ソーシャルとビジネスのバランスについて / 吉岡理恵(CLO 最高法務責任者)

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

ソーシャル、ここでは社会福祉としますが、人の役に立つことや、人を幸せにすること、人助けをすることを言います。これは人間が生まれながらにもつものであり、言葉を知らない無垢な子供が誰に教わったわけでもないのに人に優しくすることができたりします。

一方で、ビジネスすなわち事業運営とは貨幣の存在なくしては成り立ちません。営利を追求するかしないかは選択ができたとしても、採算が取れなければ継続不能となってしまいます。また貨幣とその価値は、人の成長の過程で知識と経験を持って刷り込まれ、大人になると頭の中のかなりの割合がお金に占拠されていくようになっていきます。そして現代社会の誰もが、お金とは使い方によって人助けや人の幸福につながるということを学んでいるように思います。

このように考えると、現代社会において貨幣とは、社会福祉にとってなくて済むならなくてもいいが、あるに越したことはないもの、というのが共通認識なのではないでしょうか。それゆえ、人間がもともと持っている福祉の心と生まれた後に学習する貨幣価値並びにその有用な使い道、すなわち事業運営は、意識的に図っていかないとそれらの共存・融合が取れないように思います。

この意識的に融合や共存を図らなければならないことは、人種の違いにもいえるように思います。肌の色や話す言葉の違いというのは、言葉の習得に伴う認知機能の向上と比例するように、その溝が深くなると感じています。

ところで、事業運営をする上で大切なことはデータ分析ではないかと思います。データ分析では蓄積した情報を整理整頓し、端的な言葉と数値をもって全体の傾向を掴むことができます。ビジネスだけでなくスポーツの世界でもデータ分析が功を奏しているのは今や常識であり、それは人間の行動とその結果を抽象的に考えるのにとても有効に働くからです。

一方で、データ分析は有用ではありますが完璧ではないということもいえると思います。それは、抽出する項目を人間が作為的にできること、そして例外ケースとされる回答の価値を矮小化してしまう傾向もあるからです。当店のサービスに満足いただけましたか、というアンケートに対し、さてサービスとはどのサービスを言うのだろうと思うことがあったり、逆に自分がアンケートを取る立場になると、欲しい回答ばかりに目が行ってしまい、受け取りたくない回答には関心を寄せられないということがあります。

ここにデータ収集の落とし穴があると思います。もちろん世の中のPOSシステムやビッグデータの解析技術はハイスピードで進んでいるのでしょうが、社会福祉という分野は感情労働の色が濃いので、データ分析に馴染まない部分が多いように思うのです。

人の役に立つこと、人を幸せにすることの答えはそもそも千差万別なのに周囲の環境やその時代の文化によっても左右されてしまいます。だから、アンケートやデータ解析の結果をもってこうすれば人の役に立つ、人を幸せにする、と誓ったことが想像とは違う結果を生むこともあるように思います。

この予測と実績の差異は、多数のデータからある程度恣意的に抽出したデータによって人の幸せの方向を定めてしまったり、多数の方の幸せの基準が一人の方と異なったがゆえにその人は満足できなかったという個別性の両方に起因するのではと思っています。障害福祉の歴史における施設の増設が、施設を利用する方々の望みではなかったということはこの恣意性の顕著な例だと思っています。

では、ソーシャルとビジネス、すなわち社会福祉と事業運営のバランスをどう取っていくのかということになるのですが、両者の融合・共存は意識をしないと水と油のように分離してしまい、継続したモニタリングをしないと分離したままになってしまうということを前提にすることが大事なのではないかと思っています。

そしてこの融合・共存は双方から発せられる声を対等に捉えることで、やっと叶えられるものなのではないでしょうか。どちらかに偏った声を取捨選択したくなったり、都合のいい声だけに耳を傾けたいという思いは誰しもにあるものですが、少々煩わしかったり、耳の痛い発言にこそ、潤滑油の要素が隠れているように思います。

最後に、人の役に立ちたいという思いが、今目の前の人に対するものでもあり、貨幣価値の効果を十分に発揮して叶えられるものでもあるということはどちらも正しいと思うとともに、心の底から笑うことや、自分の身体が健康であることがお金よりも大事だと気づくとき、ソーシャルとビジネスのバランスを自分自身が改めてモニタリングできる機会になるように思います。

 

◆プロフィール
吉岡 理恵(よしおか りえ)
1981年東京都生まれ。
東京都立大学経済学部卒業。
20代は法律系事務所にてOL、30代は介護・障害福祉分野で現場の実務や組織マネジメントを学ぶ。女性管理職応援中。
CLO 最高法務責任者

 

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