『重度訪問介護』をビジネスにした男は漢である / 工藤容子(ホームケア土屋 弘前)
ここまで障害者福祉のことを考えている人がいるんだ。
読み始めてすぐに感じた思いは、どのページをめくっても止まることなく溢れてきて一気に『異端の福祉』に吸い込まれて行くのを感じた。
高浜社長の株式会社土屋を起こすまでの波乱万丈のストーリーは、私の頭の中のスクリーンで勝手に映像化され、まるで映画を観ているような気持ちで軌跡を追うような追体験の時間だった。
重度障害者が一人暮らし?それってどうやって?何をどうすれば実現出来るの?
そんな私の疑問にもこの本は答えてくれる。
障害者本人が書いた本や障害者支援に関する専門書を昔からたくさん読んできた。家にはその手の専門書が置き場所に困るほどにわんさとある。自分の子どもがアスペルガーということもあり、育て方関わり方を模索していた私は何かひとつでも得たい思いでヒントを探していたからだ。
当時は藁にもすがる思いだったし、食費を切り詰めても高額な専門書を手に入れることが最優先の時代もあった。
世の中には学業優秀な人や、いわゆる頭の良いと言われる人はたくさんいて、どの本にもそんな著名な研究者やドクターが親切丁寧に良き情報、専門知識、関わり方などを書いていた。けれどどこか他人事だったり、遠くからやんわりまとめられているような気がして寂しかった。
ありがたく読みながらも、もっと違う何かに巡り合いたかった私には、正直少し物足りなかったのだ。
そう、何が言いたいかと言うと、高浜社長の示した土屋のビジネスモデルには、底を舐めるような人生すら味わった高浜社長の腹の座った覚悟と、恐ろしく感度のいいアンテナが備わっているだけでなく、次々とプランを実行していく志の高い首脳陣がいると言うこと。
この本を読んで感じたことは、困っている人の隣にいる感じがしたのだ。困っていて方策を探し出せない人たちは、こんなチームに出会いたいのだと思ったのだ。私がそうだったら絶対に出会いたい。そして、どうしたらこの困りごとから解消され、未来に一歩足を踏み出せるのかを一緒になって考えて欲しい。株式会社土屋はきっとそんな会社なのだ。私は非常勤でありながらも、この会社で働ける喜びをいま静かに噛みしめている。
重度訪問介護の世界に心強いあかりを灯し、この業界を大きく牽引していくことは容易に想像ができる。そして土屋のさらなる未来には、著書にも掲載されているクライアントたちを始め、多くの笑顔の花が咲いていることだろう。
クライアントはもちろん、働く全ての人間が自信と誇りを持って活躍できる場所、それが株式会社土屋だと思った。
この著書の中で胸に熱く灯った一文を引用させていただき拙い感想文とする。
いちばん困っている人を今すぐ助けるという福祉の本質に立ち返り、すべての自治体で実践されてほしいというのが私の悲願です。(121p)