ラジオの時間 / 雪下岳彦

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

子供の頃からラジオが好きだった。
私が子供の頃は、まだテレビは一家に一台という時代。
もちろん、パソコンもスマホもない。
そういう時代に、子供が1人で楽しめるメディアは、ラジオしかなかった。

音楽との出会いも、ラジオがきっかけということが多かった。
週末の洋楽ヒットチャートの番組にリクエストはがきを送ったら、番組で名前が読まれたときはドキドキしたのを覚えている。
そして、近所のお兄さんに「名前、読まれてたね」と言われたときは驚いた!
まだラジオネームという慣習がない時代、ラジオで本名を読むことも当たり前だったのだ。

中高生の頃になると、夜のラジオが友達だ。
部屋で宿題のお供と言えば、ラジオだったのだ。
当時は、「三宅裕司のヤングパラダイス」という番組が大人気で、宿題をやるふりや寝たふりをして親の目を盗みつつ、毎晩夢中になって聞いていた。
同級生が、人気コーナーの「ドカンクイズ」に出ると聞いたときは、思わず尊敬してしまったものだ!

そして、オールナイトニッポンも外せない。
当時はバンドブームで、私もしっかりとその波に乗っていたため、デーモン小暮や大槻ケンヂがパーソナリティを務める曜日をよく聞いていた。
午前1時からの放送で、今でいう寝落ちをすることも多かったが、深夜のラジオはなんとも言えぬワクワク感があった。

さらに、2部と呼ばれる午前3時からの時間帯で、名前は聞いたことない人だけど、とにかく声が良くて面白いパーソナリティがいて、眠い目をこすりながら聞いていたのを覚えている。
その人の名は、伊集院光。
あれから30年、今や「ラジオの帝王」である。

リハビリテーション病院に入院していたときも、ラジオをよく聞いていた。
リハビリ中の私を励まそうと、病室でいつも聞いていたFMラジオの番組に、担当看護師さんが私の大好きなJUN SKY WALKER(S)の「歩いていこう」をリクエストしてくれたのだ。
しかも、その日は私の誕生日!
病室でラジオから流れる曲とメッセージを聞いて、とても感動した!

そんな感じで、ずっとラジオを聞く側にいた私が、文化放送のラジオに出演することになった。
以前、このコラムで紹介したツイッターでの #世界の車いす席 について、番組で取り上げていただくことになったのだ。
事前の取材に加えて、生放送中に電話で生トークをすることになった。
https://www.joqr.co.jp/qr/article/16707/

実は、ラジオに出演するのは、これが初めてではない。
Radio-fという静岡県富士市のコミュニティFMで、大学の同級生がパーソナリティを務める「エフfスポーツ」という番組に、何度か電話出演したことがある。
https://radio-f.jp/f_sports/

番組では原稿の流れに沿って15分くらいのやりとりをするが、何回やっても緊張してなかなかうまく話せないものだ。
こういう録り直しのできない生放送を、毎週1人で原稿を作るところからやっているのは、とてもすごいことだと思う。

この番組での経験があったおかげで、文化放送の電話出演もなんとか無事に終えることができた。
ラジオは聴取者との距離感の近さが最大のポイントなので、あまり堅すぎず、フランクに話すことを心がけた。
終了後、Radikoで放送を聞いてみた。
「自分の声はこんな感じで聞こえるんだ」という驚きもあったが、概ねベストは尽くせたように思う。

今や、YouTubeも当たり前の存在になり、テレビだけでなくスマホで動画も見られる時代となったが、そんな時代だからこそ聴取者との距離感が近く、ライブに強いラジオは見直されると思う。
人の声が持つ力や温かさは、映像以上にダイレクトに心に届くものなのだ。
こんな時だからこそ、ラジオから流れる声を聞いて、共感したり励まされたりという時間がほしいと思う人は少なくないはずだ。
そんな声を求めて、今日もラジオを聞くとしよう。

 

◆プロフィール
雪下 岳彦(ゆきした たけひこ)
1996年、順天堂大学医学部在学時にラグビー試合中の事故で脊髄損傷となり、以後車いすの生活となる。

1998年、医師免許取得。順天堂医院精神科にて研修医修了後、ハワイ大学(心理学)、サンディエゴ州立大学大学院(スポーツ心理学)に留学。

2011年、順天堂大学大学院医学研究科にて自律神経の研究を行い、医学博士号取得。

2012年より、順天堂大学 医学部 非常勤講師。

2016年から18年まで、スポーツ庁 参与。

2019年より、順天堂大学 スポーツ健康科学部 非常勤講師を併任。

2020年より、千葉ロッテマリーンズ チームドクター。

医学、スポーツ心理学、自律神経研究、栄養医学、および自身の怪我によるハンディキャップの経験に基づき、パフォーマンスの改善、QOL(Quality of Life:人生の質)の向上、スポーツ観戦のバリアフリーについてのアドバイスも行っている。

 

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