地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記㊿~病気や怪我で万が一入院しても重度訪問介護の利用を続けたい 後編~ / 渡邉由美子

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

前回は厚労省と今現在の入院時における重度訪問介護の利用ということについての課題と、話し合いの流れを書いてきました。今回はそんな困難さ満載の入院時における介護問題を現時点でクリアしながら入院をして、主訴である病気を手術や治療によって完治させることができた事例を、病院や個人が特定されない範囲で記していこうと思います。

成功事例、好事例も少しずつは出てきていることを皆さんにお知らせすることで、同じような体制を日ごろから築いておくための参考として頂きたいと思います。

重度な障がいを持っていても、それとは直接関係がない形で病気になったり、けがをしたりしてしまうことは避ける事のできない事実です。元々の障がいから派生する様々な疾患や、てんかん発作などの命に関わる即時判断を求められる事例で入院することも完全に避けられない日常の事実です。

私自身もそうなのですが、普段は訪問看護、訪問医療、訪問リハビリ等、医療の方から在宅生活のなかに入ってきて必要な医療サービスを受けるという形をスタンダードとしてしまっています。

しかし、そうすると入院が必要な状態となった時、初見の病院に運ばれて通常の入院と同じプロセスでそのまま入院となり、その時点で在宅のサービスである重度訪問介護の介護者は、退院が決まり在宅に戻る時までつけられないということになってしまうので、慌てる結果となってしまいます。

第一に、日ごろから入院ができるような少し大きめの総合病院に通院しておくことで、主治医や看護師、医療ソーシャルワーカーと関係性を作っておき、自分の普段の障がいや生活について話をして、万が一入院をするような有事の時にスムーズに事が運べるようにコミュニケーションをとっておくことが大変重要であると学びました。

例えば、障がいの状況が進んでいないかをチェックするために定期的に短期間入院したり、嚥下障害のある人は飲み込みの状態が悪くなっていないかを調べたり、身体の元々の変形が過緊張や加齢等の要因で悪化していないかを確かめる計画入院の時に、入院時も介護者をつけるということも同時にシュミレーションする機会として活用するようにしている人々もいます。

それから、なかには自費でお金をかけて人間ドッグなどを受ける名目で(もちろん健康診断のためというのが一番大きな理由ですが)、二泊三日など準備をして入院をし、その時に担当医師や看護チームに重度訪問介護のなんたるかの説明を込みで介護者をつけて入院することで、いざなにか本当に必要なことが起こった時には病院も看護部もある程度状況把握ができるので、実際に重度訪問介護を使って入院をしてスムーズにできたという事例も報告されています。

人間ドッグであれば、ある程度の猶予期間ができるので、病院側と擦り合わせが可能となる点で良い方法なのではないかと私は思いました。

看護師さんたちも圧倒的な人材不足の折、個別対応は難しい病院の内情のなかで普段の患者の生活に慣れている介護者が、患者の身の回りの細かな介護や金銭の支払い、洗濯等入院していても必要となってくる事柄を専属でしてくれることは、うまく住み分けさえできて介護と看護の違いを完全に理解してしまえば、お互い必要とされる存在として共存できる人々だと私は思います。

医療のなかにも日常の生活が自分で送れない人に対してそれを手伝う介護的要素を担うよう規定されている部分があり、入院時介護者を認めてしまうとその行為が重複すると今の医療現場では考えられています。

しかし、それは最低限度の介護行為であり、複雑で個別性の高い介護が無ければ障害そのものを悪化させてしまったり、二次障害を誘発してしまい下手をすると骨折などの危険性を伴う重度な障がいを元々持っている当事者にとっては、到底妥協し難い介護の現実なのです。

国は当初、難病患者を想定したコミュニケーションの困難さだけを介護者付き入院の条件とするような通知を出しました。後に障がい者の立場からも介護者付き入院が認められるようにとたくさんの仲間が声をあげ、現状の改善を求めて運動を継続しているところです。

お互いの立場や理解を深める積み重ねのなかで日常生活の延長線上として入院時も病院内で介護者を付けて医療を受け、また地域に戻って暮らしていけるシステムを一日も早く構築したいと思います。

長い人生を生き抜くためには、いつ何時入院が必要な事態が起こっても医療者側も受け入れ態勢が出来ている状況を平時から築いておく重要性を強く感じます。皆さんも何事もないにもちろん越したことはありませんが、医療者との良好な関係性のなかで準備を進め、入院した先輩の経過の積み重ねで入院時介護が当たり前のことになっていくよう努力をしたいと思いませんか。

それはなにも入院時の制度だけではなく、今使っている日常のものも、最初は無かったものを先輩が築いた礎の上に今があるという構図は一緒だと思います。生きやすくすることの一つとして一緒に作り上げていきましょう。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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