地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記61~介護ロボットの発展に思う事~ / 渡邉由美子

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

大分以前の話になりますが、私はわずかな期間ですが介護ロボットの研究開発をしている場所に出向いて開発データの蓄積にご協力しようと考えていた時代がありました。

筑波の研究学園都市の中でやっていたもので私の家から通うと少々距離があり、やりきれなかった活動の一つです。

そして、介護ロボットは何らかの事情で出来ていた事が出来なくなった人の元通りに近い機能を補填するものが多く、私の様に先天性の障がいを持つ者は筋肉から正しい信号が出なかったり、脳波が健常者とは違ったりして、治験に協力出来る項目が少なかった事を最近思い出しました。

それでも夢の歩行が可能にならないかと介護ロボットHALに入ってみたいと思い、現地の人も手伝って5人がかりほどで大汗をかきながら、機械を装着しようと試みました。

しかし、結局膝がある程度は伸びないと機械に身体を固定出来ないとか、隙間が空いてはいけないところに隙間が空くと、筋肉の指令が上手く伝達出来ず、立つことも歩くことも可能にはなりませんでした。

その時に感じたことは、私がもし立つ・歩くを今更実現するためには、身体ごとすっぽり機械の中に入ってガンダムが歩くみたいにするしかないのだと悟りました。

その大きさやコストだとまず実用化は難しく、狭い家の中や街中を歩くのは大変な作業だと思いました。子供たちのヒーローにはなれる?かもしれませんね(笑)

食事支援ロボットの開発にも協力したいと考えましたが、これもまた食べ物が口に入るまでの角度やペースが難しく、何十回もトライしてそれを機械に記憶させ、人の手で食べさせてもらうことに近い状況を作りだすことが困難に感じました。

食べ物の形状が固形であれば割と上手くタイミングを合わせて食べることが出来ましたが、汁物や汁気のあるものは角度の調整が難しく、飲めるものよりこぼれる方が多かったり、こぼれても支障がないようにその頃は熱いものは飲む対象に出来なかったりしていました。

今はもっと、実用的な開発が進んでいることと思います。

何分にも個別性に合わせての開発なので、時間やコストがかかり、実用的に普及して活躍できているものは少ないことを現場で身近なこととして知りました。

私は、会話に不自由する障がいは今のところないので、見せて頂いただけでしたが、コミュニケーション支援に対するロボット技術やテクノロジーには目を見張る実用的な進歩をその当時でも感じました。

声が出るうちに自分の声を五十音で録音しておいて、声が出せなくなってから僅かな信号をキャッチして、その人の意思を相手に伝えるコンパクトな在宅でも使用可能な装置が開発されていました。

それから去年行ってみたいと思いながら実現できなかったこととして、重度の障がいのある人がロボットを介して接客してくれるカフェに今年は是非行ってみたいと思います。

重度訪問介護を使った就労の制度的実現を障がい者運動として日々働きかけているものとしては、在宅で寝たままの姿勢でどこまでの普通に準ずる接客が可能になっているのか、とても深い関心と興味があります。

人を楽しませるとか、利用客の気持ちを和ませもてなされた気分にさせて料理のうまさとともにリピートして食べに行きたいと思わせる話術がなければ継続は難しいと思うので、そのあたりの状況がどうなっているのか、ロボットのトラブルがなくうまく軌道に乗りそうなのか知りたいことはたくさんあります。

この分野では重度な障がい者が働くということが可能となれば共生社会の実現につながります。そう考えるだけで、希望が持てるロボット分野です。

人を抱えあげるときの介護者の負担を軽減するマッスルスーツという介護者が身体に着けて対象者を持ち上げることによって、介護者の腰痛予防や身体的負担を軽減するものも以前より脱着の手間暇が軽減されてきているようです。

あくまでも動画で見る範囲であって、使ってみたわけではないので想像の範疇ということになりますが、人的支援とコラボする介護労力軽減ロボットには少し前向きな興味が持てるような気がします。

それでも私が真に望むのは介護者の労働環境や介護職に対するやりがいアップの方策、他の職種と引けをとらない賃金など、マンパワーの確保に努力できることをまだし続けて安易な機械化は避けたいと思わずにはいられません。

なぜならば機械は所詮どんなに有能になったとしても、一定のインプットされた動きしかできないので、私のように重度な障害はあってもその日その日で微妙に違う生活を望むと、ロボットでは対応できないことは必ず生じてくるし、ロボットの無機質な動作が寂しいと感じることも人間なので多いと思います。

時には感情がぶつかり合い、人と人との関わりが煩わしいと感じることもありますが、介護者と共鳴しながら人間らしく暮らす人生を探求したいと心から思います。

ロボット開発の現状を見据えた中でも介護者とともに生きていきたいと考えています。

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

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