『愛と幻想のビジネスマナー』 / わたしの

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

感染症拡大予防のために対面による会議や研修などの機会が少なくなりました。どこかへ出向いて行って人と会って話をする、そんな当たり前だと思っていたことが難しい昨今です。

私は人と会うのが「好き」とは胸を張って言えないのですが、メールや電話など顔が見えないコミュニケーションだけだと不安です。文章を書く身でありながら文字だけでやりとりするなんてとっても怖いと思っている人間です。

外部の方とのちょっとした会議でも相談でも「会いに行く」ことをこれまでは大事にしてきました。どんなに遠回りになってもそれが楽しかったのです。

同じ建物内の違う部署の人に用事があり内線一本ですませることができる場合でも、わざわざ出向いて顔を見ながら話したくなります。
会うためにはまず内線でアポを取ります。しかし、その内線の前に相手が電話に出られる状態にあるか、ちょっと様子を見に行きたくなります。まあ無駄足の多いこと。要領も悪い。

「もっと効率的に、合理的に仕事をせよ!」

それが全然できない駄目社会人です(-_-;)。

先日金融関係で働いている友人から面白い話を聞きました。

オンライン時代の新たなビジネスマナーが生まれつつある、というのです。

どういうことかというと例えば、

『zoom会議の終了時に目上の人が退出してから自分が退出するのがマナーである』というものです。

「ビジネスマナーっぽくない?」と友人は半分冗談で言いました。

「確かにありそう(笑)」

zoomミーティングを行ったことがある方は「あーそうか」と共感してもらえるのではないでしょうか。

zoomに参加したことがない人のために簡単に説明しますと、zoom会議というのはオンラインを使ったweb上の会議です。パソコンの画面に参加者の顔が並んでいるのですが、進行役が会議の終わりを告げると、それぞれの参加者は[退出する]というボタンを押してその会議から離れます。

新しくビジネスマナーになりつつあるというのはこの退出のタイミングについてです。会に参加している目上の人が退出してから自分が退出するのが礼儀だと言うのです。
まさしく新しい時代の、オンラインミーティングという新しい会議のやり方の中から生まれようとしているビジネスマナーです。

これまで私も何度か会議を行いましたが、退出は自分のタイミングでした。早めに抜ける方がよいのかなとさえ思っていたほどです。みんなバラバラに退出していく様子もなんとなく好きでした。

友人から話を聞いたあとzoom会議を行ったとき、いつものように退出しようとしたのですが[退出]のボタンを押すのをためらった自分がいました。もしかして、もうすでにこれはビジネスマナーだとみんなが知っていて、これを知らないのは自分だけではないか、自分だけが無礼をしてしまうのではないかという疑心暗鬼にも似たビジネスマナー探りをしてしまっていたのです。

もし会議の参加者の中に同じように疑心暗鬼になっていた人がいたとしたら、もう探り合いがはじまってしまいます。あー、怖い、怖い。こうやってマナーって出来上がっていくのかもしれないと思ったのです。

ビジネスマナーが成立する過程の一つには、誰かがはっきりと決めるものではなく、こうやって人々の(集団の)意識、無意識の探り合いなどを経て、なんとなく固まっていくものというのがあるのかもしれません。まさに共同体が作り上げていくものでしょう。

『zoom会議から退出するときは目上の人から抜けることが礼儀です。目上の人が退出するのを見届けて自分も会議を抜けましょう』とビジネス書に堂々と書かれる日もそう遠くはないのかもしれませんね。

しかしながら、まだこれはビジネスマナーにはなっていません。なりつつある段階です。卵から孵化しようとしているまさにその瞬間です。

だからこそ、もう一度みなさんに問いたい。

『目上の人が退出してから自分が退出する』

これをビジネスマナーにしたいですか?
認めたいですか?

まだ固まりきっていない今だからこそ問いかけたい。世に産み落とされる前にもう一度考えておきたいのです。

これはビジネスマナーなのでしょうか?
新しい時代のマナーとして、これでよいのでしょうか、と。

みなさんは、どう思いますか?

私はビジネスマナーなんて関係ないと思ってる人間ではありません。どちらかというとマナーは守りたいし、相手にも守ってもらいたいと気にかけているタイプの人間だと思います。

きれいにまとめるのが嫌なので率直に言うと、挨拶しない奴はムカつくし、割り込んで話してくる奴はイヤです。自分ができていない部分が多いので偉そうには決して言えません。それでも自分を棚に上げて言ってしまえば、相手のことを考えて行動していない人に対しては最終的に信頼ができないのです。

マナーは相手を敬う心や相手を大切に思う気持ちがなければ意味がないとも思ってます。その見えない心を形や行動にすることがビジネスマナーの基本的な部分ではないでしょうか。

先の『目上の人が退出してから………』というのもマナーっぽさはあると思います。確かに既視感さえ覚えます。だからマナーだと認めたくなる気持ちも分かります。共通認識になるのも時間の問題かもしれません。

しかし、気になるのはこのマナーから漂う全体主義的な香りです。

これがモーレツサラリーマンの時代だったら違和感ないでしょう。時代に沿ってる感じがします。組織の長を頂点としたピラミダルな組織で働くサラリーマンから生まれてこようとしているようなマナーの印象を受けます。

しかしながら、現代にはフィットしないようなギャップを感じるのは私だけでしょうか。

これからの時代はきっと全体主義的な経営では会社も組織も局面を乗り越えてはいけません。
人材も資金も環境も限られた中でハイクオリティなサービスを提供しなければいけないという二律背反の課題に直面している現代において、その局面を乗り越えるためには全体主義的な組織イメージからの脱却を考える必要があります。

トップダウンで物事が決められていく組織ではなく、組織の理念という地図を手にして、働く一人ひとりが主体的に課題を見つけ解決していくような動き方ができるような組織。チームの中で支え合いながら、一人ひとりが小回りを効かせて、より多くの人の幸せを追求できるように最大限の力を発揮してもらえるような組織でないと生き残れない気がするのです。

だから、もう『目上の人が退出するまでは………』みたいな全体主義的な香りのするマナーっぽいものはもういらないんじゃないか?と、私は思うのです。
まだバブル崩壊以前の古き良き日本企業の亡霊みたいなものを追いかけているのかなと思ってしまいます。

もちろん目上の人に対する敬意がない訳では決してありません。敬意の表し方を変えてみてはどうかと思います。

最後に私から提案させてください。
『目上の人が退出するまでは………』というマナーではなくて、例えば

『退出するときは笑顔で退出しましょう』というのはどうでしょうか?

私も笑顔は苦手で愛嬌がないけれど、無理しない程度に笑うようにします。表情だけでなく仕草で表現してくれても構いません。手を振るのはちょっと照れくさいという人は振らなくていいです。でも振ってくれると嬉しい(. ❛ ᴗ ❛.)。

『この会議を持てた喜び』『時間を共有できた喜び』『セッティングしてくれた人への感謝』を上司や同僚や関係者、仲間たちに伝えるために、派手ではなくてよいから笑顔やボディーランゲージで表してから退出するというのを新しい時代のマナーにしたらどうでしょう。

終わりよければすべてよし。

飛ぶ鳥(立つ鳥)あとを濁さず。

会の終わりを気持ちよく笑顔でさよならしましょうよ。

みなさん、どう思いますか。

 

 

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