【第7期 高齢者地域生活推進委員会】第11回 勉強会レポート 2026年9月17日

【第7期 高齢者地域生活推進委員会】第11回 勉強会レポート

テーマ

課題分析は「なぜだろう?」から始めよう 〜感情をたどって、「その人」の正解を見つける認知症ケア~

開催概要

日時:2026年9月17日(木)17:00~18:00
講師:坂本孝輔氏(認知症専門の介護福祉士)

1. はじめに:「正解探し」から「仮説更新」へ

現場でBPSD(行動・心理症状)が起きた際、「この症状に対する正解」を1回で当てようとすると疲弊してしまう。

効果的なアプローチは、一度きりの正解探しではなく、見立て(仮説)を立て、試し、反応を見て更新し続ける「仮説検証プロセス」を回すことである。

2. 事例検証:なぜ食事時に食堂へお布団を持ってくるのか?

事例

食事時になると、毎回自分で部屋から布団や枕を食堂へ持ってくる入居者さん。

  • 事実と推測の分離: 観察された事実(食事時に布団を運ぶ等)と、本人の感情や見えない背景を区別して考える。
  • 表情による仮説の修正: 当初は「寂しさ・不安」と推測したが、本人の「しっかりした表情や満足した様子」から仮説を大きく更新。
  • 更新された仮説: 忙しい職員を見て「何か手伝わなきゃ」と思い立ったが、認知機能障害(実行機能障害等)により「布団を運ぶ」という行動を選んでしまったのではないか。
  • アプローチの転換: 「布団運びを止める」のではなく、配膳やテーブル拭きなど「役に立ちたい想い」を活かす支援へ切り替える。

3. 課題分析の為に集める7つの情報で紐解く 「表情~感情」に注目

  • 感情は行動の「点火プラグ」:行動の直前には必ず感情(受け止め方)が存在する。
  • 7つのアセスメント情報:出来事の受け止め方に影響を与える要素として、

①認知機能
②健康状態・薬の影響
③生活環境
④人間関係・社会的要因
⑤学歴・職歴
⑥価値観・信念

①~⑥により ⑦感情・心理状態の 7つを総合的に捉える。

4. 絶対に「1人で分析しない」ことの重要性

どんなに経験豊富な専門家でも1人ではバイアスや死角が生じる。
未経験や経験の浅いスタッフも含めて、多様な視点や価値観を持ち寄ることで、分析の精度が飛躍的に高まる。

5. チームで回す思考習慣 (5ステップのサイクル)

①困りごとの共有(事実) ➔ ②分析 ➔ ③仮説(見立て) ➔ ④試す+観察 ➔ ⑤仮説の見直し・更新をする。
  • 巧遅より拙速:上手く出来なくても、5分間の立ち話等でも、小さなサイクルを何度も回す。
  • 手順を飛ばさない:正解を一度で決めなくていい。ゴールポストそのものが動いている。困り事からいきなり解決策に飛ばず、プロセスを必ず守る。
  • スロー&ファストの切り替え: 直感(ファスト)に頼らず、「なぜだろう?」と立ち止まる(スロー)習慣をつける。

【結論】

認知症ケアにおける課題分析は、1回で正解を当てようとしない。

チーム全員で多様な視点や価値観を持ち寄り、クライアントの表情や感情を手がかりに仮説を立て、小さく試して更新し続ける「思考習慣」をつけ、質の高いケアに繋げる。

日々の小さな仮説検証の積み重ねが持続可能な認知症ケアとなる。

以上

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