地域で生きる22年目の地域生活奮闘記106~2023年の幕開けに期待すること~ / 渡邉由美子

新年明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年も引き続き社会参加活動に邁進していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。このブログを読んでくださっている皆さん、いつも本当にありがとうございます。今年も様々な事柄について、福祉や介護という観点から書いていこうと思います。

新年初回のブログということもあり、明るい話題にしたいと思っていましたが、私達を取り巻く社会情勢は昨年末から首をかしげたくなる事ばかりで、明るく楽しく書ける要素が見つかりません。

昨年12月に北海道の西興部村の総合福祉施設で起こった虐待事件は、真相が伝わってくればくるほど、なぜ入所者たちはそのような処遇を受けなければならなかったのだろうと思わずにはいられない凄惨なものでした。

その施設内には強度行動障がいを伴う自閉症や重い知的障がいをもつ人が生活を共にする障がい者支援施設があり、そこで38件にもおよぶ虐待が行われていました。ところが虐待の加害者である職員6人は非道なことを行っていたにも関わらず、「代わりに働ける人がいない」という理由で、減給こそあれ、懲戒免職されることもなく働き続けていました。

その施設の施設長がメディアの取材に対し、公然と「働き続けてもらわなければ困る」と話す様子を見たとき、心から罪の意識を感じている人の発言とは到底思えないと感じました。またその事件の報道があった直後に、同法人が運営する特別養護老人ホームでも認知症をもつ高齢者らの全裸や下着姿の写真を撮るなど、常軌を逸した虐待事件も明るみになっています。

私は入所施設がもつ閉鎖性に大きな問題があり、それを解消しない限り、このような事件はなくならないと考えます。

コロナ禍で入所施設の多くが感染予防対策のために施設内に出入りできる人の制限を強化しており、外部の人を招いたイベントもほとんど行われなくなっています。それによりますます施設の閉鎖性が増し、密室が生み出すストレスが正常な判断力を奪い、常軌を逸した行動を起こさせてしまうのではないかと思えてなりません。

事実、その障がい者支援施設の施設長は事件直後の会見の場で、報道陣の取材に対し、「今回の事件は日々の業務の過酷さが職員の精神を圧迫し、そのストレスが高じて起きてしまったものであると考える。虐待だと報じるならば、うちの入所者の実情をしっかり見た上で、どうしたら職員のストレスを減らし、過酷な環境を改善できるのか、みんなが考えたり論じたりする機会にしてほしい」といった趣旨の回答をし、加害者である職員たちをかばうことに終始していました。

その一方で、虐待を受けた入所者に対する謝罪の言葉はうわべだけのものでしかありませんでした。こういった事件が起きるたびに必ず「再発防止に努める」という言葉が出ますが、毎回具体的な改善策は提示されることなく、新しいニュースにかき消され、簡単に風化してしまうことに強い危機感を抱きます。

もう一つこの事件で感じたのは、雪深い田舎町の広大な敷地を切り開いて作ったこの施設は、外観こそ綺麗で近代的ですが、人里離れた場所に隔離し隠ぺいするという一昔前のこの国の福祉施設の実態となんら変わらないなということです。

このような事件が二度と起こらないよう、またこれ以上の犠牲者を出さないためにも障がい当事者の仲間たちとともに知恵を出し合い、具体的な活動を行っていきたいと思います。

その活動の一つとして、私が今年の抱負にしたいと思っていることがあります。それは知的障がいをもつ人が重度訪問介護の制度を利用しながら一人暮らしをするお手伝いをすることです。一人でも多くの知的障がい者が重度訪問介護のサービスを受けながら自立した生活をスタートできるよう、私に何ができるのかを考えていきたいと思っています。

障がい者福祉から話はそれますが、現在、政府は防衛費の増額に向けて動いています。この先戦争が起こるとすれば、核兵器やミサイル爆弾によるものだと考えます。そうなると秒速の事態となり、どこにどう飛んでくるか分からないものに防衛費の積み増しをすることになります。

そもそも日本は先の戦争に負けたときに、永遠に戦争はしないと世界に対し誓ったはずです。戦時下で重度障がい者が生きていくには困難を極めます。平和のありがたみを感じ、再び戦争を行うようなことが絶対にないよう、今一度誓い合う1年にしていきたいと思います。

また年末には保育園の子どもたちが保育士から虐待を受けるという事件の報道もありました。年齢や対象者が違うものの、この問題も人材不足が根っこにあるという部分では同じです。

子どもを逆さまにしたり、顔に布をかけて寝かせ、それを楽しむような行動をしたりといった虐待が行われていながら、誰もそれを止めることもなければ、エスカレートするばかりだったと聞きます。そういった事態に歯止めをかけるシステムを事前に作っておかなければならないとつくづく感じます。

物価の高騰もますます加速し生きづらい世の中ですが、重度の障がいをもっていても、地域で自立した生活を送ることが当たり前にできる社会となるよう、社会変革運動を続けていきたいと思っています。

1人の力は小さいですが、みんなで声をあげたり知恵と力を出し合ったりすれば、やがて大きな力となって、誰もが生きやすい社会が作り上げられていくと信じています。今年も健康に気を配りながら頑張っていきましょう。

 

◆プロフィール

渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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