地域で生きる/23年目の地域生活奮闘記128~年齢を重ねて改めて体の意義について思うこと~ / 渡邊由美子

 

今年の五月は気温のアップダウンがとても激しく感じます。幸いにして体調を大きく崩してはいませんが、小さな体調不良を何ヵ月も引きずりながら、なんとか地域生活を継続している…そんな日々を送っています。

昨日は初夏だというのに3月初旬を思わせるような寒い1日だと思ったら、今日は初夏を通り越して真夏の気温といった具合です。

ゴールデンウイーク明けに新型コロナウイルス感染症が5類に移行されてからというもの、世の中にウイルスの脅威がまるで消えてなくなったかのように経済活動もお祭りごともみるみる復活しています。

それが悪いことだとは決して思いません。ただ重度の障がいをもつことで普段から体調の維持や管理が大変な人たちの中には、それらと気候変動が相まって入院に至ってしまう人たちもいます。

障がいを持つ人たちの多くは健常者と違い、それこそ不摂生をしたくてもできないくらい繊細な体調管理が必要です。私のようにだれかに管理をされる生活を全く好まないタイプであっても、医師や看護師、その他医療関係者と縁を切ってしまうと、たちまち生命維持そのものがむずかしくなってしまうのが現実です。

先日、「障がいをもつことで体調が安定せず、働きたくても働けない」という障がい当事者が裁判で勝訴したという事例について、その経緯を知る機会を得ました。

その人は遺伝的な疾患である一型糖尿病をもっており、重度の低血糖を起こすとたちまち深いこん睡状態になってしまうため、インスリンポンプの常時使用が欠かせない状態です。
にも関わらず、障がい年金が受給できないという境遇におかれ、それを打開すべく立ち上がったのです。

結論から言えば、その人は裁判で勝訴し、特例で二級年金をもらえるようになりました。病状が悪化すれば働くどころか生命の危機とも隣り合わせとなる状態にありながら、「ついに二級年金がもらえるようになった」と喜ばなくてはならないことに憤りを感じざるを得ません。

その人は裁判で勝訴を勝ちとるまでの過程で、非常にデリケートな個人情報や生活実態をさらすこととなりました。

「どういう時にどんな症状が出て、そのまま死にかけた」とか、「何をどれくらい、どういう調理方法で食べた」といった生活状況を長期にわたり克明に記録し、それを全て提出することで特例中の特例として障がい年金の適用が認められたのです。

裁判所は幾度となく「難病の場合には基準が決められないから障がい認定が出しにくい」と説明してきましたが、実態として重度のこん睡状態に陥れば、生活が立ち行かないことは明白な事実なのですから、その事実をもとに障がい福祉制度を適用するというように、生きづらさを抱える全ての人を救済できる福祉制度に転換していく運動が必要だと強く感じました。

今回のケースと同様の難病をもち、障がい年金を得るために訴訟を起こすといった闘いに挑んでいる人は数多くいます。その人たちが、先駆者のように個人情報を全て明かさずとも、現実の困難さを考慮して年金がもらえるようになり、(二級年金では生活の足しにはなっても糧にはならないため)せめて一級年金で生活できるように年金制度そのものを見直していくべきだと考えます。

さて、私自身の話に移ります。私は高校生の頃から脳性麻痺の障がいに付随する全身の痛みを抱えています。「障がいが治る」ということがない以上、一生涯この痛みと共存しなければなりません。

とはいえ、なんとか少しでも軽減したいと思い、毎日のようにストレッチやマッサージを受けたり、リハビリに励んだりしています。

今のところ、この痛みを軽減する施術のできるセラピストは一人しか見つかっていません。長年施術をしてくれているその一人も年を重ねており、いつまでその人の施術を受け続けられるかわからないというのが現実です。

それを考え出すと、元気印が自慢のはずの私も先の見えない将来への不安が募り、悩んだり落ち込んだりしてしまいます。

これだけ日常に大きく影響する痛みを抱えていながら、医師からは「医学的な所見では何も異常がない」と言われます。それでも痛みを訴えつづけていたら「精神的な問題なのではないか」と向精神薬をたくさん処方され、それを飲んだら意識が朦朧としたり強い眠気に襲われたりしてしまい、日常生活そのものがまわらないという苦い経験をしたこともありました。

重度の障がいがあっても健康に問題がなければ、介護者に日常生活を送るうえで不自由な部分だけ補ってもらうことで生活は成り立ちます。しかし障がい以外に抱えるものが多くなればなるほど医療・リハビリといった専門職の介入が必要となり、結果、生きていくことそのものが大変になってしまいます。
いつまでも楽しい生活が続けられるよう、健康維持に努めたいと思います。

物事の解決法のひとつに”時の経過”がありますが、時間が解決してくれない問題も多くあります。
「深く考えてもすぐに解決できないことは、良い意味で先送りにして、今を楽しく生きることに徹しよう。そうすることで得られるものもあるのかもしれない」
そんな風に未来に希望をもって生きていきたいと考え直す今日この頃です。

◆プロフィール


渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

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