
背景の向こうにある、小さな声/桐山 美穂(ホームケア土屋岐阜)
背景の向こうにある、小さな声。
「へぇ〜そうなんだなぁ。」
この一冊を読み進める中で、何度も口から自然とこぼれた言葉です。
実際にお会いしたことのある方、お名前だけは知っていた方、Zoomでお見かけしたことのある方。
お一人お一人の背景に触れるたび、「へぇ〜そうなんだなぁ。」と知ると同時に、私の世界は少しずつ広がっていきました。
そして、その時間は誰かを知る時間であると同時に、自分自身を見つめ直す時間にもなりました。
「今の私に何ができるだろう。」
「私はこれから、どう歩いていきたいのだろう。」
日々の中で、その問いと静かに向き合える余白を、この本は私に与えてくれました。
私は、この重度訪問介護というお仕事に従事するようになり、クライアント、ご家族、また一緒に働いてくれているチームのスタッフさんたち、全てのお相手のありのままの声を聴くことを大切にしています。
その方の言葉や行動だけを見るのではなく、関わりの中で見えてくる背景も大切にしています。
ある日、アテンダントさんから仕事終わりに電話をいただきました。
その電話は、その方の「疲れた」という気持ちや思いよりも、どこか重さを感じる嘆きでした。
その方の「私、疲れちゃったんだよね」という言葉に、私はただただ耳を傾け、その方の気持ちを聴き続けました。
本当にただただ、「そう感じているんだね」「そう思うんだね」「そういったことがあったから、疲れちゃったんだね」と、その方の思いや言葉をありのまま聴き続けました。
話し終える頃には、不思議と電話の向こうからアテンダントさんの笑い声が響いていました。
そして、「また頑張るわ。」「ちょっと楽になった、ありがとう。」と言って、電話を切られました。
人から見れば、「たったそんなことで」と思うような出来事でも、その方にとっては前を向くことができなくなったり、顔を上げて笑うことさえできなくなったりすることがあります。
それが、その方だけが持つ背景なのだと思います。
私にも、笑えなくなった経験があります。
その背景は人それぞれ違います。でも、多かれ少なかれ、前を向けなくなったり、笑えなくなったりする時間は、誰の人生にもあるのではないでしょうか。
だからこそ、人の声に耳を傾け、その方の思いに寄り添い、安心と信頼を重ねながら、その方の小さな声を丁寧に拾い上げていきたいと思っています。
私は、安心と信頼があるからこそ、人は自分の小さな声を話すことができるのだと感じています。
そして、その小さな声を受け止めてもらえたと感じられるからこそ、また自分の力で前を向くことができる。
私にとって前を向くとは、止まらず歩き続けることではないと思っています。
立ち止まる日があったとしても、また顔を上げて笑えることです。
この本を閉じた今も、私はこれからどんな人で在りたいのか。
その問いは、私の中で静かに響いています。
これからも出会いや経験を重ねながら、少しずつカタチを変え、私の中で響き続けていくのだと思います。
同じ物事を見ていても、その方の背景によって受け止め方や価値観は違う。
そのことを、私はこれまで多く経験してきました。
だからこそ、私の価値観や思い込みだけで決めつけるのではなく、お相手にとっての「違う」に気づき続けられる私でありたいと思います。
その響きを大切にしながら、私はこれからも、相手のありのままの声に耳を傾けるとともに、自分自身の小さな声にも心を寄せ、私の小さな声も置き去りにすることなく、一歩ずつ歩いていきたいと思います。





















-1.png)




















