【異端の福祉 書評】「介護ライン作業福祉士」から「本音で向き合う福祉士」へ / 渡邉良平(ホームケア土屋 東海)

「介護ライン作業福祉士」から「本音で向き合う福祉士」へ / 渡邉良平(ホームケア土屋 東海)

▼第一章より抜粋
「障害者には社会経験の機会を奪われた人も多く、関係を築くのが苦手な人もいる。介助の現場は、私たちにとって他者との関係を学ぶ大切な場所だ。学びあうために私たちは一緒にいるのだから、言われたことをロボットみたいにやるだけの介助者にはなってほしくない。ともに在り、ともに幸せをつくっていく場なのだから」

この文章に、私はとても共鳴するとともに、過去の私を叱責したい衝動に駆られました。

私は前職で「特別養護老人施設」「認知症対応型グループホーム」と、いずれも「高齢者介護」の現場に、日本福祉大学を卒業後、約9年従事していました。障害福祉の分野は、株式会社土屋へ転職させていただき、初めて携わる分野です。

高齢者介護の現場で日々従事する中で、高浜代表が目の当たりにされた「介護現場の過酷な現実」と非常によく似た経験を、私自身もすることとなります。

私が「特別養護老人施設」で目の当たりにした現実は、人間の尊厳が守られていない、自分らしい生き方や人間としての生き方とは程遠いものでした。

定刻になれば一斉にクライアントへ説明と同意なくパット交換に入る施設の現状に、「まるで某自動車工場のライン作業員のようだ」と思ったことを今でも鮮明に覚えています。

良く言えば「クライアントの安全第一」や「命をお預かりしている自覚」いう大義名分の下に、ただ一日を無為に経過する「変化のない毎日」が当然のようにありました。

最初はそのような施設の現状にとても驚きました。しかし、常に人手不足の業務に追われる中、そのような「異常な施設の日常」が「通常」に感じてしまう程に私自身が疲弊し、麻痺していたと当時のことを思い出しました。

「クライアントから理不尽なことを言われたときの対応」に関しても、「9年前、介護の世界へ足を踏み入れた時の対応はある意味、正しかったんだ」と感じたのと同時に、「高浜代表が当時最もよい処世術だと思っていたことは、過去に私も指摘していただき、私自身が最もよいと思っていたことだった」ということです。

当時の私は介護の素人で、クライアントの対応が上手くできず、イライラを募らせてしまった結果、クライアントから激しい言葉をぶつけられました。そして「あなた(渡邉)の髪型が気に入らない」とまで言われました。

理不尽に感じた私は「ヘルパーだからといって、言って良いことと悪いことがある。ヘルパーである前に、私は一人の人間です。今回の対応不足は私が至らなかったのでその件については謝罪いたします。しかし、私の髪型までとやかく言われることはないでしょう」と本音で言い返し、トラブルに発展することがありました。

このトラブルに対し、当時従事していた現場の上長から「クライアントから飛んでくる言葉の暴力に真っ向から対面するとメンタルをやられ、過去何人も辞めていった。その場を離れたり、適当に流すのが良いよ。認知症相手は疲れるだろうけど、まぁ上手くやってね」と指摘され、それを最もよい対応だと思い込んでしまいました。

その後は、クライアントの対応においては一切自分の本音を言う事なく、理不尽だと思う事も適当に受け流し、今日に至るまでその対応を正しいと思い込み、貫いて来ました。

そのため、冒頭に記載させていただいた文章(▼第一章より抜粋~)を読んだ際はとても衝撃でした。
それはあの時、介護素人の私が取った「本音の言動を肯定するもの」だったからです。
これから私は「本音でクライアントと向き合うこと」を信条に、対応していきたいと強く思いました。

最後に・・・
社員一人ひとりのやりがいを大事にしていただける「株式会社土屋」は本当に素晴らしい会社だと思います。

現在、私はホームケア土屋東海のコーディネーターとして従事させていただいています。私生活では妻と、8月に生まれる予定の子どものことを考えながら、毎日楽しく過ごさせていただいています。

今回『異端の福祉』を読ませていただき、現在の仕事を全力で全うさせていただくとともに、もし機会をいただけるのであれば何か土屋内で新しいことに挑戦したいな…という漠然とした気持ちも新たに芽生えました。

『異端の福祉』を読ませていただく機会をいただきまして、本当に有難うございました。
介護従事者だけではなく、多くの方の目や心へ届く事を心より願っております。

最後までお読みいただき、有難うございました。

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