SDGsな生き方 / 鈴木達雄

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

4. 巨大地震と人工海底山脈

SDGs13では、全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化するとしている。日本政府は30年以内に南海トラフ地震、首都直下地震が発生する確率を70~80%とした。科学的には少なくとも一方が起こる確率は30年間に90%以上という。しかし、多くの人々は「巨大地震なんて起きない」と、科学的にあり得ない仮想のうえで各種の重大決定をしている。

一方、南海トラフ地震では、負傷者が62万人、被災者は全国で1000万人、日本人の10人に1人近くが被災することを想定している。だが、政府や自治体にそのような危機感は希薄で、国民もそういえそうだ。しかし、リスク・マネージメント・サイクル即ち、危機を想定する→どういう事態になるか想像する→対応するためのプランをたてる→プランを実行するサイクルを繰り返し、自分自身、家族、身近な障害者等を含め、自分が何をすべきか、何ができるか、考える習慣を持つことが重要である。

巨大地震の発生で生ずる最悪の事態

国民の生命が失われる(阪神淡路大震災では5500人の死亡者の88%が、家屋の倒壊で亡くなったが、大都市ではこれを遥かに超える死者が想定されている。しかし、迅速な避難行動で、犠牲者数を5分の1に激減できるという政府の試算がある。)

救助・救急ができない(被災し、負傷したおびただしい数の人々に対する迅速な救助や適切な救急医療ができず、失われる命が危惧される。一刻も早い救援部隊の派遣が必要だが、首都直下地震では広い関東平野に700万人、南海トラフ地震では950万人の避難者が、それぞれ同時に出ると想定されている。しかし、避難者に対する救援部隊、医療班の数が絶対的に不足し、救援に向かうガソリンや燃料の不足、道路の断絶による孤立、避難者に必要な物資、特に水、食糧が届かない。さらに、日本の食糧自給率は37%と先進国最低で、東京都では主要食物の食糧自給率が0.5~6.4%であり、移入、輸入なしには生きていけない。)

行政が停止する(救援活動の総指揮をとる行政そのものが被災し、指揮をとることができなくなり、助けを求める側になることになれば、復旧、復興はさらに遅れる。)

情報通信ができなくなる(電話、インターネットが繋がらないことで、社会も経済も深刻な混乱状態になり、これらが招く波及効果は誰にも分からない。情報システムという機械システムを用いて被害を軽減する取り組みもあるが、万一、機能しなくなれば、かえって極端に被害を拡大する危険性がある。)

経済活動が停止する(サプライチェーンの一部が破損、停電、巨大コンビナートの被災、東京湾炎上、新幹線の一部破損、金融データの破壊で市場が混乱する。)

エネルギー供給、交通等が途絶える(巨大地震では、予期しない停電、計画停電の発生を前提とし、病院、工場、放送局、金融システム、政府機関は、自家発電システムの設置等、非常電力を供給する体制と燃料の備蓄が必要である。また、燃料、ガスの供給に交通ネットワークが機能している必要がある。)

深刻な2次災害が起こる(2次災害の代表が、ダム、溜池の決壊で、東日本大震災では貯水池、農業用ダムが86ヵ所も被災した。建物の倒壊による道路の閉鎖は、長期間交通を麻痺させ、救援、復旧、復興の諸事業を著しく阻害する。放射性物質等の有害物質の大規模な拡散もあり、原発周辺地域は立入禁止となった。2次災害の中でも、特に大きいのが日本の国家経済そのものが、巨大地震を契機としてさらに大きく衰退するという悲壮感があることである。)

地域が再建できなくなる(強靭性=レジリエンスの中心的概念である「回復力」に関わる問題が大きい。気になるのは、わが国のマクロ経済を回復する回復力が、諸外国に比べて際立って脆弱なことである。下図のように、1995年から2015年にかけて、日本の経済成長率だけがマイナスであり、回復力を見据えた強靭化の取り組みは、長期的な「経済成長力」を確保するために必要不可欠である。)

 


以上、最悪の状態を考えることが重要だが、ここで強調したいのは、1以外の2~8は早期復興ができないと、1000万人の被災者の生死に係る問題になることである。中でも早期復興を脅かすのが、大量に発生する災害廃棄物の迅速な処理である。廃棄物の過半を占めるコンクリート殻の迅速な処理がネックとなり、それ以後の復旧、復興作業が全て滞る。コンクリート殻処理では、予め発生量、場所、処理するための準備をしておかなければ、その処理がその後の全ての作業の足を引っ張ることになりかねない。

