業とする会社を経営している。
もちろん重度訪問介護サービスにおいては同性介護原則をルールとしている。
しかし、どうやら現場では例外もあるようだ。
セクシャルハラスメントのリスク回避のためにも、当事者の尊厳を守るためにも、同性介護原則は徹底してほしいと、担当部門の責任者の方々には伝えている。
しかし、この原則がどれほど大切なことか、当事者から刻まれた精神が、高齢福祉の現場を7年ほどかけて通過した私の中で希薄化しているようにも思える。
「そうとばかりも言ってられない」現実があることも、グループホームやデイサービスで働く中で知ることになった。でも、当事者の想いは忘れたくないし、忘れるべきではない。
そこには闘いの歴史があり、痛みの記憶があるから。
今日の「ハートネットTV」を見ていて、そんな記憶が忘却の底からよみがえってきた。
経営に忙殺されているが、時折思い出し、会社経営を共にする仲間たちに伝えていきたい。
株式会社土屋
代表取締役 高浜敏之
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