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家に歴史あり③ / 浅野史郎

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

目黒の下宿は、東大の駒場キャンパスに近くて便利だった。それでも、3年生からは本郷キャンパスに通うので、引っ越すことにした。

行く先は豊島区西池袋4−22−3の西牟田アパート。大学同級生の望月邦計君と一緒に住んだ。

望月君は2階の6畳間、私は4.5畳間。最寄り駅の椎名町から徒歩5分、大学まで30分の便利なところである。

家主は西牟田のおばあさん。宮崎県都城の人で女やもめを守る、宮崎弁のちょっと怖い人。下宿ではないので、食事は出ないが、時々茶の間で西牟田のおばあさんと四方山話をすることがあった。

1968年4月、池袋に移ってすぐに3年生の授業が始まった。その最初の授業は、加藤一郎先生の民法第一部だった。

翌日からは授業は休講が続き、10月12日には法学部がストライキに突入した。この年は、授業がなかったことになる。

仕方がないので、アルバイトなどして時間を潰していた。勉強することなど頭に浮かばなかった。

1969年1月になると東大闘争収拾の動きが出てきて、1月末には授業再開となった。

久しぶりというか、3年生になってほぼ初めての授業が始まったことがうれしかった。学友と会えることもよかった。

それまでは自堕落な生活を送っていたが、大学が再開されたのを機に、池袋の住まいから、喜んで大学に通い始めた。

4年生の秋には厚生省への就職が決まっていたので、またまたの家移りを考えていた。この年は授業日程が遅れに遅れたせいで、卒業試験が3月30日まであった。

1日おいて4月1日は厚生省入省である。引っ越しする余裕もなかったもので、結局、厚生省での最初の1年半は池袋の西牟田アパート住まいとなった。

晴れて引っ越しができたのは、入省2年目1971年10月である。引っ越し先は、山手線の高田馬場駅から歩いて3分の一軒家の離れ。

家賃は高くないのに二間もありトイレがついている。庭もある。住み心地がとてもいい。大家さんもとても良い人で、なにかとお世話を焼いてくれた。

こんないいところだったのに、ここには1年もいられなかった。人事院の在外研修員の試験に受かってしまったものだから、1972年7月にはアメリカのイリノイ大学に留学のため日本を離れることになった。

大家さんの「折角いい人に入ってもらったのに、こんなに早く出て行ってしまうなんて残念だわ」の言葉に送られてアメリカに向けて出発だ。

1972年9月、私はイリノイ大学大学院での生活を始める。住まいは大学キャンパスにあるDanielsという名前の学生寮。

部屋は二人用で、台湾からの留学生T君がルームメイトだった。

T君は化学専攻、私が授業にでかける時にはまだ寝てる、私が図書館から帰ってきた時にはもう寝てる、のんびり屋の大学院生。私が運転免許を取るときには、指導役を買って出てくれた。

大学のあるchampaign市は隣接するurbana市とツインシティを形成していて、人口は10万人。その6割以上が大学関係という典型的な大学町である。

勉強するにはとてもいい環境であった。私は寮から自転車で5分の教室で講義を受け、隣の図書館で遅くまで勉強し、夜中に自転車に乗って寮に帰るという生活を続けていた。

そんな勉強漬けの毎日でも、金曜日だけは図書館を早く切り上げて、客はほとんど学生だけというBeer Joint(居酒屋)でビールを飲むという息抜きを自分に許していた。

ある夜、「アナタハニホンジンデスカ?」と声をかけてくる男性がいた。それがAlan Corey。

軍隊に入って、1年間だけ日本にいたことがあるという。その1週間後に居酒屋で再会した時には、彼のアパートに引っ越すことが決まった。

Alan君のアパートは、広い応接間と浴場がついているのがいい。Alanは「学生寮ではお風呂入れないだろ」の殺し文句で私を誘った。

Alanは高卒で軍隊に入り、その後は学歴がないのを気にしていた。そこで、イリノイ大学で学部1年生からやり直そうとしていたが、銀行のアルバイトで学業がままならない。単位を取るのに苦労していた。

アパートでの生活は悪くない。応接間でパーティを催すこともあった。静かな環境のもと、私は勉強に精を出し、卒論もここで書いた。1979年6月、行政学修士を取得し、帰国の途に就いた。

 

◆プロフィール
浅野 史郎(あさの しろう)
1948年仙台市出身 横浜市にて配偶者と二人暮らし

「明日の障害福祉のために」
大学卒業後厚生省入省、39歳で障害福祉課長に就任。1年9ヶ月の課長時代に多くの志ある実践者と出会い、「障害福祉はライフワーク」と思い定める。役人をやめて故郷宮城県の知事となり3期12年務める。知事退任後、慶応大学SFC、神奈川大学で教授業を15年。

2021年、土屋シンクタンクの特別研究員および土屋ケアカレッジの特別講師に就任。近著のタイトルは「明日の障害福祉のために〜優生思想を乗り越えて」

 

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