ヒヤリ・ハット研修会
事故やミスが起きると、本人を含めて「悪いこと」「恥ずかしいこと」ととらえがちです。ただこのような組織風土では、のちのち大きな事故やトラブルにつながるおそれがあります。
事故やミスを前向きにとらえ、情報共有し、励まし合うチーム作りが大切です。
その一歩として、リスクマネジメント委員会ではヒヤリ・ハット研修会を開催していきます。第1回は、就労継続支援B型事業所「あぐり工房土屋」です。
あぐり工房管理者 井上早織
ヒヤリ・ハットとは、労働現場における安全衛生分野の言葉。
文字通り「危ないことが起こったが、幸い大事に至らなかった事象」を指します。ヒヤリ・ハットを共有する目的は、以下の「ハインリッヒの法則」と関連しています。
ヒヤリ・ハットの重要性
ヒヤリ・ハットは、たくさん挙げられれば挙げられるほど良い、と言われています。
でも、ただ挙げていくだけでは不十分です。「なぜ起きてしまったのか?」という根本的な原因を考え、はっきりさせること。そして防止策を立てることが大切です。ただ最も重要なのは、スタッフ全員が情報を共有することです。
そこでスタッフの皆さんは、迷った場合も含めてヒヤリ・ハット報告書に記入してください(もちろん、安全確保が優先です)。パソコンを使いづらい環境の場合は、紙に記入いただいても結構です。時々辺りを見回して、ヒヤリ・ハットを探す習慣もつけましょう。
報告書はグループラインにアップし、事象が解決したら、社員がグーグルフォームへアップします。大事なのは、ヒヤリ・ハットへの対処を完了させることです。
それではここで、実際にあぐり工房で起こったヒヤリ・ハットについて話したいと思います。
実際にあぐり工房で起こったヒヤリ・ハットの事例
【事例検討①】
概要:ギャラリー玄関前にあるウッドデッキで、利用者さんが滑って転びそうになった。
原因:冬の朝で、ウッドデッキの表面が凍っていた
改善策:利用者が歩く場所に滑り止めのゴムシートを設置した
もともとこの利用者さんは歩くのに少し不自由があり、転倒のリスクが高い方でした。またウッドデッキの危険性は前々から言われていましたが、良いすべり止めが見つからず、1~2年放置していました。このヒヤリ・ハットを受け、ゴムシートの購入に至りました。
【事例検討②】
概要:利用者さんの服が汚れていたため理由を聞いたところ、更衣室で転倒したとのことだった。地面に着いた左手に痛みがあると訴えあり。本人が後日病院に行き、添え木をつけて通所した。この時点でヒヤリ・ハットから事故報告に切り替えたものの、本人が病状などをうまく伝えることができなかったため、サビ管が病院に同行し、医師から病状をきき診断書を発行していただいた。
原因:滑りやすいサンダルを履いていた
改善策:ハウス内は、ぬかるみができやすく長靴を着用するルール。改めて注意喚起した。転んだ場所だけでも人工芝を敷くなどの改善策を検討。
本来であれば環境を改善したいところですが、ハウスが田んぼの中にあり、ぬかるみを解消するのは難しいのが現状です。
また、利用者さんが受診した際は、治療費の負担をどうするかというデリケートな話が出てきます。支援員全員が契約書の内容を把握した上で、誠意をもって対応することが大切です。