土屋の挑戦 インクルーシブな社会を求めて㉕ / 高浜敏之

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

25 土屋の12のバリュー①

私たちはミッションビジョンと合わせて12のバリューを策定した。

① 優しく、そして、強く、品位をもって、他者と関わる

② 命への、他者への、理念への責任を選び取り、社会正義を実現する

③ 水の流れのように柔軟に、弛むことなく

④ 未来の希望に注目し、過去の経験から学ぶ

⑤ 寛容であれ、肯定的であれ、かつ、批判的であれ

⑥ あらゆる人間関係の基盤は信頼、まず自ら信頼を提示しよう

⑦ 怒りの爆発は何も生まない、不正には憤ろう、強く、深く、しかし冷静に

⑧ 深く聴こう、丁寧に語ろう、できるを認め合い、できないを語り合おう

⑨ 対話こそ生命線、責めなじることは禁物です

⑩ 学ぶ力、素直さと謙虚さと誠実さと

⑪ 気づく力、客観的かつ多角的視点をもって

⑫ 笑い、時には違う場所から見てみよう


 
このバリューは、私と、それから株式会社土屋の取締役兼最高文化責任者の古本聡さんのコラボで創り、共同経営者の役員の皆さんの承認を得て策定した。このバリューには、私たちが何者でありたいか、どんな共同体でありたいか、あるべきか、について、過去の反省と未来への希望を込めて、私たちの新生への覚悟を吹き込んだ。12のバリューはメンバーそれぞれとの約束であり、それに基づいて株式会社土屋の評価制度も構築されている。

このバリューは、私たちがミッションを握りしめ、ビジョンを達成するために、メンバーに期待される倫理規定である。私たちが心理的安全性の保障された、かつそれぞれの創造性を最大限発揮することができる、そんなコミュニティーでありたいという願いを書き込んだ。メンバーの成長欲求が満たされ、私たちに課された倫理的かつ社会的責任を果たすことができる、まさしく品位ある組織になるという決断を書き込んだ。

この12のバリューを作成するにあたって、私は2つの異なるグループからインスパイアされた。一つは薬物依存症者の治療共同体のダルクであり、もう一つは世界的なコーヒーチェーン店のスターバックスである。

ダルクでは治療回復のためのリハビリのため、毎日欠かさず分かち合いのミーティングを行う。そのミーティングの冒頭で、メンバーで12ステップという文章を輪読する。
 

① 私たちはアディクションに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた。

② 自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。

③ 私たちの意志と生き方を、自分なりに理解した神の配慮にゆだねる決心をした。

④ 恐れずに、徹底して、自分自身の棚卸しを行ない、それを表に作った。

⑤ 神に対し、自分に対し、そしてもう一人の人に対して、自分の過ちの本質をありのままに認めた。

⑥ こうした性格上の欠点全部を、神に取り除いてもらう準備がすべて整った。

⑦ 私たちの短所を取り除いて下さいと、謙虚に神に求めた。

⑧ 私たちが傷つけたすべての人の表を作り、その人たち全員に進んで埋め合わせをしようとする気持ちになった。

⑨ その人たちやほかの人を傷つけない限り、機会あるたびに、その人たちに直接埋め合わせをした。

⑩ 自分自身の棚卸しを続け、間違ったときは直ちにそれを認めた。

⑪ 祈りと黙想を通して、自分なりに理解した神との意識的な触れ合いを深め、神の意志を知ることと、それを実践する力だけを求めた。

⑫ これらのステップを経た結果、私たちは霊的に目覚め、このメッセージをアディクトに伝え、そして私たちのすべてのことにこの原理を実行しようと努力した。

 
きわめて克服が難しいといわれる薬物依存症のアディクトは、その病を乗り越えるために毎日分かち合いのミーティングに参加し、他者を鏡としながら自分自身の課題を見つめ、語り、そしてこの12のステップのプログラムをできるだけ忠実に実践することを通じて、生き方の病としての依存症の克服に挑戦する。この12のステップには、先を行く仲間たちの経験と反省と希望が込められている。死に至る病ともいえる依存症との格闘と超克の記憶がこの12ステップから想起される。

また、理念経営の成功モデルともいえるスターバックスの6つのクレドも有名だ。
 

① 働きやすい環境を提供し、社員がお互いに尊敬と威厳をもって接する。

② 事業運営上の不可欠な要素として多様性を積極的に取り入れる。

③ コーヒーの調達、焙煎、流通において、常に最高レベルを目指す。

④ 顧客が心から満足するサービスを提供する。

⑤ 地域社会や環境保護に積極的に貢献する。

⑥ 将来の繁栄には利益率の向上は不可欠であることを認識する。


世界中で愛され、企業文化の創造における最高のロールモデルともいえるスターバックスは、この6つのクレドの浸透を土台として発展してきたともいえる。このクレドの中に世界的な成功とスターバックスでしか体験できない最高のサービスの秘密が隠されている。

ダルクは薬物依存症の治療共同体であり、スターバックスは世界的に成功した企業であるが、この全く異なる二つの組織の共通項は、組織文化の形成に成功し、それが求める成果の達成と不即不離の関係にあるというところだ。

私たちも12のバリューを組織文化形成の基盤とし、その一文一文をチーム全体に浸透させ、プロセスを大切にしながら私たちのミッションビジョンを追求していきたい。

 

◆プロフィール
高浜 敏之(たかはま としゆき)
株式会社土屋 代表取締役 兼CEO最高経営責任者

慶応義塾大学文学部哲学科卒 美学美術史学専攻。

大学卒業後、介護福祉社会運動の世界へ。自立障害者の介助者、障害者運動、ホームレス支援活動を経て、介護系ベンチャー企業の立ち上げに参加。デイサービスの管理者、事業統括、新規事業の企画立案、エリア開発などを経験。

2020年8月に株式会社土屋を起業。代表取締役CEOに就任。趣味はボクシング、文学、アート、海辺を散策。
 

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