手帳と電車とバス。 / 鶴﨑 彩乃

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

「身分証明書」というと、皆さんは何を思い浮かべるだろうか?免許証や健康保険証が多いかもしれない。しかし、私は違う。私の身分証明書のテッパンは、「身体障害者手帳」である。脳性麻痺という障害と共に生きてきた私にとっては、日常的に「いつもそこにあるもの」だった。

そんな手帳に関して、印象的な出来事があった。それは、小学校2年生のときだったと思う。身体障害者手帳の等級が変更になった。介助量と手帳の等級との差を感じて、母が申請したらしい。身体障害者手帳は1級から7級まであるのだが、数字が小さければ小さいほど重度ということになるのだ。

今の私なら「自分の身体に合わせたサービスや制度を使えるようになる。」とポジティブに理解できるところもあるし、自己覚知もある程度できていると思う。しかし当時はまだ8歳ぐらい、自分の障害をきちんと理解しているはずもなく、「はいっ!また重度になります。できないことが増えます。」と証明されたようで、すごく大きなハンマーで殴られたようなショックを受け、母に「嫌だぁぁぁー。やめてぇぇー。」と顔をぐちゃぐちゃにして、すがりついて泣いていたという記憶がある。懐かしい。

今の私の身体障害者手帳を見てみよう。障害名の欄には『脳原性運動機能障害 上肢機能障害(1/1)移動機能障害(1/1)』と書いてあった。漢字だらけだな本当。

昔、ふと手帳を見たときに、上肢機能全廃と書いてあり、廃棄の廃だと思って「強烈な字だなぁ。」とニヤついていたら、母がやってきて私が、笑っていた理由を話すと母もゲラゲラと笑い、「腐敗じゃなくてよかったなぁ。」と言った。

後日、母はその話を私の前で自分の姉にし、私の伯母でもあるその人は、「普通、怒るんじゃないの?変な人達。」と言って、私達を交互に見てため息をついていたことを本当に今思い出し、しみじみとしている。

今回、自分の身体障害者手帳を改めてまじまじと見て、「これはなんだ?」と疑問に思った箇所がある。そこに書かれていた文字は、「旅客鉄道株式会社旅客運賃減額 第1種」。

気になったので調べてみると、旅客鉄道株式会社旅客運賃減額には、第1種と第2種がある。例として介助者と本人がいた場合、第1種は、介護者と手帳を持っている本人が割引対象となるもの。第2種は、手帳を持っている本人が12歳未満だった(小児料金)場合、本人のみが割引対象となるものという違いがあるそうだ。
30年手帳を持っていたのに初めてちゃんと知ったなぁー。

私は、1種の手帳を持っているが1人で出歩くことが多いので、JRや私鉄が割引になる機会が少ない。本人のみの場合、割引が適用されるのは手帳が1種で、片道の距離が100km以上(私鉄は101km以上の場合有)の普通乗車券のみ5割引。
大阪から100kmってどこらへんや。神戸線でいうと、網干。遠ぉぉー。新快速の終点やん。

私が調べたのは、近畿圏の鉄道なので、「うちの地域は違う!」という方は、なにとぞ、お許しください。

もうひとつ地元話をすると、大阪市では、申請して認められれば、介護人付無料乗車証・単独無料乗車証・乗車料金割引証が交付される。乗車証の種類は、障害種別や手帳の等級・年齢等によって異なるようだ。

私は、介護人付無料乗車証を交付されているので、Osaka Metroと大阪シティバスは、無料で乗ることができる。財布から現金を取り出したり、ICカードをタッチしにくい私にとっては、非常にありがたいシステムである。
色々な制度を活用し、障害や難病を持った人が自由に気軽に出かけられる世の中になってほしいと思う。

そして、株式会社土屋では、クライアントさんの旅を支援する「旅企画」がもうすぐ始まる。

アテンダントさんと旅に行きたいクライアントさん、集まれっ!

参考文献:身体障害者程度等級表・JRおでかけネットホームページ・阪急電鉄ホームページ・阪神電車ホームページ・近畿日本鉄道ホームページ・福なび とうきょう福祉ナビゲーション・大阪市ホームページ

 

◆プロフィール
鶴﨑 彩乃(つるさき あやの)
1991年7月28日生まれ

脳性麻痺のため、幼少期から電動車いすで生活しており、神戸学院大学総合リハビリテーション学部社会リハビリテーション学科を卒業しています。社会福祉士・精神保健福祉士の資格を持っています。

大学を卒業してから現在まで、ひとり暮らしを継続中です。
趣味は、日本史(戦国~明治初期)・漫画・アニメ。結構なガチオタです。

 

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