【異端の福祉 書評】異端であるのはどちらか? / 伊藤正広(ホームケア土屋 東海)

異端であるのはどちらか? / 伊藤正広(ホームケア土屋 東海)

ボランティアの方の協力があってこそ、重度身体障害者の地域での一人暮らしが成り立った時代、ボランティアの皆さんも純粋で、時に喧嘩もしながら互いに人間らしい関わりを築けた。

支援費制度が出来て、対価が発生するようになり、ボランティアからヘルパーさんになって割の良いアルバイト感覚の人達が増えて、ボランティア精神のあるヘルパーは減ってきたところで、重度訪問介護事業がスタートした。

行政からも重度訪問介護事業者を増やすため、介護保険事業者にも協力要請を行って頂けて、重度訪問介護事業所が増えてきた。

ですが、支援内容の介護保険制度との混同でサービス提供の拒否や、重度身体障害者をよく理解していないが為のトラブルも生じた。事業所は増えても1件辺りの在籍ヘルパーは少なく、現実に派遣をしてもらえる確率は少なく、複数の事業所を利用せざるを得なかった重度身体障害当事者が増えて、ヘルパーの取り合いになった。

福祉系の大学の現場実習がなくなり、学生ヘルパーさんが急激に減ってしまった事や、当事者自身もセルフでボランティアや事業所を必死に探すことから、相談支援センターを利用する人が増えて、利用しないと契約すらしない事業所も出てきた。

時給の安い事業所はヘルパーの離職や利用者に対する不満を口や態度に出して、その不満を利用者の責任になすりつけるヘルパーを、事業所も利用者の責任にして解約を強要したり、虚偽情報を業界内に流すようになったため、重度訪問介護利用者の正当な生活を脅かす事案も生じた。行政の苦情申立て窓口へ通報しても、及び腰で指導もしなくなった。

そのような中、介護職の処遇改善加算制度の発足。しかし、制度導入のコストや未熟な部分を批判して導入を怠り、低賃金で雇用して行政や政治の責任にすり替え、申請して支給されていても搾取してヘルパー賃金で支給しない事業者。

その様な悪質な事業者こそが、世界でも他に類を見ない社会保障制度である重度訪問介護制度に対する異端者であると言いたい!

この書籍では、高浜代表の自らの生い立ちから福祉にかかわり、重度訪問介護制度の存続と発展、成長および持続のための収益化をビジネスプランとして、起業から短期間に急速に成長し続けていることを実証として示しながら、障害当事者の生活も護れることが描かれている。

利用者=クライアント
ヘルパー=アテンダント
クライアントとアテンダントは対等な立場であると示した。

これでクライアントも自らの思いを伝え、自分らしい生活が出来る。アテンダントもプロ意識とクライアントの人生に寄り添える自負をもつ。良好な関係で、互いに尊敬し合えることは素晴らしいことであると。

その過程を著した本書にはクライアントやアテンダントの体験記もあり、福祉に関わっておられる方々、福祉に興味のある方には、是非読んで頂きたい著書である。

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