SDGsで旅プロジェクト / こもとゆみこ

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

SDGsチームで「旅企画」が立ち上がりました。土屋のクライアントの皆さんが行きたい場所に、自分の通った学校にもう一度行きたい、お墓参りに行きたいという近場への希望から遠い場所への旅行も希望があればお連れしようというプロジェクトです。

私は19歳から29歳の10年間、旅行会社のバス観光部門のバスガイドとして働いていました。右も左もわからない、高校を卒業した翌週には九州、四国、中国地方の女の子たちが100人程入社し、6つの営業所に振り分けられて完全寮生活での教育から始まりました。当時、1年後には約半数に減っていたと思います。

全寮制で門限は9時、勉強も沢山必要で、当時は岡山と香川を結ぶ瀬戸大橋も開通したこともあってバス旅行が大盛況で、毎日が目まぐるしく、早朝から遅い時間まで忙しくて自由な時間はほぼありませんでした。しかも昔は今と違ってパワハラ、セクハラ何でもありで、若い女の子には厳しいお仕事だったのかなと思います。

生活する寮は6畳の和室を上級生(新入社員は1年生と呼ばれます)と2人部屋。部屋の真ん中にはコタツがひとつ置かれていて、コタツの真ん中でなんとなく仕切られた半分が私のスペース。ひとりっ子だった私は部屋を誰かと使う初めての経験でした。

幸い同室になった2年生の先輩はとてもやさしく面倒見の良いひとで、近所の美味しいお店など日常の生活だけでなく仕事でも点呼の仕方、バスの準備の仕方から始まって最初の3か月間はこの先輩の見習いとして乗車し、日々楽しく色々なことを教われたのもガイドを続けられた理由の一つだと思います。

怖い先輩の同室だった子はすぐに辞めていきました・・・会社からしたら相当な損失だと思います。優しく気のいい先輩に忍耐強く教えてもらった私は本当にラッキーでした。

会社自体も、とても手厚く教育に時間を割いてくれる会社で、旅行を楽しみたいお客様の前に出すために、ガイドとしての発音・発声練習や案内の知識を習得するための勉強については厳しく指導されましたが、それ以外にも接客マナー、応答の仕方、身だしなみ、お化粧の仕方もプロの方を講師に迎えた研修があり、3年生のシーズンオフには会社が費用を出してお料理、裁縫スクールにも通わせてもらえ、それまで取るのを禁止されていた運転免許も就業時間中に行かせてくれました。

色んな所には行けるし美味しいものは食べられるし、それでお給料が頂ける。自分の時間さえ確保できれば、至れり尽くせりのガイド時代だったと思います。

さて、10年の間にはかなりの数のお客様をお迎えいたしましたが、その中でも忘れられず時々思い出すのが新大阪駅でお迎えし、神戸~淡路島~徳島~香川~岡山~鞆の浦を回ったお客様です。そのご一行のお客様のほとんどが全盲の方でした。

新大阪駅でお迎えするまで、今日のお客様の殆どの方が全盲だと知らされていなかったのもあって、添乗員さんに告げられた後「いつも通りのご案内をしてください」と言われて戸惑いました。

まだ二十歳そこそこの私は、少しでも伝えられたらと「説明の対象」がどんなものなのかを説明(ややこしいですね)しようとしたのですが、添乗員さんから再び「ガイドさん、いつもどおりで」と言われ、諦めて「普段のままのご案内」をしました。

通常「右奥、町の後ろに見えておりますのが六甲山でございます。この六甲山は~。」とか「前方左奥に神戸のシンボル、ポートタワーが見えてまいりました。」などとご案内するのですが、相手が見えないとわかっているのに・・・方角を示してあちらに見えている○○が~などと説明する度に何だかいちいち申しわけない気持ちになりました。

今になって思うと、普段通りの案内で本当に良かったのか、私がもうちょっと年齢がいっていれば、引き下がることなく図々しく、普段の説明でいい理由を聞けたかもしれない、うまく添乗員さんにご提案し、もっと伝わるようにご案内できたかもしれないと思うのです。

お別れの時「ガイドさんありがとう、楽しかったよ。これプレゼント」と、赤い折り紙で折った「鯛」を下さり、少しほっとしたのを覚えています。最後に行った鞆の浦の「鯛の浜焼き」の説明を聞いて折ってくださったようです。その方は盲目でありながら折り紙を折られることで有名な方なのよ、と他の方が教えてくれました。

時々あの時の夢を見ます。
バスガイドとしてマイクを持って立ち、座席にずらっと座った盲目のお客様に何とか楽しんでいただこうと観光案内するのですが、夢の中の私はやっぱりうまく説明できずにいます。30年も昔の事なのに、自分の心の中でまだ解決できていないのですね。

土屋のクライアントさんが行きたい場所はそれぞれ違うと思いますが、その旅の目的に合わせて、「行って良かった」「楽しかった」と感じ、生きていることの喜びのひとつになって頂けたら嬉しいなと思っています。

 

古本 由美子(こもと ゆみこ)
本社

 

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