現状のまま、検討されなければ迅速な復興は困難である。発災後、時系列で何時、何をすれば迅速な復興が可能になるのか、事前に実現性のある廃棄物の処理計画を複数策定し、調査・検討しておかなければ、後の祭りである。

「シティコン海底山脈」の研究は、上記の中でも現代都市型巨大地震で発生する未曾有のコンクリート殻を、迅速かつ有効に利用するためのものである。第2回シティコン海底山脈、第3回人工海底山脈の開発秘話で述べているので参照頂きたい。

2017年東京都災害廃棄物処理計画では、広域処理でコンクリート殻を全て破砕して再生砕石としての再利用を原則としている。現在、日本列島は地震活動期の真っただ中にあり、各地で地震が多発している。以下のURL動画「巨大地震と大漁の海(4:25)」は、過去1500年の巨大地震を時系列に並べた2018年の作品である。

地球のプレート移動がある限り、地震は発生する。
西暦869年に東日本側で発生した貞観地震(M8.3~8.6)をスタートに、10年後の879年に首都圏で発生した相模・武蔵地震(M7.4)、その8年後887年に西日本側で発生した仁和地震(M8.0~8.3)、この3つの巨大地震は北から南に向かい18年という超短期間で連動した一例に過ぎない。

発生の順番が変わることはあるが、このような連動が過去1500年に5回あったとみられる。2月13日にも福島県沖震源60kmでM7.3の東日本大震災の余震とみられる地震があった。2011年の東日本大震災を869年の貞観地震だとすれば、2020年に首都直下地震、2029年に南海トラフ地震が発生しても過去に実績があり、想定外とは云えない。2020年に予定されたオリンピックと地震が重ならなかったことに感謝したい。しかし、今年も来ないとは誰にも言えない。

1923年関東大震災当時は、東京でもコンクリート構造物は極稀であった。1945年の東京大空襲でもコンクリート構造物は少なかった。しかし、1964年、世界に日本の復興を示す東京オリンピックに向け、東京は膨大なコンクリート構造物を建設し、それが今、老朽化し膨大な都市の鉱山と化し、シティコンになる復活の機会を待っている。

インフラ被害の一切ないCOVID-19が、人為的な3密、外出規制、外食規制等で莫大な経済損失を出し、行政は巨大地震など考える暇はないという始末である。

明日、起きるかもしれない首都直下地震で、23,000人の死者、経済被害は95兆円と想定される。早期復興のためには、縦割り行政と前例主義を止め、予めコンクリート殻の発生場所、発生量を推定し、一時も早く処理するための準備を、最小限の人材を活用して、早急に検討を始めなければ取返しがつかなくなる。

巨大地震ではGo to eat、 Go to travel を宣伝しても、レストランも交通機関も長期間麻痺状態で、現代社会を巨大地震が襲う恐ろしさを知ることになる。国も自治体もCOVID-19で、他には何もできないというが、巨大地震は感染の終息を待ってはくれない。

介護サービス等に従事する企業のBCPでは、前述の最悪事態を考え、介護者(アテンダント)、被介護者(クライアント)の安全と生命に直結することに十分配慮する必要がある。参考に、早期復興に不可欠なコンクリート殻の迅速な撤去と、有効利用を提案する、以下の「シティコン海底山脈研究会」(6:01)動画を再掲載する。

 

◆プロフィール
鈴木 達雄(すずき たつお)
1949年山口県下関生まれ。

1980年に人工海底山脈を構想し開発を進めた。この理論の確立過程で1995年に東京大学工学部で「生物生産に係る礁による湧昇の研究」で論文博士を授かる。

同年、国の補助金を受け、海で人工の湧昇流を発生させ食糧増産をする世界初の人工海底山脈の実証事業を主導。これが人工海底山脈の公共事業化、さらに国直轄事業化に繋がった。

現在は、予想される首都直下地震、南海トラフ地震等の巨大地震からの早期復興を支援するため、震災で発生する材料を人工海底山脈に利用する理論と技術開発に取り組んでいる。

SDGs、循環経済を重視し、都市で古くなったコンクリート構造物を工夫して解体し、天然石材の代わりに人工海底山脈に利用することで、予め海の生態系を活性化し食糧増産体制の強化を図り、同時に早期復興を支援する仕組みを、行政と協力して構築するための活動をしている。

趣味:水泳、ヨット、ダイビング、ウィンドサーフィン、スキー、ゴルフ、音楽、絵画

 

関連記事

TOP