【「小さな声」を探し求める―「個」が躍動する組織のつくり方― 書評】第2回 S1グランプリ  原 香織(共創プラットフォーム CSR協議会サポート部)

人がつくる組織、人を活かす組織/原 香織(共創プラットフォーム CSR協議会サポート部)

本書に描かれているのは、創業5年で急成長を遂げた株式会社土屋という介護福祉事業者の軌跡である。
同時に、創業メンバーの一人ひとりが「人として、どう生き、どう働くか」という問いに向き合い続けた歩みを記録した1冊でもある。

本書を読み進める中で、何より印象に残ったのは、株式会社土屋を形づくる人々の多様な人生である。

・ 中古車販売でトップ営業として活躍した後、海外事業の挫折を経て介護の世界へ
・ マンション管理・営業職として働く中で社会課題を感じ、家族の影響から介護福祉へ
・ 華やかな世界に憧れた若者が、ブラック企業での営業職を経て介護職へ
・ 職場体験をきっかけに、高学歴層の経営する珍しい介護会社と出会い、徐々に転身
・ キックボクシングジムの海外立ち上げ資金を得るために始めた介護で、「神ヘルパー」と呼ばれる存在へ
・ 安定した公務員を辞め、「死に際に後悔しない人生」を選択
・ 家庭に専念することを望まれながらも、自ら懇願して仕事復帰を果たし、急成長の中で経営を担う立場へ
・ 介護業界での転身を経て、「利益よりも人の命を尊ぶこと」を最優先にする組織と出会う
・ 「商品ではなく、自分自身を評価してもらえる仕事がしたい」と介護の道へ
・ 実父の難病をきっかけに介護福祉へ関心を持ち、金融業界の管理職から転身
・ 実家の生花店を継ぎ、Web販売を成功へ導いた経験を生かし、介護会社でCMOへ
・ 障害者運動や翻訳・通訳業を経て介護事業へ参画した脳性麻痺当事者
・ 代表が窮地に立たされた時、寄り添い、「自分を大切にすること」を教えた人
・ 役人として障害福祉に携わり、県知事・大学教授を経て介護事業へ合流
・ 哲学を学ぶ学生時代に代表と出会い、支援を受ける立場と支援する立場の双方を経験し、その両方を守るため財団を設立

このように要点だけを挙げても、一人ひとりの人生には、それぞれの思いや偶然とも思える出会いが折り重なっていることが伝わってくる。
その積み重ねが株式会社土屋という組織を形づくり、これからも長く愛される企業へと成長していくのだろうと感じる。

私自身も、前身となる会社の時代から関わってきた一人である。
長女に重度の知的障害があり、さらに祖父の介護を経験したことから、「福祉に何らかの形で関わりたい」という思いを抱き、自宅から自転車で通える距離にあった前会社の門を叩いた。

面接でお会いしたのは、現在の高浜代表だった。
介護資格の研修では、講師を務める高浜代表や、当時講師を始めたばかりだった古本さんの話に深く感銘を受け、障害福祉の魅力を知った。

その後、重度訪問介護や精神障害のある母親への同行支援、介護保険の訪問介護、日中活動支援など、さまざまな現場を経験した。
支援の中で、会社名の由来となる土屋産婦人科の土屋先生のご霊前に手を合わせる機会も何度かあった。

創業当初、防災の分野で会社を支えてほしいと代表からお声掛けいただき関わることになった。
すぐに「防災×福祉」の取り組みを提案すると、返ってきた言葉は「好きなように自由にやってください!」だった。

「自由に」という言葉が印象に残った。
いま思えば、それは土屋という組織を象徴する言葉だったのだと思う。

本書を通して伝わってくるのは、「小さな声」に耳を傾け、人を信じて任せる組織の姿である。
その積み重ねこそが、土屋の強さなのだろう。

介護という領域を超え、「個が活きる組織」とは何かを考えさせる一冊である。

創業期からその歩みを見てきた一人として、本書がこれから先も、多くの人に土屋の理念や歩みを伝え、語り継がれていく一冊になることを願っている。

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