世間の非常識が、世間の常識へ / 新里宗隆(ホームケア土屋 関西)
「こんな著書があっていいのか」
当時、著書のタイトルやテーマを見てそう感じてしまった。
その名も「異端の福祉 重度訪問介護をビジネスにした男」。弊社の代表取締役の高浜さんが手掛けた著書だ。
私は、この強烈なタイトルに釘付けになってしまった。それはなぜか。重度訪問介護をビジネスにしたという強いワードがあり、全てはお金儲けにしていると偏った目で見られてしまうのではないかと思ってしまったからだ。そして気づけば手に取り、貪るように読んでいた。しかし、読んでいくにつれ、そのような心配は不要である事がわかった。
著書では障害者福祉に対して、問題点や課題、そして必要な改革について述べられている。高浜さんは福祉の現場に携わる経験を持っており、多くの障害者の方々と接してきた中で、その問題点や現状に対する課題について、このままではいけないと感じている。
例えば、社会的な偏見や差別が根強く残っている現状について、福祉制度の中で、専門家主導のアプローチが主流である事に疑問を投げかけ、利用者自身が主体となるアプローチをもっと重視すべきだと主張している。
このような現状への指摘は、福祉の現場で働く人々にとって非常に重要なものであるといえる。高浜さんは、そんな福祉の現場における課題や問題点を的確に指摘し、それに対する改革の方向性を示唆している。
もちろん、この著書は高浜さんの見解や主張が多数含まれており、その評価は賛否両論あるかもしれない。例えば、専門家主導のアプローチを否定するという主張に対しては、その有効性や必要性に疑問を持つ人もいるかもしれない。
しかし、この著書は、福祉の現場で働く人々にとって、それぞれの立場や専門分野にとらわれず、障害者福祉に向き合うことの大切さを説いた内容になっていることは断言できる。
ここで、私が興味深く感じた内容を紹介させてほしい。それは高浜さんが最初に介護を学んだ東京都多摩市にある障害当事者が運営している事業所「自立ステーションつばさ」で、代表を務める現参議院議員の木村英子氏とのエピソードだ。
高浜さんがその事業所で働き3ヶ月が過ぎたことだった。木村氏からクライアントから理不尽なことを言われた時にどのように対応しているかと質問され、高浜さんは「適当に受け流しています」と答えた。
クライアントとぶつからない為に、飛んでくる言葉の刃から自分の心を守るために”適当に受け流す”事が最もうまくいく処世術だと感じ、高浜さんが発した一言だった。
しかし、高浜さんの一言で木村氏が「障害者を馬鹿にしているのか!」と一蹴された。そして、高浜さんも否定してその場で言い返し激論が交わされた。すると、木村氏から「そう、そういう風に言い返してほしい」と言われ、更に「介助の現場は、私達にとって他者との関係を学ぶ大切な場所だ。学び合うために一緒にいるのだから、言われたことをやるだけのロボットみたいな介助者にはならないでほしい。ともに在り、ともに幸せを作っていく場所だから」と言われた。
私はこのエピソードを知り、介助を受ける側、介助をする側、共にどちらが上や下というのはなく、対等に考える事の重要性を学んだ。そして、障害者と本音で向き合うことが大切である事も感じた。
この事は介護の現場で働いている私達にとって、とても心に刺さるエピソードではないかと感じている。ぜひ、介護職だけではなく、介護に関わる方、これから興味がある方にも読んでほしい内容だ。
そして最後にこれだけは言いたい。介護の世界にもITが活用され便利になってきている。OpenAIが開発されたCahtGptもとても有名であり、活用されていくのは時間の問題ではないかと感じる。
しかし、どんなに文明の力が進んでも、最終的に人間が携わっていくこの介護の仕事は今後も無くなることはないだろう。むしろ、介助を必要とされる側が多くなるのは間違いない。
その時に、自分はどんな想いで、どんな気持ちで、どんな志で、この激動の時代に生きているか、感じているか、それを意識してほしい。そして、この著書を読んで、感じてほしい。高浜さんの言葉や取り組みを見てほしい。
介護は自愛の精神で尽くし、重度訪問介護はビジネスとして考えてはいけない、という世間の常識から離れて、介護の仕事をしている。重度訪問介護の仕事をしている。だからこそ、高い給与水準であり、働く人々がやりがいを感じ、笑顔でハッピーに仕事をしている。
これが当たり前へと変わっていく世の中になっていくことを、そして少しでも介護について興味を持ってもらえる人が増えることを心から願っている。