地域で生きる 20年目の地域生活奮闘記①~余暇活動で感じたこと~ / 渡邉由美子

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

みなさん、はじめまして。渡邊由美子と申します。私は、重度な肢体不自由の障がいを持ちながら、地域で暮らし始めて早20年が経とうとしています。

これから、私が常日頃行っている社会参加活動、障がい者運動、公的介護保障運動から、日々の介護者とのすったもんだしながらの暮らしぶり、更には余暇活動までを、随時ご紹介しながら、そのときそのときで抱く思いや葛藤、大きな山を克服した時の達成感等を、赤裸々に書き綴っていこうと思います。

それによって、湧き上がる人間的感情や、社会的な問題としての私だけではない課題を、この場を借りてみなさまと共有していきたいと考えています。

これから、末永くよろしくお願いいたします。

さて、第一弾として書こうと思うことは、共存・共生の難しさについて考えたことです。

先日、「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)―ぼくが選ぶ未来―」という映画を観て来ました。アニメーション映画でしたが、ジブリ映画の如く映像や描写がとても美しく、ダイナミックで、スケールがとっても大きく、すぐに映画のストーリーの世界へと誘ってもらえる素敵な作品でした。;

映画の世界に引き込まれ、日常の様々な大変さや忙しさをひととき完全に忘れさせてくれると共に、精神的なリフレッシュを私にもたらしてくれました。

最初、主人公の猫の妖精は、故郷の森を奪った人間を恨み、妖精とは相容れないものだと考え、徹底抗戦の構えで対立しています。しかし、とある人間と旅をしているうちに、人間にも悪いやつばかりではない、また妖精の中にも色々な考え方をする者がいると知って、次第にどちらか一方を善、もう片方を悪と決め付けるのではなく、共存・共生に無類の価値を見出していきます。

最後には、妖精だけの楽園を創ろうとした者と戦い、人間との共存を望む妖精と共に、人間の築いた社会を守り抜きました。

何故この映画をご紹介したかと言いますと、妖精と人間の関係は、障がい者と健常者の関係にも通ずるものがあると考えたためです。障がい者を特別な人とか、大変な人とか、生産性が無い、生きていても意味のない人間と捉えれば、誰もこの社会で共に生きることなど考えなくて当然だと思います。

ボランティアであったり、介護者となって個別性の高い生活に深く関わったり、重度障がい者の就労ということを考えたりする中で、健常者は障がい者を理解しようと努力します。

そして、障がい当事者も健常者を支援者として迎え入れるために、何をしなければならないか、考えたり話し合ったりする中で、相互理解を深め、どちらかが優生な社会ではなく、お互いがお互いを認め合う真の共存・共生社会を作り上げていくことが可能になると思います。

それを、毎日具現化する障がい者の生き様は、並大抵でそれを形作ることは出来ません。

やることがたくさんあって私自身の頭が整理できていない、体力的に疲れている、24時間人に気を遣っていることは誰しもできないなどの複数要因で、何の他意は無いつもりで私が発した一言は、「たくさんのことをできる限り短い時間でこなしてほしい」「私に聞かなくても出来ることをどんどんやってほしい」「身体介護や家事援助だけではなく、外出や事務仕事も併せてやってほしい」等々、介護者の立場から見れば果てしなく法外な要求や要望と捉えられ、簡単に関係性が崩れてしまいます。

そのような介護者との人間関係を、毎日のように経験しながら生きている暮らしは、お互い釈明の余地も無く、混迷・困惑を極め、ただただ終わってしまうときが多いのが現実です。我ながら本当にもったいない!本当はとことん話し合いの場などを設け、言葉の真意を理解してもらい、時間が無いとか自分の身体が自分で動かせないもどかしさから端を発した言葉であることを伝えたい思いでいっぱいになります。映画のワンシーンのように綺麗に理解し合えるほど、現実は生易しいものではないと感じます。

それでも、今日から明日へ希望を持って生活を紡いでいかなければなりません。

障がい者は、この社会からすぐに排除されてしまう存在です。しっかりと根を張って「重度障がい者ここにあり」と生きていける道を模索し続けていきたいです。

そのぐらい強くなれれば、優生思想を共に乗り越える社会に一歩近づく気がします。

コミュニケーションの大切さを骨身に沁みて実感しています。伝えたではなく、伝わったとなるための話術も磨いていきたいと思います。

今日みて、感動の涙が出た上記の映画の如く、お互いを尊重しながら大切に生きていける地域をこれからもつくっていきたいと思います。

今まで行政とは闘う姿勢をずっと続けてきましたが、闘いは時として敵対にも繋がります。そろそろお互いに、お互いの立場を尊重しながら合理的着地点を見つけて、ある意味行政をも味方に付けながら私の障がいが今後、どんなに更に重くなろうとも、一生地域で暮らしながら自然に人生を閉じられる穏やかな生活をしていきたいと思います。

時には心洗われるものを見たり、楽しむことも忘れないでいたいと思います。

 

◆プロフィール
渡邉由美子(わたなべゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。

その後、2000年より東京に移住。一人暮らしを開始。

重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

関連記事

TOP