地域で生きる/22年目の地域生活奮闘記109~コロナウイルス感染症とインフルエンザが同時流行している日々に考えさせられる事~ / 渡邉由美子

この原稿を書いている時は成人式の連休の中日です。お正月が明けて2~3日働いたらまたすぐに連休が訪れ、なかなかお休みモードから抜け出せません。それでも世の中を平常に戻してエンジン全開で動かしていかねば、という社会的な気風が感じられます。そんな折にコロナウイルス感染症とインフルエンザが猛威を振るい、どんなに万全を期して予防対策をしても感染しかねない状況が常態化しているのです。

私は今のところ、病欠等で当日介護者が来られなくなっても、なんとか代役を探して暮らすことができています。これは本当にありがたいことだと思います。しかし当事者の仲間たちの中には「どうにも穴を埋めることができず、一人で何時間か耐えた」とか「久々に、やむを得ずおむつをして過ごした」、「新年早々、仲間と一緒に大きな駅に行って、介護者募集のビラを2万枚配って、なんとか2人から連絡があった」と、落胆とも嘆きともつかぬ疲労交じりの連絡をしてくる人がいました。明日は我が身。私自身にとってもこれは決して他人ごとではありません。

コロナの流行から3年が経過した今となっては、ある程度、ふだん通りの生活をしていかなくてはならないのはもちろんわかります。しかし年末に上野・アメ横の鈴なりの人手を遠巻きに見た時に、なんともいえぬ複雑な思いを抱いてしまいました。アメ横で商売をしている人にとっては、年の瀬に人手が見込めないことは死活問題であり、3年ぶりに訪れた賑わいは大きなチャンスだったことでしょう。またいつまでもコロナを恐れてばかりいられないという思いは私も同じです。それでも障がい当事者の私たちにとっては、コロナの影響で介護者が欠勤し、日常生活に人の手が借りられなくなれば死活問題です。

“ふだんの生活“の概念は人それぞれですが、私個人としては、今一度、原点に立ち返って、飲み会や大きな声での会話が飛び交う場面を少しだけ自粛し、感染拡大を防ぐべきだと考えます。それは国に再び緊急事態宣言やまん延防止等充填措置を出させるといったことではなく、一人ひとりが十分に考えて行動するということに他なりません。

今となっては「コロナのウイルス自体が弱毒化しているから、罹ってしまったらそれはそれでしかたない。その期間は休めばいい」という考えを持つ人が大多数になっているように思います。実際、今罹患して重症化する人の多くは基礎疾患を持っている人や高齢者、それから我々障がいを持つ人たちです。とはいえ重症化のリスクを秘めた人達の日常生活を支えているのは健常者であって、私達の生活を守るために彼らの行動制限をする訳にもいきません。

そういった葛藤を抱えながら、いかに介護者を確保して日々を生き抜くか、奔走する毎日で、常に考えることがあります。それは何らかの事情でその日の担当介護者が来られなくなったときのバックアップ体制をもっと整備することはできないのかということです。

昔の話ではありますが、親の老いなどを理由に、家族の介護が当たり前に受けられなくなった時に、入所施設や病院で生活するのではなく、今まで家族と共にしてきたような日常生活をどう継続していけるのか模索し、独自でボランティアを募り、介護者を確保していた時期がありました。

公的な制度には一切頼らず、完全な善意に基づいたものだったため、今の暮らしと単純に比較するのはむずかしいと思いますが、当時はAさんが来れなかったらBさん、Bさんも難しかったらCさんといったようにバックアップ体制を敷いたシフトを組んでいました。仮にAさんが無事に介護に来られたとしても、何らかの事情で緊急依頼をするかもしれないからと、BさんやCさんにも可能な限り待機してもらっていました。

当時は今のように24時間365日体制ではなく、土日の外出時のみであったり、入浴介助の時間だけであったりと介護時間が短かったこと、お金が絡んでいなかったこともあって、うまく成り立っていたのかもしれません。

介護者にも生活があり、その生活を介護という仕事で成り立たせているのですから、確実に介護に入れるのかどうかはっきりしない状況で待機する訳にいかないのは当然のことです。安定した収入を得るためには、確実に仕事がある現場を選びたくなるでしょう。私が介護者の立場だったとしたら、同じような考えに至ると思います。だから緊急時のバックアップ体制をつくることが容易でないことも十分に理解しているつもりです。それでもなにか打開策はないかと思いを巡らせる日々です。

なんだか重たい話ばかりになってしまいますが、誰かが来られなくなると、不思議と「代わりに行きます」と名乗り出てくれる人がいるもので、そういう人達に助けられて自立生活が続けられているのも事実です。欠勤の連絡が入るたび、「今日こそは本当に長時間一人になってしまうのではないか」と恐怖に慄きながら、あちこちにSOSを出すのですが、誰かしらが代理で来てくれるのは本当にありがたいことです。

昨年末からのインフルエンザとコロナの同時流行はいち早く収まってほしいと願うばかりですが、これまでも何とか日々を生き抜いて来られているということに希望と自信を持ち、私の出来ることを精一杯やっていきたいと思います。

都内ではこの年末年始にコロナ患者を受け入れる病院の病床が逼迫し、ある重度障がい者が入院するにあたり、介護者の付添いを断られたという話も耳にしました。東京都にその現状を伝え、改善を訴えていく活動も、改めて力を注いでいきたいと考えています。

 

◆プロフィール

渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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