読書法の歴史① / 雪下岳彦

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

「読書」。生きていく上では、かなり重要だ。

好きな作家さんの本や、本屋で見つけた気になるタイトルの本を読む。
読書としてまず思うのは、このような趣味的な意味での読書だ。

教科書を読む。
勉強で本を読むのは「読書」とは思わないかもしれないが、行為としては立派な読書である。

マンガ・雑誌・説明書・冊子などを読む。
これら紙に印刷されたものを読むのも、読書と言える。

あまり本を読まないという人でも、学校で教科書を読んだり、職場でマニュアルを参照したり、新しく買った家電の説明書を読んだりはしている。

私がケガをして手が不自由になり、最も苦労したのは、「どうやって読書をするか?」である。
ケガをする前は、読書という行為は当たり前のようにできていた。
少年ジャンプを目の前にして、「はて、どうやってページをめくろうか?」なんてことは考えたことがなかった。
しかし、いざ手が不自由になると、途方に暮れた。

読書という作業をひもとくと、意外と複雑だ。
まず、多くの場合、本は両手で持たなければならない。
読みやすい位置で本を支え、読みやすいようにページを広げつつ、次のページに移動する際は紙1枚をめくらないといけない。

さらに、ケガをしたとき私は医学生で、国家試験の勉強をしなければならなかった。
少年ジャンプではなく、たくさんの教科書を読み、覚えなければいけないことが山のようにあったのだ。
受験勉強と言えば、教科書の大事なところに蛍光ペンでマークも入れたいところだが、その前の教科書を読むという段階で大きな壁にぶつかっていた。

ケガをして8ヶ月後に転院した神奈川リハビリテーション病院では、私が受験生ということを考慮して、早い段階で作業療法士さんが読書をするための方法を考えてくれた。

まず、本の固定には書見台を。ただし、そのままでテーブルに置くと本の位置が低くて見にくいので、木材で台座を作り高さを上げる。
ページめくりには、マウススティックという口でくわえる棒を作成。そして、使用時にはそのマウススティックをすぐにくわえられ、使用が終わったらすぐに置けるようにと、マウススティックのケースも作成してくださった。
「蛍光ペンも使えると良いね」ということで、蛍光ペンをつけたマウススティックも作ってくださり、マウススティック2刀流に!

マウススティックでのページめくりは、多少のコツと疲れがあるものの、病室で受験勉強ができるようになり、大いなる進歩になった。
入院中は褥瘡などがあった影響で座位をとれる時間が限られてはいたが、その時間で勉強できるようになったのは、とてもうれしかった!

神奈川リハビリテーション病院に入院時は、国家試験の浪人状態だったので、勉強できないのは大きな不安材料なのだ。時々、息抜きと称して雑誌も読んでいたのは、くれぐれも内密に。
翌年、無事に国家試験に合格できたのは、読書環境を作ってくださった作業療法士さんのおかげだ。

これは、かれこれ20年以上前の話。その後、テクノロジーの進化とともに、読書法も変化しているが、続きは次回に。

 

◆プロフィール
雪下 岳彦(ゆきした たけひこ)
1996年、順天堂大学医学部在学時にラグビー試合中の事故で脊髄損傷となり、以後車いすの生活となる。

1998年、医師免許取得。順天堂医院精神科にて研修医修了後、ハワイ大学(心理学)、サンディエゴ州立大学大学院(スポーツ心理学)に留学。

2011年、順天堂大学大学院医学研究科にて自律神経の研究を行い、医学博士号取得。

2012年より、順天堂大学 医学部 非常勤講師。

2016年から18年まで、スポーツ庁 参与。

2019年より、順天堂大学 スポーツ健康科学部 非常勤講師を併任。

2020年より、千葉ロッテマリーンズ チームドクター。

医学、スポーツ心理学、自律神経研究、栄養医学、および自身の怪我によるハンディキャップの経験に基づき、パフォーマンスの改善、QOL(Quality of Life:人生の質)の向上、スポーツ観戦のバリアフリーについてのアドバイスも行っている。

 

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