本当のオンラインのはじまり / 笹嶋裕一(常務取締役 兼 CSO 最高戦略責任者)

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

時代の転換期にはいつだってドラスティックな出来事がある。
皮肉にも新型コロナウィルスの影響がオンラインの積極活用を推し進め、人と会うことを極力避けなければいけない状況の中、一方では世界中の人たちとビデオ通話を通じてつながれる世界が当たり前になっている。

ただ、水を差すようで大変恐縮ではあるが、個人的には日本特有の揺り戻しによる、「やっぱり対面だよ」論に対しては、部分的賛成に留めておきたい。

なぜなら、今まではそこに行かなければ見ることができない、聞くことができないことを、物理的な制限がないことによってより多く触れることができたからである。
生活における優先順位の付け方も、オンラインの概念が入ることにより広がりがでたことを実感している。

また、キャンプ、べランピングなどの非対面の副産物も多く、自宅や自然を中心として世界が組み立てられ、人との接触が制限された中でも、いかにして工夫しながら生活を充実させることができるか考える機会を持つことができた。
高価格帯のアウトドア用品メーカーのスノーピークの時価総額も初めて1000億円台に乗ったそうで、話は飛躍するが即ちそういうことなのだろう。

そして、介護が必要な家族と離れて暮らす方にとっても、メリットは大きかったのではないだろうか。
ビデオ通話により、リモートで手軽に近況を知れることで安心にもつながるし、自分が同居せずに社会資源を使うことに後ろめたさを感じている方がとても多いなか、オンラインでのコミュニケーションでこころの距離を近づけることができたのはポジティブな変化であったに違いない。

他方、同意と合意形成のとりつけにおいては対面の方が適していると思う。
オンラインミーティングを終了した後の感想の共有やギャップの確認作業の時間が必要と感じることもある。
オンラインでは、呼吸が見えずらいのと、独特のカット割が存在するので、どうしても割り込んでの補足がしにくい。コメントを集約して必要最小限におさめるスキルは身につくものの、行間や文脈までもが削ぎ落されてしまった感は確かに否めない。

そんな今も、フィジカルな世界は勿論回り続けている。
株式会社土屋が全国展開をしている訪問介護、訪問看護、デイサービスなどは対面で日常を支え続けているし、同様に生活を送る上で必要不可欠なインフラは手続き以外、有難いことに常にオフラインだった。
私が住む東京でも感染者は一桁台になり、徐々にコロナ前の日常に戻りつつある。
スーパーもショッピングモールもラーメン屋も、「たしかにそうだったな」と気づかされる毎日である。

次なるテーマはコロナ後のオンラインとオフラインの共存である。
コロナから切り離したオンラインの活用方法が焦点になる。

多様な働き方の実現により、出勤するひととリモートワークをするひとが同時に現れ、新たな空間を行き来することになる。その実、ハイブリッド勤務が一番難しいとも言われている。

そうなると転換期は今もなお始まりなのかもしれない。
新たな価値観の中で試されることはこれからも続くはずで、その答えはまだない。

 

◆プロフィール
笹嶋 裕一(ささじま ゆういち)
1978年、東京都生まれ。

バリスタに憧れエスプレッソカフェにて勤務。その後マンション管理の営業職を経験し福祉分野へ。デイサービス、訪問介護、訪問看護のマネージャーを経験し現在に至る。

 

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