土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)
「この会社の仲間たちは実に個性的で根性あるよな!」
これが、私達の新生土屋が出帆してから4か月経た今、私がこの船の仲間たち皆に抱いている偽らざる想いです。素晴らしいことです。そして本当にありがたいことだと思っています。
私がこのように思う理由は、新生土屋が岸を離れる際に相当に大きな決断とエネルギーを要したことのみならず、私達が出帆した時代そのものが「VUCA+コロナ禍」という非常に強い逆風の吹く中だったからです。
まずは、VUCAについて短い説明をしておきたいと思います。
VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのワードの頭文字から取った言葉で、現代の経営環境や一人一人のキャリアの在り方を表現する単語として10年ほど前から使われるようになりました。
現在では主にビジネスの世界で使われているこのVUCAという言葉は、元々1990年代以降の、主にアメリカによる対テロ戦争の中で生まれました。それまでの戦争は、国対国、あるいは陣営対陣営という、わかりやすい図式の中で繰り広げられてきましたが、アルカイーダを始めとするテロ組織との闘いは全く常識を覆す様相を呈しました。
テロ組織というものは、リーダーが誰なのかもよく分からない、戦略や戦術があるわけでもなく、全く動きが予測できないという特徴を持っています。考え方に同調あるいは共感した人たち全員、または一人一人がアルカイーダであり、テロを実行する戦闘員なのです。
それを迎え撃つ、伝統的な戦略・戦術・作戦というシステムに基づいて動く各国の正規軍はこのVUCAの状態に陥ったのです。そして、世界経済が悪化していく中で、その状態を意味する言葉としてVUCAがビジネス界でも使われ始めました。
日本の経済社会も2000年の始め頃から概ねVUCA状態に入ったと言えるでしょう。状況としては、非常に厳しくなってきていると言わざるを得ません。
VUCAという言葉の定義を示しておきます。
V : ITなどの技術が急速に発達している昨今において、市場のニーズが大きく変動すること。
U : 不確実性が大きい状況で、事業計画などビジネス上の見通しを立てるのが難しくなること。
C : ビジネスが更に複雑化すること。
A : ビジネス環境が急激な変化を見て、問題や課題に対する絶対的な解決策が見出しにくく曖昧な状態になること。
私達の新生土屋が稼働し始めた時に既にこのVUCAの状況は常態化していましたし、そこにコロナ禍という、これまた先行きをより不透明にする要因が加わりました。私たちはこのような極めて困難な時期に出帆したということになります。
しかしながら、日本のビジネス界で昔からよく言われることがあります。それは、起業した時の経済状況および社会状況が悪ければ悪いほど、その企業は強さを増すということです。私もこれまで2度起業しましたが、その両方共が酷い経済状況の中でのことでした。もちろん両方とも上手くいったわけではありませんが、その内の1つは38年もの間、なんとか持続できたのです。周囲を見渡してみても同じような例が多く見受けられます。
私はこの土屋という会社が永く持続するだろうと固く信じています。上記の古くから言われてきた言葉と私の経験は、それが高い確度で真実だろうということを語りかけてきます。
さて、こんな時代を生きていく企業に必要なものは何かということを、最近様々な文献を見ながら探ってみました。そして次のような解決策があるということに行き着きました。
最も重要な解決策は、確固たるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定、そしてその全社的な浸透とそれに基づいた決断力だそうです。この新生土屋にはそれがすべて揃っています。また、VUCA状況の中では、リーダー自らが前に出るだけではなく、与えられた状況に合わせて適切な、そして高い能力を持つ他メンバーに、決断を下す権限を委譲・分配するということも必要なようです。この条件も土屋には成立しています。
現代は情報社会です。ですから情報の取り扱い・処理に非常に長けていなければなりません。その中で最も重要なのが情報ソースの配分をバランスよく実施することです。収集した情報に基づいて事業内容の変化に気づいたら、まずはその事実を素直に受け入れるという姿勢が大事ではないでしょうか。固定観念を捨てるということです。
情報収集したうえで、今後を予測していくわけですが、その際その予測が絶対に正しいという思い込みは禁物です。何せVUCAの状況にあっては、何もかもが不透明で不確実なのですから。
VUCAの時代に最適とされる意思決定方法がOODAループです。このOODAループもVUCAと同じく元々は軍事用語でした。一言で言い表すと「即断即決」を行うためのシステムです。そして従来のPDCAサイクルにとって代わるか、ないしはそれと合わせて運用していくのが正しいと言われています。
OODAは次のステップから成立しています。
O : Observe(観察)
O : Orient(仮説構築)
D : Decide(意思決定)
A : Act(実行)
PDCAは、次のようなステップから校正されています。
P : Plan(計画)
D : Do(実行)
C : Check(評価)
A : Action(改善)
上記を見てわかるように、戦場のような、あるいは災害時のような、生きるか死ぬかが一瞬で決まってしまうような状況では計画を練っている時間はありません。したがって観察の次に即仮説構築、そして意思決定へと繋がっていきます。その一方で、ビジネスの世界は戦場に似てはいても計画のない「勘」に頼った行動はマイナスに作用します。
必ず計画も評価も改善も必要となってきます。ですからこれをどう上手く挟み込んで運用していくかが鍵となってくるでしょう。
ともあれ、先にも述べた通り、新生土屋は逆境の中から出帆しました。環境変化への耐力は十分にあると考えています。土屋の社員・スタッフ全員がそのことを深く理解してMVVに基づいた理念を持ち行動をするならば、この船は、様々な困難を乗り越えながら、そして小さな声に応えながら間違いなく交響圏へと向かっていくことでしょう。
◆プロフィール
古本 聡(こもと さとし)
1957年生まれ
脳性麻痺による四肢障害。車いすユーザー。 旧ソ連で約10年間生活。内幼少期5年間を現地の障害児収容施設で過ごす。
早稲田大学商学部卒。
18~24歳の間、障害者運動に加わり、障害者自立生活のサポート役としてボランティア、 介助者の勧誘・コーディネートを行う。大学卒業後、翻訳会社を設立、2019年まで運営。
2016年より介護従事者向け講座、学習会・研修会等の講師、コラム執筆を主に担当。