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地域で生きる/22年目の地域生活奮闘記71~障がい当事者の苦悩の歴史に学ぶこと~ / 渡邉由美子

先日ある知人から自叙伝というか自分の波乱万丈の人生の手記を書きまとめた本を2冊も謹呈していただきました。その内容のあまりにも人としての扱いをされない様に思わず途中で読み止めることができず、ほとんど2冊を貪るように読み終えました。

時代は1980年代初頭から2000年代初頭にかけて、施設入所を取り巻く状況が赤裸々に描かれていました。実話だけになんとも胸にせまるものを感じずにはいられませんでした。

この本に書かれている内容のみならず、私と同級生の友人たちも本人が希望したわけではないのですが、80代になった親にずうっと介護をしてもらうわけにはいきません。物理的状況として無理があり、やむを得ず施設入所を余儀なくされている人たちは本当に多いのです。

3年以上続くコロナ禍の中で、友人は施設の駐車場も含めた敷地内から一歩も外に出られていないのです。出られるとしても、施設の車でドライブをするだけであるとしきりに私に訴えかけています。

応援ランチとかエールランチとかいう名称で季節ごとの行事食以外に少し普段の食事が豪華になる日が増えてはいるものの、それ以外はもともと少ない外出行事がゼロになり、毎日食堂と居室の間を幾度となくうろうろしているうちに一日が暮れていくのだそうです。

私は親元から直接施設を経由せずに一人暮らし(自立生活)をし、三日でダメになったら親の言うように施設入所するしかないという思いの中で暮らし始めました。しかし、制度がない間はさまざまな人間関係の中で生まれたボランティアさんたちを活用して、地域でなんとか22年間生きてきました。本当に奇跡だと今にして思っています。

施設入所を経験して地域に出た障がい当事者の方たちからは、よく親元から直で自立した障がい者はぬるま湯だと言われることが多いです。

それはどういうことを意味するかというと、本当に人の手が足りなくて大も小もいっぺんに排泄が出てしまい決壊した地獄のような経験をすると自立生活に対する肝がすわるということです。

口先だけではなく、誰もいないよりはどんなに気の合わない介護者やちょっと観点の違う介護をする人でも、介護にまつわる人を大切にする心にはまったく違った深さがあるというのです。そんな点から私はぬるま湯につかった自立生活なのだと先輩たちや施設を経験した後輩たちからはよくご注進を受けます。

私だってお腹が痛かったり、トイレを探すのに時間がかかっていわゆる垂れ流しになってしまった経験はあると、私がなかば弁明のように話すと、その施設経験者の人たちが経験した垂れ流し状態は、その状態を何時間も放置されるということなので、情けなさとわびしさが身体に沁みるのだそうです。

私はここで入所施設の批判をしたいわけでは決してありません。対象となる障がい当事者に対して健常者が少なければそのような状態になってしまうのはなかばやむを得ないことで、誰を責めるわけにもいかない事情があるのですから。

その真意は体験した者にしかわからないことだと思うので、施設経験のない私が軽率に論ずることはしてはいけないことなのだと思います。

今回読んだ著書にはたとえば食事はおかずも味噌汁もご飯も薬も全部合わせてぶっかけたものを3分か5分で食べさせてもらうのが日常だったというくだりがあり、その実態の過酷さが伝わってくる一文だと思いました。

1980年代よりは見た目や建物のきれいさはあるのかもしれませんが、私はやはり重度訪問介護という制度をもう少したくさんの人が自分らしく生きるために使い、その人の人生は本人が作り上げるものという生活ができる環境をもっともっと広く深く浸透させたいと思います。

たまたまの奇跡のようなことが上手くいった人だけが特権のように地域で暮らせるのではなく、望めば誰でも暮らせる自立生活の実現を永続的に行っていきたいと思います。

3月が終わり4月も半ばとなり、別れと出会いの季節がまためぐってきていますが、一人一人縁があって私の介護をしてくださることになった介護者を、大切にできる暮らしを継続していきたいと思います。

先日母に電話連絡をした際、私自身の忙しさや体力の限界で些細なことでいらいらしていて、不覚にもキレてしまったことがありました。あとで冷静になった時に謝罪するとともに改めて母と話をした時に、私だから許せるけれどこれを他人の介護者にもししているのだとしたら、ごめんなさいではすまないので気をつけるよう重々言われました。

感情にまかせてものを言ってしまうことをしないように気をつけなければならないと改めて思いました。
1日中感情を出さずに過ごすことも難しいのですが、お互いが気持ちよく楽しく過ごせる空間の中で生き続けられるよう努力したいと思います。

冒頭で読んだ本の中の一節で、「してもらいたいことがあるならば相手にも何かを与えることができるのか考えながら生活すると、自分のやりたいことやできないことを思った以上にたくさんカバーしてもらうことができる」というフレーズがありました。それが私の胸を打ちました。
さまざまな教訓を糧に22年目の仕切り直しの春を過ごしていきたいと思いました。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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