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地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記66~在宅訪問医療・介護が事件になるこの頃に思う事~渡邉由美子

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

年末の放火事件や在宅医療を巡って起きた事件を考えてみたいと思います。
両事件ともに、罪を犯してしまった犯人たちの置かれていた社会的な立場があまりにも弱かったことを今後に生かしていかなければならないと思わずにはいられません。

被害者のお二人とも、「良い先生だった。こんな親身になって患者を診てくださる人はいない」と言われるような医療従事者なのです。今は、患者との距離は一定に保ち、患者や家族の状況に入り込み過ぎてはいけないとされているため、画一的な医療が良いとされます。

しかし、様々な意味で画一的なものでは対応できない患者や家族は行き場を失ってしまうのです。そのような医療の在り方に疑問を呈した使命感を持った医師は、自分だけでも求められる理想の医療を展開して踏み込んだ医療を一般化していこうと努力していたのです。その人が犠牲になってしまい、何とも表現し難い不条理さを感じます。

このような在り方が普通のこととして成り立っていれば、事件そのものが起こることなく、社会から隔絶されがちな重度障がい者や生きる力の弱い人も同じ町の中で穏やかに生き続けることが出来る社会になると思います。

なぜならば、他者が生活や介護などに介入するハードルが下がることになり、支援の手が行き届いて、孤立せず、それにより置き去りになる人がいなくなることで、誰もが同じフィールドで生きる事が可能となると考えているからです。

今回亡くなられた先生の患者は約300名いたと報道で聞きました。最後の砦として、この先生に頼っていた患者さんたちの現在が心配でなりません。

報道からは生活が立ち行かなくなった犯人が刑務所に入りたくて行った犯行であったのだろうとか、親の年金をあてにした生活の末に、親が亡くなってしまい、生活に困るから蘇生を試みて欲しくて医者を呼んで、それが叶わなくて自殺するつもりで道連れを作ったのだろうという推測の数々が流れていますが、私はとても深い悲しみと憤りの感情を持ってしまいます。

家族の中で起こっていることは、本人たちがきちんとしたSOSを出せる精神状態を含めた状況に無ければ、社会の明るみに出る事はありません。放火事件にしても猟銃殺傷事件にしても、言うまでもなくその行為はあってはならないことです。

しかし、前述した社会と繋がる体制を整えていく事で、本人や家族など少数で抱え込むのではなく社会全体の問題として広くたくさんの人が関わることが出来るようになり、人を殺めてしまう事を未然に防ぐことが出来たのではないかと思うのです。

ですからこの犯人に、精神的な障がいがあったのではないかなどという推測でしかない議論で終結させることはしてはならないと思います。彼らがそうせざるを得なくなったことそのものは、重度障がい者が抱える解決し難い介護人材不足なども含めた社会的な歪みを強烈に物語っているのです。

加齢とはいえ日々衰えていく最愛の唯一無二の家族である母親を懸命に介護していた中で、どうすることもできず、その現実が受け入れられず追い詰められていったことは事実だと思います。そんな介護家族を事件が起こる前に救う術を社会システムとして作り上げていくことが真に必要だと思います。

加えてこれに類似する別事例としては、仕事がないために経済が成り立たず、人生に絶望してしまった末に起こる事例です。生活保護制度は、誰もが人生のいろいろな局面の中で働くことが困難になった場合に、堂々と受けられるものと理解することが可能であれば防げる事件だったのではないかと思います。

もう一つ密室で繰り返されている”しつけ”と称した児童虐待も介護と同じく家庭内という他人がプライバシーとの関係で早期に踏み込みにくい場所で事件が起こる状態となっています。他者が介入しにくい状態である為に発見が遅れてしまうのです。

問題は、一見違うことのように捉えられてしまいますが、問題の本質は一つの根っこで繋がっているように思えます。医療も介護も子育ても障害者問題も、一般社会から取りこぼされてしまう、同じ場所にいるためにはハンディを背負ったまま、自助努力を継続することが求められます。それを可能にした者だけが社会にやっと共存できるという構造でそれが難しければ、隔絶し孤立した特有の狭い世界に閉ざされてしまわざるを得ないのが現実の世の中ということになっているのです。

顔を合わせていればふとした時に、何気なく気にかけて、自分の家族ではない立場の人を訪ねる余裕が生まれてくるような気がします。もちろんそういったソフトな関わりだけでは覆いきれない問題は公的な行政が問題別に相談できる場所をできるだけハードルを低くして、設置する中で適切な支援へと繋げていくシステムを作って欲しいと思います。

障がい者問題については自分自身がいつ生きる事が立ち行かなくなるか分からない身なので、仲間も含めて生き続けられるようにこれからも弛みない問題解決への道を模索しつつ、よりよく生きていける社会の糸口にしていきたいと思います。

今回の極端な事件が決して医療や福祉の求められているニーズをくみ取らない画一的な方向に進まないよう、出来ることを努力していきたいと思います。亡くなられた方々の熱い患者への想いが無駄にならない社会を継続していけるように、運動や活動を展開する中で向かっていきたいと思います。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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