【異端の福祉 書評】過去・現在・未来 / 池田憲治(ホームケア土屋 岡山)

過去・現在・未来 / 池田憲治(ホームケア土屋 岡山)

今でこそ重度訪問介護に魅了されていますが、私の最初の介護の印象はよくある3K(給料 安い・結婚できない・汚い)でした。

本でも紹介していただいたように「戦後の大変な時期を支え、今の日本の基盤を作ってくれ た方々に恩返しがしたい」という想いはあったものの、介護への印象はあまりよくなかった です。でも、やってみたいからやっちゃえという感じです。

ですので、当時の友人や知り合い、家族にまでも介護職への就職は反対されました。やっぱ り介護職の社会的地位は低いのだなと身をもって実感します。

私は仕事をする上で大切にしていることがあります。それは仕事に対する自分の想いです。 ですので、高齢者介護をする時に反対をされても、揺らぐことがありませんでした。

スポーツではよく「心・技・体」が大切だとよく言われます。これを数式に表すと「技+体 ×心=パフォーマンス」だと私は考えています。つまり、どれだけ日々技術を磨いても、体 のコンディションを作っても、心がゼロであればパフォーマンスもゼロになります。

仕事も同様だと考えており、働く自分自身の想いによって大きく結果は異なるのではないかと思います。

施設での1対多数による支援に疑問を持ち始めたころ、私は重度訪問介護に出会いました。 介護福祉士の資格は持っており、すぐに現場に入れる状況ではありましたが、「有資格者で あっても障害福祉について少しでも知ってから現場に入って欲しい」という土屋の想いに 則り、私も重度訪問介護従業者養成研修・統合課程を受講します。

今でこそオンラインでの受講が可能ですが、コロナ禍前でしたし、対面での受講でした。そ してその時、講師として障害福祉の歴史や当事者の想いを語ってくれたのが、高浜さんです。

面接時、担当の方からは「高齢者福祉と障害福祉は全然違うので、いい意味でリセットして欲しい」と言われてはいましたが、とはいっても介護を5年やってきているし大丈夫でしょと考えていました。

しかし、その考えは高浜さんの講義を聞いている中でどんどん変化していきました。同じ福 祉業界にいながらも、全く障害福祉について知らなかった自分を恥じるとともに、「地域で 生きる」と決めた方々の血みどろの闘いについて話を聞くうちに怒りにも近い感情が沸き 上がってきました。

私の長女が自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)だったこともあり、誰もが自分らし く生きられる社会を創りたいと強く想うようになりました。そして、そのために私たちがや るべきことは多くあるなとも感じました。

一般的に「介護」と聞くと、高齢者の施設介護を思い浮かべることが多いのではないでしょうか?自分の祖父母を始め、街中でも多くの高齢者の方々を目にし、関わり合いがあると思 います。そしていつかは自分も高齢者になっていくのです。

しかし、障害者と聞くと、関わったことがなかったり、街中で見かけたりすることも少ないのではないでしょうか。そして必ずしも自分が障害者になるとも限りません。そういう意味では、障害者の在宅介護が一般的になるのは長い時間が必要だと感じます。

ただ、今現在もさらなる助けを必要としているクライアントがいますし、潜在的な「小さな声」があることを考えると、私たちの力の無さを実感せざるを得ません。 私たちが進もうとしているこの道は、いまだ誰も通ったことがない道であり、いばらの道をかき分けながら進む必要があります。

決して楽な道ではないことは確かです。大変なことも多くありますが、先頭を走っているからこそ見える景色もあると思います。 10年後・20年後、いつになるか分かりませんが、「あの時はマジで大変だったね~」と笑いながら仲間とお酒を飲めたら幸せですね。

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