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小さな自分を抱きしめて~アルコールについて その3~ / 安積遊歩

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

前回、アルコールについてのその2は、アルコールがどのように男性に影響し、男性の命を奪う抑圧の道具と化しているかを書いた。今回は男性に対してだけでなく、社会に生きる全ての人にどのように影響をもたらしているかを見ていきたい。

アルコールは差別の道具であり、差別問題の土台である。一つ目の明らかな差別は子供差別である。これを英語ではアダルティズム(大人主義)とも言うが、アルコールの摂取は子供より大人の方が人間として上なのだという思い上がりであり、差別である。

アルコールを飲む大人達は「アルコールは体に良い」とか「ストレス解消に必要なのだ」とか言う。もし本当に体に良ければ子供にも大いに飲ませるべきだ。しかし20歳まではとりあえず違法となっている。現実には10代からの飲酒が当たり前のようにあるにも関わらず、コンビニや自動販売機には、「飲酒は大人になってから」というような警告があったりもする。10代の子達は自分達に対する差別的な対応に意識的にも、無意識的にも反発を感じているだろう。だから隠れながら、そして大学に行っての一気飲み等では命を失うまで飲まされる。

また、20代になったからと言って突然飲酒が認められるのも実に不可解である。英語では20代はヤングアダルトとも呼ばれ、「大人になっておめでとう」ということで飲酒が解禁される。しかし一方ではまだまだ一人前ではないという社会からのまなざしと対応がある。アルコール好きの大人が周りにいれば「晴れて一人前だな」と強制的に飲まされもする。初めは美味しくないと思っても、強要してくる大人に決然と「飲みたくないです」と言える20代はほとんどいないだろう。

歴史のなかでは、アルコールを使って若い兵士の感覚を麻痺させることで軍隊を作り、戦争は終わることなく続いてきた。その悪しき慣習を受け継いだ多くの会社や組織がまだまだある。悪しき慣習、それは差別を生み、差別そのものになっていく。

勿論10代でも20代でも飲まない人は飲まない。飲まないことによって飲んでいる同世代との間に分断も起きていく。時には日本的な同調圧力のなかで、それに屈してしまうこともあるが。屈してしまえば、命をも失うことさえ起きてくるわけだ。分断されての孤独を取るか、それを避けて、命の危機に追い詰められるか、若い人の飲酒を巡る状況は過酷だ。

何より年齢で区切って飲んではいけないというのは差別である。差別なのにも関わらず大人達はまず自分の命を飲酒と言う暴力にさらし、その上で子供の健康や命を守りたくてそれを違法行為としているわけだ。差別されることを嫌だと言う子を問題児扱いし、飲酒の若年化を子供の問題と言い換える前に大人達の世界から飲酒癖、アルコール依存症を無くす事を考えるべきだ。

そして二つ目の差別は女性差別である。女性は今まで男社会の中では男性の飲酒癖を支える役割を担わされてきた。つまり女性自身が消費者にはなれない、させられないという屈折した差別の中にいたから男性よりはアルコール依存症に陥る人は数的には少なくみられてもいる。しかし消費者としての役割が期待されない中での飲酒は、隠れて飲む事が多くなる。何事もそうだが、問題は隠せば隠すほど深刻さが増す。女性もアルコール依存症に簡単に陥るということを明らかに出来ない社会の女性差別の闇。また、飲まない女性でも男性からの飲酒による暴力をどれほど多くの女性が黙らされ、耐え続けていることか。それを含めてアルコールは女性差別の大いなる一端を担っている。

そして、最近はアルコールによる様々な病気で男性の顧客がどんどん減っていくために、アルコール産業は女性をターゲットにし始めた。中でも若い女性を取り込もうとする勢いは美容産業にも並ぶ脅威を感じる。女性同士の付き合いの中にも、もちろん1人の時も、女性が立派な消費者になれることを促すコマーシャルが世界的に増えているという。私の実感でも女性の飲酒は、ここ数十年で確かに増えている。若い女友達の話によれば「ストロングゼロ」というアルコールがコンビニで手軽に買えるらしい。これはビールよりアルコール度が強く、あっという間に酔いが回るという。若い女性たちは大抵一人で飲んで深酒になり、容易にブラックアウトに陥っていく。これは先にも書いた若い人と女性の差別が重なっての恐ろしい実態である。

そして、最後の差別は障害を持つ人へのアルコールを使った差別だ。長い間障害を持つ人は社会から隔離、排除されてきた。その辛い状況に対する反発のように、地域の中に出てアルコール漬けになる人が多かった。特に、アルコールを飲んで1人前のような眼差しがある社会だから、アルコールを飲むことで1人前でありたいと思わされてきた。特に、脳性麻痺者の人たちはアルコールによって緊張が緩むとも言われるが、それは状況として、それ以外に緊張を緩ませる方法を社会の側が提供していなかったし、今もいないのだと思う。

言語障害のある人が、大好きな恋人といれば緊張が緩んで話しやすくなる。しかし、大抵の場合「その言葉では何を言っているかさっぱり分からない」という眼差しに取り囲まれているわけだ。アルコールが緊張を解くからといって早死に追い込まれるのではなく、アルコールを使わなくても極度に緊張しなくていい社会を作らなければならない。

これらにプラスしてアルコールは人種差別、階級差別、地域差別、職業差別、全ての差別を増長、拡大させる。わたしたちは子供に学び、アルコールから自由になって、アルコール無しでも幸せな社会を作れるのだということを徹底的に自覚していこう。

◆プロフィール
安積 遊歩(あさか ゆうほ)
1956年、福島県福島市 生まれ

骨が弱いという特徴を持って生まれた。22歳の時に、親元から自立。アメリカのバークレー自立生活センターで研修後、ピアカウンセリングを日本に紹介する活動を開始。障害者の自立生活運動をはじめ、現在も様々な分野で当事者として発信を行なっている。

著書には、『癒しのセクシー・トリップーわたしは車イスの私が好き!』(太郎次郎社)、『車イスからの宣戦布告ー私がしあわせであるために私は政治的になる』(太郎次郎社)、『共生する身体ーセクシュアリティを肯定すること』(東京大学出版会)、『いのちに贈る超自立論ーすべてのからだは百点満点』(太郎次郎エディタタス)、『多様性のレッスン』(ミツイパブリッシング)、『自分がきらいなあなたへ』(ミツイパブリッシング)等がある。

2019年7月にはNHKハートネットTVに娘である安積宇宙とともに出演。好評で再放送もされた。

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