「異端の福祉」を読んで / 宮古裕子(訪問看護ナーシングプラス土屋 瀬戸)
5月から突如、事業所譲渡により株式会社土屋として働くことになり、慌ただしい移行に伴い日々業務に追われる中、今回の企画を目にしました。パンフレットやホームページではどんな会社なのか拝見し、重度訪問介護事業を主軸に展開されている会社であることは知っていました。
いちパートの身でありますが、今回ご縁で働くことになった会社のトップの社長の考えや理念、信念、株式会社土屋とはどんな会社なのかなど知るいい機会だと思い、思い切って社員さんに送られてきていた本をお借りして拝読させていただき、企画募集に参加させていただきます。
訪問看護師として7年目になる私ですが、本を読み進めながら、ALSの方で夜間のサービスを受けることができず、家族が夜間介護しなければならずに昼間睡眠をとっている姿。またALS発症後に気管切開を望まれていた方が、在宅で家族に負担をかけていることを気に病み延命を望まれなくなってしまった姿。昼間の介護サービスや訪問看護を導入しているものの、結局は家族の負担が大きく、泣く泣く施設入所となってしまったケースなどが思い浮かび、この方たちが重度訪問介護サービスをもし受けることができていたら違う未来になったのではないかと感じました。
当時自分なりにも夜間受けられるサービスというものはあるのだろうかと調べましたが、結局辿り着けず、24時間介護なんて難病や障害をお持ちの方の極々限られた人だけが受けられるサービスで、到底わが地域でそのようなサービスを受けるのは無理なんだと思い知らされた記憶がよみがえってきました。
そんなサービスを中心に事業拡大をされている希望ある会社に入社することになったんだなと思いました。
障害や難病を抱え、病状の進行と共にいざ在宅でサービス導入となる際に、家族が他人を家に入れることへの抵抗があると感じることがあります。それゆえに最低限のサービスしか導入されないケースもあり、結果、家族の介護負担につながるパターンです。
そんな中、長時間にわたって他人が家に入っての介護とはどんな感じなのか、イメージしにくい部分もありましたが、著書の中に「家族とはまた違った特別な存在」との言葉に、重度訪問看護に携わるスタッフは生きていく上でのパートナーとなりうるんだ、家族にとってもかけがえのない存在になっていくんだなと感じました。
その関係性を築くことができるスタッフの育成も大変なことだろうと感じました。介護技術的なスキルも大切ですが、それ以上に人間性が問われる職だなと感じました。ヤングケアラー問題に対しても解決の糸口が株式会社土屋にはあるのではないかとも感じました。
利益を生めるシステム、経営戦略の裏では政府との闘いが長い間行われていた事実も知りました。社長自身もそのような運動に関わられていたこと、一時はボクシング選手も目指されていたこと、大学生活から生活保護生活、アルコール依存症の克服、介護職、管理職としての経験。
全ての経験、挫折が今の事業に繋がり、多くの利用者さん、職員の生活につなげて下さっていることを知り、障害や難病を抱えた方が1人でも多く、その人らしい人生が送れるようになるようにとの社長の熱い想いが伝わってきました。
地域によって重症訪問介護サービスの財源確保が難しいところもあるとのことですが、わが地域に重度訪問介護サービスを受けられる日もくるのかなと希望を抱いてしまいます。
重度訪問介護と訪問看護ステーション。ホームケア土屋の中に訪問看護という部門もあるようで、その辺りの詳しい仕組みは分かりませんが、看護と介護は切っても切れない関係性のため相乗効果利益につながっているとともに、クライアントとってより安心なケアの提供につながっているのかなとも感じました。
著書の中のスタッフ体験談で、施設よりも在宅ではクライアントとしっかり関わりを持て、やり甲斐を感じているということが書かれており、私自身、病院で慌ただしく働いているよりも在宅での一対一での関わりにやりがいを感じているため、同じような想いで働いているスタッフ、同志が一気に増えた実感を持てました。
まだ株式会社土屋の一員として1ヶ月も経っていない私ですが、在宅でその人らしく過ごせるよう訪問看護師として、株式会社土屋の一員として誇りを持って働かせていただきたいと思うことのできる一冊でした。また、この本を多くの方に読んでもらいたい、重度訪問介護の存在をもっと多くの方に知ってもらいたいと思いました。