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地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記64~某ドーナツ店が長年行っている障がい者リーダー育成に感じる事~渡邉由美子

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

少し前の話になりますが、1月27日は某ドーナツ店創業の日です。その創業の日に買ったドーナツの売上の一部が、日本の障がい者リーダー育成基金に使われる事になっています。

そのため、この日にドーナツを食べれば、未来の日本の障がい者運動を担う有能な若い障がい者が産まれ、先輩たちが命を懸けて必死に築き上げてきた、今の重度障がい者が地域で生きられる状況を発展・継続させることができると思い、その夜に泊まりに来る夜勤ヘルパーや翌日の日勤ヘルパーの方たちにまで配れるように普段より沢山の数を買い込んで、美味しく頂いています。

この研修には私の若き日の挫折も色濃く関係しています。20代の頃、ぼんやりと親兄弟からの自立を模索し始めた時に、この某ドーナツ店主催の障がい者リーダー育成研修があることを新聞広告で知り、応募してみたいと思ったことが何度かありました。

研修者の選考は、第3次選考ぐらいまで段階的な試験があり、最後の試験ではこの研修で自分が何を身につけたいのか、身につけたものを日本に持ち帰り、どんな障がい者リーダーとしての役割を果たし、日本の障害福祉にどう寄与するのか?といったことを具体的にプランニングして、英語でスピーチや論文の作成を行わなければならず、それが選考委員の方々に認めて頂けなければ研修費を使って渡米することは出来ないシステムになっていました。

私は、大変恥ずかしいのですが、英語というものを全く勉強したことがありません。ローマ字の勉強にとどまり、中学1年生で英語の教科書が配られはしましたが、それを使用することは無く職業訓練の時間に当てられてしまい、その職業適性も言うまでもなく全く出ませんでしたので、何とも言えない学力しかないまま今日に至る人生状況なのです。

そのため、某ドーナツ店の障がい者リーダー研修は、書類を取り寄せても最初から相手にされない研修でしたが、その当時憧れを抱いていた私は英語をどこかで勉強すればいつかは行けるかもしれないと無謀な淡い期待を抱き、ラジオで毎日放送されていた基礎英語や続基礎英語という番組を欠かさず視聴して英語力が渡米できるレベルに身に付くことを夢見た時代もありました。

確か応募には35歳までの年齢制限があり、その年齢を迎えたことで敢え無く諦める結果となった、甘いドーナツが織りなす苦い思い出でした。

とにかく、若かりし日の私にとっては魅力的な言葉の羅列である募集要項取り寄せの新聞広告であり、何とか応募できるレベルに自分の知的能力を上げることが出来ないかと真剣に悩んだ日々でした。

私は、その頃他人介護というものを使ったことはありませんでした。だからこそ、この要件に自分が合致すれば、海外の進んだ福祉を目の当たりにしながら他人介護を使いこなしていく術も身につけられると考え、この上ない憧れを抱きました。

実際に、某ドーナツ店の研修から戻ってきた障がい者リーダーたちが、日本の自立生活運動の先頭に立って、交通バリアフリー問題や介護保障問題に取り組んだり、親元や施設で人生経験の少ない重度障がい者を地域で暮らせるような能力が身につけられるよう育成するプログラムなどを総合的に当事者目線で提供していったりしたことで、病院や施設もしくは家族の元で自分のしたいことも遠慮して出来ず、なりを潜めて生きてきた障がい者たちに主体性のある自己実現を可能にすることへと繋がっていきました。

私は若かりし日に渡米は出来ませんでしたが、今こうして就労や結婚は出来ていなくても毎日がとても充実していて、明確に私にしかできないと思える日常を送ることが可能となっていることを考えると、障がい者リーダー育成研修は皆さんからの寄付や企業の協力によって成り立っているため能力主義にならざるを得ないということについて一定の理解をしなければならないと思いはしても、学力とかIQとかといった一般社会の能力主義に劣等感や抵抗感を感じてしまうのでした。

一般企業に普通のルートで就職したい、その先には普通の結婚があり、自分の家庭も築きたいという思いを捨てられないうちは、何もできませんでした。重度障がい者としての割り切りや開き直りの土台に立って、そんな人生を楽しくしなやかに生きようと思えるようになってから社会を見る目が変わりました。

変わったことで、生きがいの持ち方も自己肯定感も全然違ったベクトルで自分自身を認めることが出来るようになったのです。

とても時間はかかりましたが、暗闇を抜け出してありのままの自分を自分自身が肯定し、必要な社会支援サービスをフル活用しながら今日の自分をより良く生かすという観点で人生を日々作っているのです。

これからを担う若い障がい者リーダーの皆さん、「こんな考え方も生きる道としてあるのだ。」ということを是非参考にしてもらい、自分に合う生きる道を模索し続けて頂けたら嬉しく思います。

誤解されたくないですが、私は某ドーナツ店のリーダー育成制度を否定しているわけではありません。行ける人は行って欲しいと思っています。だから、この日にドーナツを買うという協力を毎年続けているのですから…。

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

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