地域で生きる/22年目の地域生活奮闘記95~ユニバーサルデザインタクシーを実際に利用して思うこと~ / 渡邉由美子

社会参加活動がとても忙しく、移動の時間を極力短くして、体力を温存したいという目的で、計画性のないまま、介護タクシーではなく、ユニバーサルデザインタクシーを使うという選択をしてみました。今回はそれで得た体験について書いていこうと思います。

ユニバーサルデザインタクシーは東京でパラリンピックが開催されることが決まった際に、世界に対して「日本はバリアフリーが進んでいる」ということをアピールすべく誕生したもので、車椅子の人が予約をせずとも健常者と同じような感覚でタクシーを使って移動ができると称されています。

事前情報で電動車椅子は車内が狭すぎて到底乗せることができないというのはわかっていたため、手動車椅子を使用して乗ってみることにしました。

私の車椅子は手動といってもリクライニングとティルトという、体を直角にしているのがつらいときに寝かし込む機能がついています。一般的な手動車椅子と比べればやや大きいものの、リクライニングを少し倒せば高さはそれほどないので、問題なく乗れるだろうと安易に考えていました。

しかしタクシーを呼ぶところからつまずきました。ふだん街中でよく見かけると思っていたユニバーサルデザインタクシーですが、呼んでから乗車指定場所に来てもらうまでにとてつもない時間がかかってしまい、待つこと40分してやっとタクシーが到着するという有様でした。

さらにつぎの瞬間、また問題が起こります。タクシーの運転手は自分の運転する車がバリアフリー仕様であることは知っていても、実際にどのようにして乗せたらいいかわからないというのです。

運転手に「私は全く立つことができないので、車椅子ごと乗りたい」と伝えても、「車椅子の折り畳みや移乗を手伝うから、普通のタクシーと同じように車椅子から降りて乗ってほしい」と言われてしまったのです。

運転手にはアドバイスのつもりなのか、「介護タクシーを依頼したほうがいいのではないか」などと言われてしまいました。私は運転手に「私は介護タクシーがつかまらない時に、自分の車椅子でもユニバーサルデザインタクシーに乗れるのか試したくて、わざわざ40分も待ったのだから乗せてほしい」とお願いして、やっと乗ってみることになりました。

すると運転手は乗車マニュアル書なるものを見ながら、おもむろに後部座席を折りたたみ、車内からスロープを引き出し、私を乗せたままの車椅子を後部座席部分に乗せました。

本来は乗り込んだ後、前方を向いて座れるよう車椅子を半回転させて金具で固定するものなのですが、運転手が前方に回転させる方法がわからなかったため、「横向きのまま乗りますか?」と言われる始末でした。

横向きのままでの移動では車酔いをしてしまうため、それを運転手に伝え、初乗車は断念しました。「たまには大変な思いをしないでタクシーで移動しよう」という思いつきが、あっけない結果に終わってしまいました。

私の車椅子が手動とはいえ規格外と言われてしまえばそれまでなのですが、いったいユニバーサルデザインタクシーにすんなり乗り込める障がい者はどれほどいるのだろうかと疑問に思うばかりでした。

後部座席は座席を全部コンパクトに折りたたまなくてはいけないので、同行者は助手席に1人しか乗車できません。わたしのように障がいが重く、手動車椅子の時は2人介護でなければ外出がむずかしい人にとっては、とても乗りにくい車がユニバーサルデザインと称されているのだということがよくわかりました。

同じように障がいを持つ人でも、この車にすんなり乗れるような人は車椅子が本当にコンパクトなので、たぶんスロープの付いていない普通のタクシーでさえも、介護者と運転手が協力して移乗を行えば、乗れてしまうのだと私は思いました。

ユニバーサルデザインタクシーに乗った時とは別の日ですが、普通のタクシーに身体ごと抱えてもらって移乗し、手動車椅子を折りたたんでトランクに入れて移動しました。普通のタクシーでは車椅子がトランクに収まりきらず、ぴったりと閉めることができないので、ゴムでトランクのふたを縛り、半分以上空いた状態で車椅子を運ぶことになります。

その際、運転手にせかされて慌てて出発したのもあり、うっかりしてお尻に敷くロホクッションをトランク内に一緒に積み込んでしまいました。降車しようと思ったらクッションがなくなっており、走行中のどこで落としたのかも全くわからぬまま、そのクッションを探しに戻ることもあきらめざるを得ませんでした。

まあ私にとってはタクシーを使うのであれば、やはりワンボックスタイプの福祉車両的な介護タクシーに乗れば間違いないという結論に落ちつきますが、急な外出でタクシーが必要な時に、介護タクシーがつかまらないということもありえます。

それを解決する術がなかなか見いだせないということを今回、改めて痛感しました。久々のタクシー利用体験は「健常者と同じようにいつでも快適にタクシーを使うことができるようになってほしい」とつくづく思わされるものとなりました。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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