【異端の福祉 書評】『異端の福祉』を読んで / 大和理子(ホームケア土屋 岐阜)

『異端の福祉』を読んで / 大和理子(ホームケア土屋 岐阜)

まずは、素晴らしい本を読ませて頂きありがとうございます!土屋に入社して6月で2年になります。

前職の施設で働いていた時に出会った多系統萎縮症の入居者の方。この方が生きているうちに重度訪問介護のことを教えてさしあげたかった・・と無念に思っています。
重度訪問介護のことを知ったのは、その方が専門の施設に移られた後です。私のいた施設ではなかなか寄り添ったきめ細かいケアができない…どうにかしてご自宅でその方の意思を尊重し、安楽に過ごすことはできないのか…と探しに探していた時です。

多系統萎縮症のその方は、当時病状がどんどん悪化して自分でできないことも日に日に増え、私たち介護職に頼らざるを得ない状況でした。
その方の居室の前を通るとよく「誰か~…誰か~…」とか細い声で呼んでいる小さな声が聞こえ駆けつけて行っていました。

それでも施設では緊急ではない限りケアは時間割で決められており、その方の都度都度ですぐに対応できないことも多く、「順番に対応しますのでお待ち下さいね」とお伝えしながらも本当に心苦しかったです。また、嚥下機能の低下により食べたいものも制限され、集団生活の中ではなんとか工夫して食事を楽しんでもらおう…ということもしづらい環境でした。

重度障害、難病があっても、在宅でその人らしく暮らすことができる、そういう権利・仕組みがあることやその実例が「異端の福祉」を読めばよく分かりますので、周りに障害や難病を抱え困っている方がいたら積極的に紹介していこうと思います。

今の段階では3人の方に本をお渡ししました。重度障害者になったら家族に迷惑かける、自分の好きなように過ごせない、生きたいけれど生きられない…と思い詰めている方にもきっと希望の光になる本だと思います。

施設での団体作業からはみ出てしまった私にとっても重度訪問介護という仕事がある、ということは希望の光になりました。

高浜代表が以前お話されていた内容で、新聞記事で心に残ったものを切り取ってお財布に大切に入れていたことをお聞きしました。
土屋に入社してから出会ったたくさんの心に残っているお話、言葉があります。そのうちの1つで、重度訪問介護をするとき私が大事にしなくちゃ、とはっとした文章があります。
ALS協会の冊子に載っていた、湯浅龍彦先生の「一本のザイル」という題の文章の一節です。

「一般社会では絶対に理解されない、生死を分かつ峠、ザイルが必要である。自己決定権を保障する命のザイルがあれば、生への望みが繋がる」
(JALSA113号 一般社団法人日本ALS協会より抜粋)

高齢者福祉から障害者福祉へ足を踏み入れた時、一番ギャップを感じたのは「自己決定権の尊重」の重さでした。

例えば歯ブラシを歯に当てる微妙な角度…例えば夜電気を消すタイミング…例えば吸い吞みで入れる飲み物の量や入れる角度…身体のひとつひとつの位置…点眼後に目を拭く力加減…

それらをそれぞれのクライアントの希望に丁寧に合わせていくこと、すなわちその一つ一つが自己決定権の尊重でもあると感じました。

私はまだまだ力不足で、クライアントの100%満足いくようなケアはできていません。80%もいっていない、60%いってるかな(汗)…というような状況ですので、一回一回の支援で真剣に向き合って習得していこうとしている日々です。

素晴らしい企業理念があり、それを大切にされている会社、その一員になれたことに誇りを感じます。誰もが生きやすい社会、働きやすい会社、否定せず認め合う話し合いによって解決法を見つけていく社会を、まずは自分から少しずつ身につけ成長していきたいです。ありがとうございました。

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