【「小さな声」を探し求める―「個」が躍動する組織のつくり方― 書評】第2回 S1グランプリ

『「小さな声」を探し求める ― 「個」が躍動する組織のつくり方』

『「小さな声」を探し求める ― 「個」が躍動する組織のつくり方』を読んで、私が最も心に残ったのは、「小さな声」は、話された言葉だけを指すものではないということです。

声にならない思いや、表情、視線、沈黙、そしてその人の存在そのものに目を向けることが、本当の意味で「小さな声」を探すことなのだと感じました。

私は以前、HCUで勤務していました。
病棟では、スタッフ以外の多くの患者さんが人工呼吸器を装着しており、自分の思いを言葉で伝えることができない状況でした。

その一方で、私たちスタッフはモニターの数値や人工呼吸器の設定、アラーム音を頼りに患者さんの状態を判断することが日常でした。

もちろん、それらは命を守るために欠かせない情報です。

しかし、いつしか「数値が正常だから大丈夫」「アラームが鳴っていないから問題ない」という考え方に偏り、人として目の前にいる患者さんを十分に見られていないのではないか、と葛藤を抱くようになりました。

患者さんは話せなくても、不安や苦しさ、痛み、安心したいという気持ちは確かにあります。その思いは、握り返してくれる手の力や、視線の動き、表情のわずかな変化として現れていました。

それは機械では決して測れないものです。
命を守るための医療機器は患者さんの状態を教えてくれますが、その人の「気持ち」や「願い」を教えてくれるわけではありません。

そのことを、私はHCUで何度も感じました。

この本を読んで、「小さな声を探す」とは、効率や正しさを優先するのではなく、「この人は今、何を感じているのだろう」と想像し続ける姿勢なのだと改めて気づきました。

声にならないものを受け止めようとする姿勢が、その人の尊厳を守ることにつながるのだと思います。

現在、私は訪問看護に携わっています。
訪問看護ではクライアントだけでなく、ご家族やスタッフも、それぞれが言葉にできない思いを抱えていることがあります。

管理者を目指す立場としても、「言われたこと」だけで判断するのではなく、「言えなかったこと」や「まだ言葉になっていない思い」に気づける人でありたいと思いました。

本書を通して、組織づくりとは制度や仕組みを整えることだけではなく、一人ひとりの存在を大切にし、その「小さな声」に耳を傾け続けることから始まるのだと学びました。

この学びを、クライアントへの支援だけでなく、スタッフとの関わりにも生かし、誰もが安心して自分らしくいられる環境づくりを実践していきたいと思います。

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