嫌いじゃないし、違和感ないけど、めんどくせぇ / 鶴﨑 彩乃

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

チョコが食べたい。イライラする。怒りの沸点が低い。冷静に落ち着いて話さないと、目の前の誰かに八つ当たりしてしまいそうだ。1人で腐るほどベッドで寝ていたいけど、そういうわけにはいかない。アテンダントを拒否したら、命をつなげられない。

私が、「障害者の1人暮らし」という環境を保ち続けたければ、私個人の精神状態は二の次だ。そして、この暴君のような思考回路の原因は明白。生理だ。

生理は、個人差が大きいという。私の症状は割と重いと思う。腹痛はきつく、睡魔はしぶとく、私を尾行する。あらゆる体調不良を引き起こし、1週間ほどで何気ない顔をして去っていく。そしてまた、カレンダーのページを変えるころ「ちぃーす。」と、悪気ゼロの軽いテンションでやってくるのだ。ガチで嫌い。

私は、自分の性別に心理的な違和感みたいなものは一切ない。その一方で自分が女性であるということにメリットを感じたことはあまりない。女性であることが「めんどくせぇ。」と思うことは多い。生理は、その最たるものだが、他に挙げるとするならばバスト、トイレだろう。

「バストを決められた定位置に収める」というのは、至難の業だ。実家にいたころは、母がやってくれていたので、4秒で終わっていた。

理由は、シンプル。母の血が半分入っているので、身体つきも似る。それに何より「私」という人格の基礎を作り上げた人なので、私の「違和感」なんて手に取るようにわかるのだろう。

ところが、それをアテンダントにしてもらうようになってから、難易度がめちゃくちゃ高いことに気づくのだ。

バストが定位置に収まらないというのは、1日のテンションと体調を左右するのだ。肩こりの症状が強く出てしまうし、ズレたことにストレスを感じるのだ。それに加えて、自分で位置を直せないためストレスが倍増となる。

トイレに関しては、私は1人で行えないので普段はオムツを着用しているのだが、男性のように尿瓶を使用できないし、広がりやすいためオムツから高確率で脱走し、濡れて寒い。冬は拷問だ。

こんなことを書くと、男性陣から「俺らも大変なんやぞ。」と怒られてしまいそうだが、今はグッとこらえて私の愚痴を聞いていただけるとうれしい。とりあえず、男性がめちゃくちゃうらやましい。

アテンダントに関しても、男性の筋肉量・骨格・基礎体力等を考えると、女性に比べて明らかに介助者向きの身体つきの人が多く、人手的に確保しやすいし、その方が介護を受けるのも楽だっただろう。「じゃあ、今からでも男性のアテンダントに来てもらえばいいだろう。」と思った方。同性介助という原則もあるし、心理的安全性を下げずに生活したいと思う以上、それは不可能だ。そんな理由から、どうしても「あー。自分が男やったらな。」という考えがよぎるのだ。

私の周りの女性達は、母を筆頭に「自分で道を切り拓く」人が多い。そのため、女性が社会的弱者であると私自身、実感したことはない。

確かに組閣人事をニュースで見ていると、おじさんが多い気がするが、それは政治家という職種が、ある一定の立ち位置にいる人にしか魅力が感じられないということの現れだと、私は考える。そしてその問題は、「性別による社会進出の格差」とは別のところに原因があるのではないか。

現に世界史的な視野で見るなら、マーガレット・サッチャー、マリア・テレジアなど魅力的な女性の権力者を挙げたらキリがないと思う。もちろん、日本でも、北条政子・春日局・大山捨松など有能な女性はいつの時代もいるし、馬鹿な男もいる。

男女関係なく誰もがしたいことを選択し、足りないところをお互いに補い合うことができれば、男女平等なんて声高に叫ぶ必要もないと思う。それは、私が平成という時代に生まれて来られたからこその思考回路なのかもしれない。

しかし、まぁ。まずは、今日のあなたの晩ご飯を作ってくれた人に、「ありがとう。」っていうところからはじめてみたら、明日は少しいい日になるかもしれない。

 

◆プロフィール
鶴﨑 彩乃(つるさき あやの)
1991年7月28日生まれ(計算不要)

脳性麻痺のため、幼少期から電動車いすで生活しており、神戸学院大学総合リハビリテーション学部社会リハビリテーション学科を卒業しています。社会福祉士・精神保健福祉士の資格を持っています。

大学を卒業してから現在まで、ひとり暮らしを継続中です。
趣味は、日本史(戦国~明治初期)・漫画・アニメ。結構なガチオタです。

関連記事

TOP