地域で生きる24年目の地域生活奮闘記140~自立生活24年目にして思うこと~ / 渡邉由美子

3日でダメになったら実家に戻り、両親が勧める障がい者支援施設に入所して、一生狭い世界の中で、自分の命が尽き果てるまで過ごすこともやむを得ないと覚悟して、清水の舞台から飛び降りるような思いで始めた一人暮らし。

 

それも気づけば今年の2月21日で丸23年を終えたことになります。今回はそんな23年を振り返って、これからやりたい事、依然として解決しない問題点などについて整理しながら書いていこうと思います。

 

毎日を必死に生きてきたこともあって、とてもとてもそんな長い歳月が経過したとは思えません。そして私にとっての自立生活は落ちついたり安定したりということは一生ないのだということをつくづく感じながら、少しでも前向きに、私にしかできない為すべきことを、その時々で探しつつ、少しでも成し遂げられた喜びや充実感と共に生きていたいと思う今日この頃です。

 

23年も経つと、私自身も年齢を重ね、また家族の状況も大きく変化し、「人生チャレンジだ。やってみよう」と思って始めた一人暮らしも、気づけばもう帰る家はほぼほぼないという断崖絶壁に立たされたような事態となっています。

 

障がい者総合支援法を背景とする社会保障に裏付けられた生活も、23年の歳月を経て良くなったもの、形を変えたもの、後退したものなど様々で、2025年問題を契機にどうなってしまうのか、不安は尽きません。

 

今後も微力ながらライフワークである障がい者運動にまい進し、自分も仲間も、そして未来を担う若い障がい者も、みんなが地域で生きやすくなる社会を作っていきたいと思います。

 

数多くの先輩方に叱られてしまうかもしれませんが、様々な活動に勤しむ一方で、脳性麻痺の二次障害と、誰にでも等しく訪れる加齢により、身体の衰えを感じずにはいられなくなってきました。

 

そんなこともあって「せっかく施設入所ではなく、自立生活を選んで生きてきたのだから、そろそろ自分の人生に潤いを与える時間をふんだんにもち、楽しく過ごすことも大切なのではないか」と感じるようになりました。

 

私は根っから真面目な気質だということもあって、遊ぶことはとても下手ですし、毎日を生きることに必死で、何もできないままこの歳まで来てしまったように思います。今年は少し大胆に自分の人生を振り返ったり、楽しむ時間をたくさん設けたりしようと、今粛々と計画を進めています。

 

その計画を実行に移すために改めて思うことは、車椅子で非日常を楽しんだり、普段しなれないことをしたりするのには、健常者の何倍も時間と労力とお金がかかってしまうという現実です。

 

そこまでして作った余暇だからこそ、十分に満喫して、また日常生活をがんばって送ろう、「地域での自立生活だから、できることってたくさんある」という実感を味わいたいです。また、支出に見合う満足度の高い体験をしていきたいと思っています。

 

さて、ガラッと話題は変わりますが、24年目に突入した節目に、介護者との関係という視点から自立とは何なのかを考えるとき、原点に立ち戻される自分を感じてなりません。

 

自立生活を始めた当初は若くて勢いがありましたし、重度訪問介護制度を利用できる時間数が少なかったこともあり、今のように24時間365日、私のもとで介護をしてくれる人はいませんでした。そのため真冬に玉の汗をかきながら、必死に生き延びるための行動をしていたものです。

 

それは私にとって、決して良いことではありませんでした。無理が祟って、二次障害の進行は確実に速くなり、それに伴って老化のスピードも速くなってしまったからです。重度障がい者にとって、身体を酷使しながら本来できないことを自分でやろうとするのは、自らの命を縮める行為となってしまうことも少なくありません。

 

そうかと思えば、介護者にズバッと指摘されてドキッとする出来事もあります。それは本来自分でできることまで、介護者に依存した生活になっていないか、という永遠のテーマ的な問題です。

 

最近、介護者から「ちょっと前まで自分でやっていたのに、今は全介護を求めてくるのですね」とか、「自分でできることや、やっていたことを介護者に当たり前に頼んでいませんか」とか、「自分でやってみているという努力の跡が見えたら、こちらも全力でお手伝いしますよ」なんて言われることがあります。

 

それを否定しきれない私はしどろもどろになってしまい、つい意味の通らない弁明をしたり、ちょっと怒ったような顔をして、「今日は忙しいので」とごまかしたりしてしまいます。

 

自立生活を始めた頃は、”自立とは何か”という議題で長い時間会議をしていたこともあります。でも結局結論は出ないのです。最近この問題について思うことは、介護を受ける側も提供する側もお互いに納得できる折り合い点を探して、気持ちよく過ごせるように工夫する必要があること。

 

それから自分自身が努力をして前に進もうとしている姿勢を介護者に見せること。そうすることで介護者が私の自立生活を支え続けて行こうというモチベーションを保っていけたら、解決策につながると考えています。

 

これからも山あり谷ありを繰り返しながら、地域で生活することにこだわり、自分の人生を全うできるまで、そんな生き方を貫いていきたいと思います。新しい仲間の出現を夢見て、その人たちを育てる努力と共に明るい未来を創造できる、そんな私自身でありたいと思っています。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を精力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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