必要な人が必要な介護を受けられる社会を目指して / K・M
本著のタイトル「異端の福祉 重度訪問介護をビジネスにした男」のタイトルは、まさにこの本の内容や高浜代表のこれまでの活動を集約したような言葉だと思います。
障害者福祉におけるこれまでの国の考え方や対応は障害者やその家族にとって良いものでは決してありませんでした。
高浜代表はボクサーという全くの畑違いから、たまたま縁あって障害者福祉に携わり、障害者福祉の世界でもまた縁があり障害者運動に参加しました。
多くの人の力のおかげで、障害者福祉の制度は少しずつ障害当事者やその家族にとって良いものへと変わりつつあります。
そしてまた縁があって福祉系のベンチャー企業の立ち上げに参画し、そこでの縁で株式会社土屋を創業されました。土屋は全国47都道府県に事業所を設ける大きな組織となり、より障害当事者やその家族に大きな影響力を与える存在となられました。
私は「縁あって」という言葉を使いましたが、誰しも人生を歩んでいたらいろいろな縁があります。
習い事をしたり、転職したり、入院したり、障害福祉サービスを利用したりと、何か環境が変わるとそこには新たな縁があります。
ただ、その縁があったときにどう行動するかで、その縁は人を幸せにするもの、社会を変えるもの、ほとんど何の変化も起きないものなど多様に変化します。
高浜代表は本著の中でもその縁があったときに、誠実に向き合ったり、失敗してもポジティブなものに捉えたり、更なる挑戦に挑んだりすることで、人を幸せにするものとなり、社会を変えるものとなり、更なる縁を生み出すこととなったのだと思います。
高浜代表が株式会社土屋という大きな組織を作ったのはある種必然的な部分はあり、人は縁があったときにどう行動するかでその後の人生は大きく変えることができると言えます。
高浜代表の異端というのは、ボクサーから福祉事業をする企業の代表という異色の経歴を指す1つの言葉ですが、それは高浜代表が人生のあらゆる場面で行動したからこその必然性もあるのです。
また異端というのは株式会社土屋のビジネスモデルを指す言葉でもあると感じました。
福祉施設を運営する多くの事業体は、利益を追求するという面においては決して得意とはしておらず、さらに重度訪問介護事業は国からの報酬が比較的安価なため、なおさらであります。
そんな中、土屋は重度訪問介護を収益の大半としながらも売上、従業員への給与面で高い水準を実現しています。
本著のなかでも規模の経済、DXなど経営における努力、工夫をしており、他の福祉施設とは異なる存在として重度訪問介護をビジネスとして成り立たせているのです。
また、売上ばかりを追求して福祉サービスの質がおろそかになる事業体も少なからず存在します。
しかし土屋は高浜代表が福祉に対する強い想いがあり、それが設立の経緯になっています。
障害者が人間らしく生きる当然の権利を持ち、自立した生活を送れるために重度訪問介護があり、重度訪問介護事業を継続させるために経営の努力が必要と考えています。
重度訪問介護という、収益の面で他の事業所は敬遠しがちだけれど、一方で社会性のある素晴らしい制度を中心事業としながら高い収益を達成している。そういう意味でも異端と言えると思います。
紛争、難民、貧困、障害、難病…世界ではさまざまな事由で困難な状況にある人がいます。
そんなことは知っていると思うかもしれませんが、実は断片的にしか分かっていない人もいると思います。
障害や難病の場合、人によっては身体がほとんど動きません。
痒くても掻くことができない、1日何回もする排泄は人の介助がないとできない、目を開けることができない。
重度訪問介護はそのような人の役に立つお仕事です。
誰もが障害や難病の当事者になる可能性がある中で普通に暮らしていることに感謝しつつ、社会がもっと重度訪問介護に目を向けてくれたらと思います。