『答えの先に』 / 奥村智幸(ホームケア土屋 和歌山)
私は1年前にこの会社に入社した当初から、会社に対して多くの疑問を抱いてきました。
なぜ2年でここまで大きな会社になっているのか。なぜ全国的にも有名な方が役員に多くいるのか。なぜこんなにも急いで人を集めて事業を拡大するのか。なぜシンクタンク部門などのストラクチャーが必要なのか。
正直なところ、障害ビジネスに目をつけ、社会的援助という崇高な目的で武装し、独占的にビジネスをしようとしているんだろうかと想像することもありました。
そのような懐疑的な思考は社内ではもちろん口にはせず、生活のためと、介護の仕事自体の好きをやりがいにしていたという事実だけで働いていました。
しかし心のどこかでは、「上の方々は営利と福祉、どちらに重きを置いているのだろう。自分が土屋で存在する意味は?」とまで考えることもありました。
もちろん社内研修などを通じて会社の理念は理解しつつ、運営にまつわることを社員へオープンにされていることで、いくつかの疑問の解消もありました。そして、この度の代表の著書の執筆を知ったとき、「私の根幹にある疑問が解けるかもしれない!」と思い、たまらずこの本を読みました。
読んでいくと「強さ」・「優しや」・「誇らしさ」など、この会社が現在も大事にしている言葉とたくさん出会います。しかし、見慣れたその言葉の裏に、当時の代表が受けた影響や時代背景が見えてくることで、自分の中の疑問を解くピースが揃っていくことに気付きました。
障害者運動の真っ只中にいる当時の代表の中に「差別的な価値観」が存在していたという、通常なら伏せていてもおかしくはない内なる部分に衝撃を受け、「この本にはきっとすべてが綴られている」と、そう思いました。
高浜代表の人生そのものに、土屋が現在の姿に至るまでのプロセスがあるように感じ、「もっと知りたい」という欲求と「知れる」という期待に胸が膨らんだのです。
次に訪れた衝撃は、現在福祉業界の第一線におられる代表が、障害者が社会で置かれている過酷な実状を綴られている中で、一部の事例として、施設において障害者達が辿ってきた悲痛なまでの実態が書かれていたことです。
もちろん批判や誤解を招くものではありませんが、社会が抱える問題に正面から堂々と向き合い、障害者の権利の回復を真に思うその強い気持ちが、私にはリスクを顧みず「捨て身で未来を勝ち取ろうとする障害者達」のそれと重なって見えたのです。
現在も急発展を続け、国内最大規模を誇る重度訪問事業所の今しか知らない私には、代表の過去の挫折や失敗談も衝撃で、そこからどのように今の姿になったのか、どのように人が集まったのか、気になって仕方がなくなっていました。
第二章・三章では、制度や現在の社会福祉が抱える課題などがさらに詳細に書かれていました。
重度訪問介護とはなにか。現在の福祉、障害者が抱えさせられている問題とはなにか。課題の解決に向けてどのような障壁があるのか。何故土屋が今のような取り組みをし、ここまでのスピード感で駆け抜けているのか。理由と必要性がハッキリと示されていました。
「人がやらないならば自分がやるしかない」。その言葉の重みによって、私の疑問の多くは消えていきました。
制度という、とてつもなく大きな壁に向かっていくのです。とんでもない覚悟と原動力でなければ出来ることではないのは疑念を抱いていた私にも明白でした。
私の中で土屋の使命の理解がぐっと深まりました。
そしてさらに読み進めているうちに、いつしか感動している自分がいました。
全て詰まっていたのです。
大きな壁に立ち向かうため捨て身で挑まれてきた人生。
時代を変えてきた先駆者達。その熱い思いを受け継いだ代表に共鳴された多くの救世主達。
制度と戦い国をも動かすシンクタンク。今も困っている多くの人がいることを知っているからこそ事業を急展開させていること。業界全体の明日をも見ていること。
そのために多くの活動をされていること。
気付けば私の中のすべての疑問がなくなっていたのです。
会社を起業し経営を安定させることがゴールではないのだ。これはまだ代表の戦いの過程だったのだ。
ゴールは明記されていた・・・。
「すべての介護難民をゼロに」
漠然としていたモヤはもうありません。心から誇らしさに包まれています。
最後に。
この本を通じて、冒頭で述べた全ての疑問が解消されたどころか、社員でありながら会社や役員の方々に対する様々な疑念を抱いたことを恥じています。
また、もしもこの本を読む前の私のように、会社ややりがいに疑問を抱えている方がいるのであれば、「もったいない。まずはこの本を読んで欲しい」という気持ちです。
社員のみならず、この本を通じて代表の思いや会社の理念、重度訪問介護がより浸透し、一人でも多くの人が共鳴することで、制度や社会という大きな壁に立ち向かう力となることを期待せずにはいられません。
そして、理念を受け継いだ私たち一人一人も同じ役割を果たすことができるのだと知りました。疑問の答えの先に目標が生まれたのです。
以前、「株式会社土屋の求めるリーダーとは」の研修の中で、GMの星さんが仰られていた、いわば「自分のコピー」を増やし、同じことができる人を増やしていくという土屋流人材育成術のお話を思い出しました。
教える事だけが目的の人材育成ではなく、理念に共鳴し、同じ方向を見ていく。そして、それをさらに次へと繋いでいくことが重要なんだと改めて気付けました。
障害を持たれた方の命がけの運動がいつしか大きなうねりとなり、代表に受け継がれ、また私たちに受け継がれていくように。
会社の理念に共鳴した今、一人でも多くの小さな声を探したい。そしてその理念を多くの人に知ってもらいたい。今よりもっと自分が住む地域への貢献と全国の介護難民をゼロにするため、自分もそう思うようになりました。
入社当初は、自分の生活と介護が好きというやりがいだけで働いていた気持ちが、もっと違う大きなやりがいに出会い、充実感がまるで変わりました。
かつて代表が、戦うお父様の背中を見ていたように、強い代表の背中を我々に見せて頂けていること、本当にありがとうございます。