地域で生きる/22年目の地域生活奮闘記101~誰でも重度障がい者になる可能性はあることについて思うこと~ / 渡邉由美子

最近では旅行支援事業が始まるなど、新型コロナウイルス感染症は収まっているように感じます。しかし実際には感染者数は徐々に増えてきており、年末年始には第8波が訪れるといわれています。

また新型コロナウイルス感染症が流行り始めて約3年、マスク効果もあってか、なりを潜めているインフルエンザも今年は南半球ですでに大流行しており、この冬は感染症のハイブリッド流行が起こるともいわれています。

もちろんそうならないよう、それぞれが日常生活を送るなかで、予防対策も並行して行っていくしかないのだと思います。

新型コロナウイルスの感染者の全数把握がされなくなってからというもの、メディアのトップニュースではほとんど報道されなくなっています。「かからないように気をつけなければ…」という意識を人並み以上にもつ私ですら、日々の活動の忙しさに気を取られるうちに、ついコロナ禍以前のような生活をしたいという感情がわき、それと葛藤する日々です。

私はある一定の曜日と時間を心ある大学生の支援者を募って生活しています。彼女たちから今年の11月は3年ぶりに規制のない大学祭が行われると聞き、日頃介護に来てくれている人たちが普段はどんな学生生活を送っているのか知りたいという気持ちと、共通の話題が増えることで絆が深くなったらいいなという思いが高まり、思い切って行ってみることにしました。

「介護者募集」のチラシも持っていき、タイミングがあればそれを配りたい。また大学祭に参加したことがきっかけで新たに日常を支えてくれる人たちと出会えるかもしれない。そういった出会いが日々を生きる活力になるかもしれない。そんな風に考えると、「コロナ禍であっても、この機会を逃してはならない」と思わずにはいられませんでした。

また普段介護に来てもらっている支援者たちの知らない一面を垣間見ることで、介護を行う側と受ける側という間柄ではどうしても狭くなりがちな関係性を、もっと人対人という広い関係性につなげるきっかけとなればとも思います。

この原稿を書いている私の自宅の前では、近所の神社の毎年恒例のイベントである「酉の市」がコロナ禍の規制なく開催されています。この時期にしては暖かく、天気も良いこともあり、たくさんの人が訪れ、街中がにぎわっています。

昨夜はお祭りの準備中と始まったタイミングで2回、立て続けに地震が起きました。酉の市では人出の多さに加え、火を焚いて調理した食べ物を提供する屋台もあちこちに出ているため、避難が必要な事態になったらどうしようとつい考えてしまいました。

私の住む集合住宅はバリアフリーが整っていることもあり、私以外にも地域での自立生活を望む重度障がい者が一人暮らしをしています。上層階には “シルバーピア”といって、介護はほとんど必要ないものの、高齢であることで家探しに苦労する人たちが半分、公的資金の援助を受けながら暮らしています。

娯楽を楽しむことは重要なことです。娯楽があることで「どんなに仕事がつらくても頑張っていこう」といった活力が得られ、精神が健全化します。酉の市も古くから庶民に親しまれ、続いてきた伝統のお祭りで、気軽に楽しみを得られるといった意味では大きな価値があると思います。

しかし当時は家屋が密集した地域で行われるものではなかったはずです。その時代と同じ形式でお祭りを開催するということには、安全性の面から大丈夫なのかと思わずにはいられません。すぐそばに住んでいるからこそ気づく問題点なのかもしれませんが、安全性という観点での対策もしてほしいと思います。

先日韓国の梨泰院で大勢の若者が雑踏にもまれて、死者154人、負傷者149人を出すという事故がありました。この事故は誰がイベントを主催したということもなく、ハロウィンを楽しもうという若者たちが自然と集まるうちに、人流を抑制することができなくなり、大惨事に発展したということでした。

押しつぶされて立ったまま圧死してしまった人がいたり、失神して倒れた人の上に折り重なるように人が倒れ込んで、さらに多くの人が亡くなったりといった報道を耳にして、なんとか一命は取り留めたものの、重度の障がいが残ってしまった人はいなかっただろうかと心配でなりませんでした。

新型コロナウイルスについても罹患後の後遺症で、障がいに似た生きづらさを抱える人も少なくないと聞きます。そう考えると一生健常者で、年を重ねても元気でいられるということは奇跡にも近いのではないかと感じてしまいます。

時を同じくして、北朝鮮による日本へのミサイル発射が継続的に行われています。政府はJアラートを鳴らし、避難を呼びかけていますが、たとえ健常者であっても、ミサイルの威力から逃れることは到底むずかしいのではないでしょうか。

障がいを負うことは誰にとっても決して他人事ではありません。そう考えると障がい者福祉の充実や重度訪問介護という制度のよりよい発展は必要不可欠なことだと改めて感じさせられます。そんなことを考えながら、介護者を養成することに余念のない私の日々が続きます。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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