『異端の福祉』を読んで / 青野真也(ホームケア土屋 大宮)
介護や福祉における書籍で「福祉は清貧であれ」に挑む、というキャッチフレーズは見たことがない。昔から福祉=清貧でなければいけない感覚が多いように感じる。
介護業界は介護報酬にて大きく経営が左右され、実際に2022年の介護施設の倒産は過去最多だったことからも分かるように、倒産しては意味がない。雇用されていた人以上にクライアントが困るからだ。だからこそ稼ぐことにこだわることは重要であり、「福祉でも1000万円プレーヤー」という言葉は凄いと感じ、人材確保の面においても効果を発揮することを期待したい。
しかし書籍にもあるように「利他の精神や志」は見失わないようにしなければならない。そのために土屋では理念・ミッションにおける研修があり、重きを置いていることが今回よく理解できた。また、代表がどのような思いで株式会社土屋を起業したのかも理解ができた。
特に印象に残った文章の中に、代表と現参議院議員・木村英子との激論がある。現場は他社との関係を学ぶ大切な場所であり、アテンダントはロボットみたいにやるだけではないということ。
私は若手介護職員に「介護はクリエイティブな仕事」だという事を伝えてきた。看護師やリハビリスタッフ、医師と連携を図ることが多々あるが、どんな職種よりも介護職がクライアントのことを一番分かっているはずであり、分かっていなければならない。
看護師からこう言われたからこうする、医師がこう言ったからこうする、という伝言役ではなく、なぜそうなるのかを理解する力と伝える力も必要である。責任をもつことが大切であり、他職種のせいにしてはならない。木村氏が言う「ロボットみたい」という言葉には多くの意味が含まれていると感じた。
近年、介護業界は「労働生産性の向上」のために介護DXが進んでいる。しかし介護の根幹は自立支援と寄り添うことであり、逆行しているようにも感じる。
人材確保が急務の中、生産性ばかりにフォーカスすると「ロボットみたい」な介助者になりそうで怖い。個別の事例において学習し、スキルを磨き、よく聴くことを忘れずにしたい。土屋で様々な研修を受講し、それを学ぶことができ、本書籍で更に深みを知ることができた。
私は土屋に非常勤アテンダントとして入職してまだ半年足らず。専門学校を卒業後、理学療法士として急性期病院や回復期病院を経験し、退院後の利用者の生活を知る為に介護業界へ転職し、現在に至る。また非常勤職員として自立支援施設で10年間働かせてもらい、障害の分野も経験してきた。
全て理学療法士としてリハビリテーション、機能回復の仕事に携わってきたが、今回土屋に非常勤アテンダントとして入職して行っている業務は介護の本質であり、目に見える技術以上に心で通じ合えるコミュニケーションが求められており非常にやりがいのあるものだ。
関節を動かす技術・筋力をつける技術ではなく、クライアントまたはそのご家族が何を望んでいて今何をするべきかを考えることを学ばせてもらっている。
書籍に「多様なバックグラウンドをもつひとたちが活躍」と書かれており、土屋には様々な分野のプロフェッショナルが在籍していることが分かる。その分野の抜きんでた才能よりも、志や人間性、苦難を乗り越えてきた経験などが育まれる人生観、重度訪問介護を行う上ではそのようなものが何よりも大切なスキルではないかと感じる。
私が所属するホームケア土屋大宮では、対面で会った事のある職員はわずかだが、管理者の稲垣さんはじめお会いした職員の人間性は素晴らしいものである。クライアントへの接し方や思い、それらを先輩方の振る舞いを見て学び、土屋のミッション・ビジョン・バリューを念頭に小さな声を探し、これからも更に応え続けていきたい。