『異端の福祉』を読んで ~当事者スピリットの継承者~ / 宮本武尊(取締役 兼 CBO 社長室室長)

これまでの人生で“運命の分かれ道”がどこにあったかを振り返ってみるとします。私は色々な人たちとの“出会い”によりアイデンティティーが形成され、今の生き方を選択し、今ここに存在意義を見出し、感謝しています。

同様に“人との出会い”がきっかけとなり、今の人生を選択して歩んでいると思う方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

『異端の福祉』の著書であり、株式会社土屋の創業者である高浜敏之氏は、重い身体障害や難病があっても“自宅で暮らす”を当たり前の選択にするために、重度訪問介護サービスの全国展開に挑み、2023年1月1日をもって史上初となる同一法人による全国47都道府県における重度訪問介護サービス提供事業所の設立を達成。日本中どこに暮らしていても重度の障害者が求める在宅生活のニーズに応えていくことが可能な体制を作ることに成功しました。

“社会起業家の軌跡”を綴った本書は、プロボクサーを目指していた学生時代に遡り、掛け持ちでアルバイトをしながらボランティアで差別や貧困を無くすために疲労困憊に気付かぬほど社会運動に没頭し、過酷なライフスタイルの末に患ったアルコール依存症の病を乗り越え、今や年商50億円を超える企業の経営者という波乱万丈な人生ストーリーを背景に、重い障害をもつ当事者たちとの“出会い”が著者に大きな影響をもたらし、歩むべき人生を選択していったことが描写されています。

更に、重度の障害当事者たちだけではなく、“最愛の奥様”の存在が運命を後押しする形で著者のアイデンティティーを形成してゆき、共に障害者運動で闘ってきた当事者たちから受け継いだ熱意と思想が強い“使命感”となり“社会活動家から社会起業家”への変貌を遂げていく姿は、まるでヒーローです。

超絶カッコ良くて感動する場面もたくさんありますが、私が特に目頭を熱くしたのは、高浜代表が“人生の師”と称する“新田勲さん”との足文字での会話エピソードと、奥様が交通事故を経験された時のエピソードです。

「福祉は清貧であれ」の業界でタブーに挑み、「重度訪問介護」を“ビジネス”にした男の異端な挑戦が大きな社会課題解決の一助となった功績、重度訪問介護業界の現状課題、そして、株式会社土屋の設立経緯や経営理念、土屋のアテンダント(従業員)とクライアント(利用者)のエピソード、それぞれのリアルな内容が凝縮された“土屋のDNA”とも呼べる本書は、社内の従業員はもちろん、これから株式会社土屋への入社を検討される方にも是非ご一読いただきたい一冊です。

プロフィール

宮本 武尊(みやもと たける)
1986年、青森県生まれ

1児の父。元キックボクシングジムインストラクター。憧れのイタリアでジム設立を目指しながら介護業界へ。重度訪問介護事業で広域的なマネジメントを経験。ソーシャルビジネスの素晴らしさに魅了され、社会起業家を志す。趣味はYouTube視聴。

 

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