地域で生きる/22年目の地域生活奮闘記73~大型の電動車椅子で外食をすることについて~ / 渡邉由美子

日常の楽しみといえばバリエーションはそんなに多くないので私の場合は外食を楽しむということが至福のひと時です。
しかし、なかなか気持ち良く入れるお店を作ることが困難なのが現状です。

チェーン店は個別対応というよりはマニュアルで決められた接客しかできない、ということになってしまい、電動車椅子の人が気持ちよく飲食をする環境整備はとても難しいと日頃感じています。

その環境整備をほとんど求めなくてもお腹を満たすということが容易に可能なのがファミリーレストランになりますが、食べる前から大体味も想像できてしまう、という点では食を楽しむことは豊かにはなりづらい側面もどうしてもあり、味気ないとか、つまらないだとか考えてしまうと、もう少しグレードの高いお店に入りたいと思うのです。

昨今では、お店と同じお料理を自宅で食べられる宅配サービスも競争でたくさん出てきていますが、やはりなんとなく、量が少なかったり出来立てではなくなってしまうので味が変わってきてしまったりするような気がして、あまり私は活用しきれていません。

何より、外食を求めるときは気分転換を図りたいのです。家ではない空間に行く、お店の雰囲気を味わう、ということも求める要素の大きな部分を占めるのです。

そのようなことを考えたときに、バリアフリーがあるかないかは、安心して食事を済ませるための重要な要素です。車椅子に対して配慮をしていると書いてあったりしても、ほとんどの場合が手動車椅子しか想定されていないのです。電動車椅子が行くと店員さんが対応に右往左往して困っていることもまだまだあるのが現実です。

それでも私が自立生活を始めた頃と比較すると、露骨な入店拒否は随分少なくなったと思います。これが少しずつ障害というものを社会が受け入れるようになった、ということなのでしょうか。以前に比べれば、さまざまな障害を持っている人が街に自然に出ていて、そんなに奇異な目で見られることは減ってきたと感じることは多くなってきました。

私のように、会話もできる障害者は自然に私に食べたいものなどを店員さんが尋ね、軽い食器やフォーク、スプーンなどを用意してくれたり、広いテーブル席を確保してくれるようになりました。

知的な障害があり、独特の声が出てしまったりするタイプの障がい者への理解が本当に進んでいくのはもう少し時間のかかることになるような気がしています。より多く目に触れ、関わり方を自然に周囲の人たちが学んでくださることによって、できることの幅が広がり、一般市民の人と普通に同じ場で過ごせる社会が実現されていくと実感します。

しかし、入店するために重要な要素となるバリアフリーの有無だけではなく、私が行動をするためには介護者の関わりがどうしても必要なので、介護者の飲食代についてもいつも議論になる事柄の一つです。

自分が外食をするのだから介護者分も同じものを出すのが当然と考える障害当事者も少なくはないのだと思います。しかし、私のように外食好きであまり自宅で自炊をすることを努力しないダメな自立生活者の場合、介護者分を全額毎回負担していると生活に与える食費の割合が大きくなり、少し抑えなくてはならないかな?と考えたりもするのです。

毎回共に食べることを求めている訳ではなく、私が外食をする前後に介護者は持ち込んだ物や手作りのものを食べる時間を作る事は当然のことなので出来ます。

どちらかというと、お店がせめて飲み物ぐらいは注文して欲しいという無言のオーラを出してくることもあります。そんな時「食べるのは私だけです。介護が必要なので入店します。」と、きっぱりは言いにくい雰囲気の時にどうしたら良いのか悩んでしまいます。

先日あるチェーン店のお店に行った時、注文しないのであれば介護者は立って介護をするよう言われたりしてしまいました。他のお客様の邪魔にはならない位置に介護者が座る事を伝え、座って介護をしなければ食べる私がうまく食事が出来ないことなど、私特有の事情を説明しました。

忙しく混んでいた時間であった事も重なり、介護者が同席する事の意味や座る事の必要性を伝えることが出来ず、結局飲み物を頼んで介護してもらう結果となりました。真の理解をしてもらえるまで説明をした方が他の仲間も含めた今後の為には良かったのかもしれませんが、目的が息抜きであった為に今回はお店側が言う主張を受け入れる事にしました。

以前、別のお店で障がい者仲間の友人と外食した時には、あえて介護者を別場所待機にしました。二人の障がい者だけで大丈夫なのかと店が過剰に心配し、頼まなくても良いので介護者にいてもらって欲しいとお店側から要請を受けました。

食べること自体には介護が必要なのですが、その時は友人と二人だけの時間を楽しみたいという理由で二人だけになる選択をしましたが、結局お店の方に手を借りる事になるので、それを店側がどう受け取るかによっては介護者を付けてほしいという事になるのは当然の事ではありました。

どちらにしても、私が主体となりやりたい方法をとる事の難しさを感じずにはいられませんでした。その時、一回きりしか行かないお店に事情を理解させることは難しいので、常連になるお店を何軒か作ることにより相互理解が深まり、快適に外食が可能になるのだと改めて思いました。

そのような関係を築いていけば、お店にバリアフリーがなくても人的な力で入店できるお店も増えるのだと思います。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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