「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」への参加について
このたび内閣府が事務局を務める「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」という、男性経営者限定のグループに参加させていただくことになりました。これを契機に引き続き弊社におけるジェンダー平等と女性活躍の取り組みを推進していければと思います。
その参加の主旨や意図や目的は別稿で書かせていただきましたが、この間様々なところで私たちのジェンダー平等への取り組みに対する異論反論オブジェクションをいただいてきましたので、その代表的な意見に対する私なりの回答を書かせていただきたいと思います。
異論反論オブジェクション①
まず初めにもっともよくいただく意見が下記のようなものです。
「女性だから厚遇するのは逆差別ではないか。同じ給料をもらっているのだから機会の平等こそ大切にするべきではないか。そうでないと男性たちのモチベーションが低下し、やる気があり能力もある男性が次から次へ辞めていってしまうのではないか。」
ステレオタイプな反ジェンダー平等論の典型といってもいいかもしれません。結果の平等よりも機会の平等を最重視する原理主義的なリベラリズムから生まれる見解です。そういった声に対する私の意見は下記の通りです。
「そもそもアファーマティブアクションは『積極的差別待遇』や『肯定的差別待遇』と訳される通り、ジェンダー平等のための女性厚遇は逆差別なのかもしれない。しかし、私たちを取り巻く社会的、経済的、政治的、文化的、歴史的背景という環境要因から全く独立して、企業の中での判断が純然たる能力軸だけでフラットかつニュートラルになされることが本当にできるだろうか。またそのような環境要因を考慮した時にすべての人たちが同一線上のスタートラインに立っていると言えるだろうか。そもそもハンディーキャップを負わされている人たちのスタートラインを同一線上に置いたときに、果たしてそれは『機会の平等』と言えるのだろうか。ジェンダー、国籍、思想信条、などなど様々な要素によって各位が大なり小なりハンディやアドバンテージを持っているのだとしたら、そのスタートラインを多少なり調整してはじめて、機会の平等の実現に近づくことができるのではないだろうか」
異論反論オブジェクション②
また次のような反論にもたびたび出会うことがあります。
「男性が外で仕事をして女性が家を守るという性別役割分担は、本能に根差しているものであり自然的摂理に従っている分業だ。そのような自然の本性に反して無理なことをすることは双方にとって不利益しかないのではないか。」
いまとなってはあまりにも荒唐無稽な反動的意見ではあるけれど、いまだ一部で根強く残っている意見でもあるので、一応反論しておきたいと思います。
「いままで何人も家事育児は大得意だけど外で働くと適応に困難を要する男性に出会ってきたし、また逆に女性だけど家事育児介護にはあまり向いておらず、外でバリバリ働くのが性に合っているという女性に出会ってきた。その人たちはみな本能が壊れた反自然的存在ということになるのだろうか。そもそも生物学的性差と社会的性差は異なるという観点からジェンダーという概念は生まれた。男性と女性の能力の偏差はジェンダーすなわち後天的に学習された社会的性差に起因するものだ。育児や介護などのケア労働は女性が本来的にその能力を備えるものであり、男性が向いてない、できないのは自然なことだから仕方ない、というのは個人的な経験を鑑みても同意できない。それは企業における経済的活動においても同じ。」
異論反論オブジェクション③
こんな意見にもたびたび出会います。
「女性は細部はよく見えるけど全体を見渡すことが苦手で、男性はその逆、全体観はあるけど細部への気づきが苦手、という傾向がある。また女性はプロセスを重視し、男性は結果を重視する。そういった意味からも企業活動の全体の結果に対して責任を取るマネジメントは男性が担った方がうまくいくのではないか。」
私の意見。
「SDGsやESGの重要性が叫ばれる昨今において、企業はその結果、すなわち売り上げと利益の最大化、のみならず、その活動全体のプロセスについても注意深く見守る必要があると思う。正しい結果を正しいプロセスで追求する企業のみが今後生き残っていけるといっても過言ではない。そういった意味では、プロセス志向性の高い女性メンバーが経営ならびにマネジメントの中心を担うことは、健全性の高い経営を営む上でプラスとなることが大きいのではないかと思う。また企業のリスクは細部の綻びからやってくることもままある。企業の安定的運営においては大局観のみならずどんな些細な課題も見逃さず、やり過ごさず、素早く察知し、早急に対処することが求められる。もし本当に女性の方が細部への気づきが深い傾向があるのだとしたら、彼女たちが経営ならびにマネジメントを担い、企業活動のリスクマネジメントにおいて重要な役割を果たしてくださることは言うまでもないことだと思う。」
異論反論オブジェクション④
最後にもっともよくある意見がこれです。
「女性は情緒的判断が過ぎる。やはり経営判断は合理的な男性が担った方がうまくいく」
私見。
「たしかに経営判断をする際に情緒的でありすぎることは問題が多いが、これについては世代間ギャップもあり、私たち昭和の男子よりは平成令和を生きる女性たちの方がよほど合理性が強いようにも思える。また今後の企業は少子高齢化により人手不足が深刻化するなかで労働力獲得に尽力せざるをえず、そのためには冷たい合理性だけではない、理解と共感を基調とする温かいコミュニティーを醸成していくべき。つまり古典的な構図でいうところの女性性が再評価されていく時代になっていくのではないか。」
最後に
ジェンダー平等は社会的倫理的要請であるだけでなく、それを推進することが企業の安定的かつ持続的運営に寄与するところが多分になり、また企業活動の生産性を高めるためにも有効な手段の一つと考えております。よりよい社会、すなわち自由で平等な社会の在り方を模索する株式会社土屋においてジェンダー平等が達成され、私たちのチームそれ自体が調和と均衡を回復することは必要不可欠と考えます。その達成のために立ち現れる様々なバリアーを丁寧に解体し、目標達成に向けて邁進していきたいと思います。
株式会社土屋
代表取締役 高浜 敏之