ハーモニアスカコフォニー / 宮本武尊(CMO 最高マーケティング責任者)

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

東京パラリンピック2020の閉会式コンセプトである「Harmonious Cacophony(ハーモニアスカコフォニー)」は「調和のとれた不協和音」という意味で多く知られています。

これを社会に当てはめるならば、

「それぞれの違いを認め合い、それぞれの個性が輝くことで、多様性が調和する社会が実現する」

平たく言えば「みんなちがって みんないい」というのかもしれません。

世の中の誰一人として置いてけぼりにしない“優しさ”をイメージできます。

とても素晴らしい世界観に感銘を受けますし、株式会社土屋のビジョンにも「多様な声が聞こえる 交響圏へ」というフレーズの意味が重なることから、世の中が目指さんとする未来への意識は同じ方向なのかもしれない、と思うと嬉しくて安心できます。

一点だけ違和感があったのは「Cacophony(カコフォニー)」についてです。

本来は“不快な音”、完全に耳障りなノイズを意味する音楽用語であり、音域の幅や奥行きを広げ、作品の情景を生み出す為に使われる不協和音とは“似て非なる意味”のようです。

私がイメージするその不協和音は「Dissonance(ディソナンス)」と音楽用語が存在するので、なぜ“不快な音”であるカコフォニーを採用したのか、その意図が気掛かりではありますが…

ところで、私たちが理想とする交響圏も“多様性が尊重される社会”を指しています。正直にいえば、これを実現することは本当に難しいと思っています。

なぜなら、多様性を尊重する社会の実現は“その価値を世の中の一人一人が理解し腹落ちした状態”でなければ不可能だと思うからです。

おそらく100年、200年、もっと時間が掛かることかもしれません。

まず第一に、幼い頃から受けてきた教育は私たち一人一人のアイデンティティーを形成する大きな要素になるので、家庭や学校教育から見直していかなければ根本的な価値観を変えていくのは難しいことだと考えます。

そして第二に“カエルの子はカエル”つまり親世代から新しい意識に変わっていなければ当然、子にも同じ価値観が自然と根付きます。
仮に親が意識を変えることに成功したとしても、学校教育を担う方々もそうでなければ効果は薄まるわけで、まるでイタチごっこのようになります。

幅広い世代間での価値観の変化をグラデーションとしてみたときに「多様性を尊重することは自然なこと」だという価値観で覆われるには、数十年は掛かると予測できます。

「できないことを認めて支え合う?多様性を尊重する?そんなのはキレイ事でしかない…夢物語だから」

自分が苦しい時、忙しくて余裕がない時、このような言葉が頭の中によぎった記憶があります。

生きていくうえでは厳しい世の中の現実を見つめる力はとても重要です。

しなし、そればかりに捉われてしまうと今と変わらず10年経っても20年経っても「多様性を尊重しましょう」という“キレイ事”は世の中に漂っているのではないでしょうか。

だからこそ今、キレイ事こそ大切にするべきだと思っています。
もちろんそこには現実を見つめる力も必要ですから、うまくバランスをとることがベストです。

諦めるわけではありません。相当時間を有するのは間違いないと踏んでいますが、せめて“生きている間”に私たちの理想郷である交響圏に少しでも近づけるように尽力することが大切だと思っています。

私は、自分が生きている間に交響圏というゴールへ辿り着かなくても良いと考えています。

私たちが大切に思う存在の“命のバトン”を繋いでいく先に、いつか交響圏と呼べる世の中を人々が笑顔で暮らし、たくさんの動植物たちが汚染された地球ではなく、青々とした生命に満ち溢れる地球で平和に健康的に暮らしている、そんな光景を想像し、そうなることを信じながら駆け抜けて、ありったけの願いを込めたバトンを渡していくことが使命だと、私は思っています。

※交響圏=歓びと感動に満ち溢れた生の在り方、関係性の在り方を追求し、現実のうちに実現することを目指す社会。

 

◆プロフィール
宮本 武尊(みやもと たける)
1986年、青森県生まれ

1児の父。元キックボクシングジムインストラクター。憧れのイタリアでジム設立を目指しながら介護業界へ。重度訪問介護事業で広域的なマネジメントを経験。ソーシャルビジネスの素晴らしさに魅了され、社会起業家を志す。趣味はYouTube視聴。

 

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