医療的ケア児支援法の施行から5年が経過しました。
しかし、医療的ケア児を取り巻く状況は、私の周りの仲間たちを見ている限り、施行前と比べて大きく変化したようには感じられません。
特別支援学校では、教師の加配や看護師の配置が進み、状態が安定していれば、訪問教育ではなく毎日通学して教育を受ける機会が保障されつつあります。
また、本人や家族の希望と必要な条件さえ整えば、普通の学校で学ぶ医療的ケア児も増えてきています。
こうした変化は、子どもたちの教育を受ける権利を保障するうえで大切なことだと思います。
しかし、学校を卒業する時期を迎えると、それまで学校で受けていた支援が突然なくなり、再び家族が全面的に支えなければならなくなる状況がおこります。
その結果、家族が仕事を続けられなくなったり、疲労から体調を崩したりして、生活そのものが立ち行かなくなることがあります。
教育の場で保障されてきた支援が卒業と同時に途切れてしまうことは、大きな問題です。
私たち医療的ケアが比較的少ない重度障がい者も、少し前までは、学校を卒業すると、それまで受けていた支援が受けられなくなる状況に直面していました。
医療的ケア児支援法の施行後は、日中は家族から離れ、障害のある本人と支援スタッフが過ごせる生活介護の場や、家族の休息を保障するための医療的ケアに対応したショートステイ等が、少しずつ整備されてきています。
家族の疲労を軽減し、きょうだい児を含めた家族全員が共に過ごす時間を大切にするためにも、こうした支援は欠かせません。
ただし、現状では、必要とされている支援の場も、そこで働く人材も、全く足りていません。
制度や支援の仕組みが少しずつ整ってきている一方で、実際に利用できる場所や人手が不足しているため、多くの家族が依然として大きな負担を抱えています。
法律が施行されたという事実だけでなく、必要な人が必要な支援を確実に受けられる体制をつくることが重要です。
先日、私は「時には懺悔を」というヒューマンサスペンス映画を観てきました。
この映画はいわゆる福祉映画ではありません。
しかし、医療的ケア児を取り巻く環境や制度の不備が一般の人々にも分かりやすく描かれていたことに、私は大きな感銘を受けました。
作品には実際の医療的ケア児が複数登場し、現状の厳しさや、そこに生きる子どもたちの存在の意味が、説明的なセリフではなく、一人ひとりの表情や生き方を通して表現されていました。
そのため、非常にリアリティのある作品になっていたと思います。
また、役所広司さんや黒木華さん、西島秀俊さんなど、現在第一線で活躍されている俳優の方々と医療的ケア児が、同じ作品の出演者として大きなスクリーンに映し出されていることにも、強い印象を受けました。
医療的ケア児の存在や家族の苦悩が、一部の人だけの問題ではなく、社会全体が考えるべきテーマとして、多くの人に届いているのだと感じたからです。
医療的ケア児を取り巻く社会情勢が、長い年月がかかるとしても、少しずつ着実に進歩し、発展していく未来が見えたような気がしました。
この映画では、「子育てとは何か」「障害のある子どもが家族の一員となったとき、親は正直に何を思うのか」といったテーマも、赤裸々に描かれていました。
私は生まれてから50年以上が経ち、両親に当時の本当の気持ちを確かめることはもうできません。
しかし、映画を観ながら、私が重度の障害をもって生まれたとき、両親やきょうだいはどのような葛藤や苦悩を抱えていたのだろうか、と改めて考えさせられました。
現実を何も知らず、無邪気に笑う我が子のそばで、休むこともできず、日々の生活を支えるための介護やケアに追われていた両親は、どのような思いで過ごしていたのでしょうか。
また、十分に手をかけてもらえなかった姉は、私に対してどのような感情を抱いていたのでしょうか。
今になって、家族それぞれの立場や思いに心を寄せながら、映画のストーリーを追っていました。
作品としてもよく完成されており、とても面白い映画でした。
この映画を通して、私は改めて、どれほど重い障害があっても、また、24時間絶え間なく医療的ケアが必要であっても、本人が家族に過度な申し訳なさを感じずに生きられる社会システムと支援体制が必要だと強く思いました。
障害のある子どもが生まれたことによって、家族の誰かが仕事や自分の生活を諦めなければならない社会であってはなりません。
本人も家族も、それぞれの人生を大切にしながら、普通の家族として暮らせることが望ましいのです。
医療的ケア児支援法の施行から5年が経過した今、これまでの前進を評価するとともに、学校卒業後も地域で生活することができる住宅の整備やマンパワーの確保をさらに進めていく必要があります。
どのような障害があっても、家族だけに負担を背負わせることなく、誰もが安心して地域で暮らせる社会の実現を心から願っています。
◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生
養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を精力的に行う。
◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動





















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